4話 優しさと甘さの違い
主人公の容姿をプロローグに記載しておきました。
ラピスside
「・・・・・え?」
ラピスの問いにマスターは意味が分からない様子だった。
「マスター。敵とは倒さなければならない存在です。つまり、倒すとは相手を殺すことです。マスターにその覚悟はありますか?」
「こ、ころ、す?僕が?相手を?」
視線を自分の両手に向けていたマスターは一瞬固まった後、首を振り顔を上げた。
「だ、だけど!べ、別に殺す必要はないでしょ!?気絶させるとか!拘束するとか!」
殺さずに無力化すればいいと叫ぶマスターにラピスは淡々と答えを返す。
「確かにそうです。けど、マスター。戦場においてそれは優しさではなく、甘えです。例えば、死を厭わず自爆覚悟の敵は?人質を取って抵抗する敵は?味方を大量に虐殺してきた敵は?他にも様々な場合があります」
ラピスは地獄を見てきました。中にはラピスが地獄を生み出してきたこともあります。いらむしろ、ラピスの生まれそのものが血塗られているでしょう。ラピスの両手いや、魂は真っ赤に染まりすぎています。そこに後悔はありません。
「マスターの優しいところは、ラピスが好きなマスターのいいところです。しかし、敵にはその優しさだけでは通用しないのですよ?言葉が通じない者には実力行使しかありません」
「だからって、殺していい理屈にはならいでしょ!?だって、言葉が通じるのに!」
まったくそうですね。ただ生憎、世界は優しくないのですよマスター。
「マスター。ラピスが説明するのもおかしいかもしれませんが、人とは移ろいやすいものです。その場はマスターに従うかもしれません。だけど、マスターがいなくなった後はどうでしょうか?それで、誰か傷ついたらマスターは責任をとれるのですか?いえ、責任よりもマスターはそうした自分を許せますか?」
理路整然と説明をするラピスにマスターは納得できない顔を浮かべる。
「・・・・うぅ・・・・だ、だけど、だ、誰かがた、戦わなくちゃ、いけないんでしょう?・・・・な、なら、ぼ、僕だって、相手をこ、殺すことだって」
あぁ、もうやめて下さいマスター。ラピスの説明に理解したのか顔面蒼白になって手足が震えながらも、ただ困っている人達の力になりたいと決意を固めて宣言しようとする痛々しい姿に気がつけばマスターをぎゅっと抱き締めていた。
「ら、ラピス?」
意地悪しすぎましたかね?せっかくの機会だったのでマスターには現実を知って欲しかっただけだったのですが、ラピスもまだまだですね。
「大丈夫です。マスター」
ラピスには触れて触って抱き締めて分かるのです。マスターのいい所はこの暖かい優しさだって。
「・・・・え?」
これを守るとラピスは誓ったのですから。
「マスターはラピスが大好きなマスターのままでいて下さい。ラピスがマスターの代わりに魔王を倒してきます」
だから、またこの手が真っ赤に染まっても構わない。




