第五十三幕 手習
「順を追って話した方が良いか?」
「そうしてくれ」
「まずは、二十年後にギルドマスターへと返り咲いたことからだ。ギルドマスターは代替わりをしたら一か月以内に中央へ書類を送る決まりになっている」
「そうだな。俺も送った」
「私もだ」
これはギルドマスターが一定の形式の書類を書くだけの教育を受けたかどうかを判断するために使われている。
文字を読めない国民も多いことへの対処だった。
「キルシェからギルドマスターを引き継いだ男は一か月以内どころか中央から確認されるまで書類を送っていなかった。まずこれで処罰される」
「だが厳重注意程度だろ?」
「次に、ギルドは一定期間は開けなければならない」
一年のうちの三分の一はギルド業務を行わなければならない。
それをしない場合は中央へ理由を添える必要がある。
「ルルを育てるときに中央に軽減願いを出したな」
「認められたのか?」
「認められたぞ」
「気まぐれで開けていたからな、五分の一程度だったそうだ」
ギルドが閉まっているとハンターが困る。
ハンターから中央への申告が一定以上あれば査察の対象になる。
ルルが小さいときは、ほとんど開いていないということもあったから中央から査察官が来た。
理由が分かると、お咎めなしで終わった。
「次に、依頼報酬を不当に下げていた」
「仲介料でも取ってたのか?」
「そうじゃない。依頼内容のランクを相場よりも下げていた」
依頼内容に応じたランクも中央に決められているから上げることはできても下げることはできない。
それはハンターたちを守るために大切なことだった。
依頼料の最低金額も決められているから、そのままの金額で出すか、上乗せするかはマスター次第だ。
仲介料を取る取らないもマスターに一任されていた。
「ハンターが寄り付かなくなっただろうな」
「無駄に命を落とすハンターが多かったそうだが、流れのハンターが多いこともあって噂は広がらなかったそうだ」
「それがどうして分かったんだ?」
「実力はあるが新人のハンターが依頼をこなして帰って来たことが始まりだった」
ある程度の経験を積んだハンターなら他の依頼を遂行中に出くわして、成り行きで完了してしまうということはある。
だからC級ランクのハンターがB級ランクの依頼を完了させても不思議はない。
それが新人となると話は別だ。
経験もないままに遭遇するとまずは死ぬことになるから、逃げることを絶対に優先しろと教えられる。
無謀にも挑戦してしまうハンターはいるが、ほとんどは命が惜しいから忠告を守る。
「ものすごい強運で完了した可能性はあるだろうが、同時期に他の依頼を受けていなかったことから目的を持って完了したことが分かった」
「実力があったということは軍人上がりか何かか?」
「確かに軍人上がりだ。だから中央も注目していた。その時に、絶対にA級ランクでしか出されないハンブルベアの群れの討伐でC級ランク単独遂行をしたら流石に気づくだろうな」
C級ランクのハンターが遂行してもおかしくないようにA級ランクの依頼を態と下げていたことが明るみに出た。
これでも十分に罰せられる。
「このことをきっかけに過去のことを調べることになった。多少のことなら厳重注意と始末書で済んだだろうが流石に罪を犯しすぎた」
「それで罰せられたのか」
「ギルド全体の信用を揺るがしたとして前線に送られた」
罪人の中に戦闘力がある場合は戦争の前線に送られることが多い。
刑期の年数分、戦い生きていれば報奨として軍への雇用が認められる。
そしてまた前線に送られる。
違いは給金が発生するかしないかの違いだ。
戦争囚人と揶揄されており死ぬまで刑期をある意味で終えることができない大罪人として扱われる。
「そうか」
「それでも村の住人から減刑を願い出られることが多いなか、たったの一通もなかったそうだ」
あの男がしたことを知っている村人は嘆願書を書くことはないだろう。




