第五十二幕 蜻蛉
「いつものねぇちゃんはどうした?」
「二階で二日酔い中だ」
「まさか、おめぇさん」
「指一本触れていない」
来るハンター来るハンターが始終この調子だった。
ギルドには個性というものが出てくる。
機械的に仕事をするところもあれば、会話をして仕事はどうしたと言いたくなるようなギルドもある。
それらは全てマスター次第だ。
「代理じゃ話にならねぇな。ヴィリシアを出しな」
「なら出て行ってくれ。代理でも俺がマスターだ」
「代理じゃ話にならねぇんだよ。俺の言うこと聞いてんのか?」
「はぁ、ルル」
「はぁーい」
腕力だけなら人の何倍もあるルルーシェは難癖をつけるハンターを掴み上げると表に投げる。
何人かに一人のやり取りだった。
それを見て学習してくれればいいのに学習しない。
「ルル、仕分けが終わったよ」
「ありがとう、今度はこっちの書類を分けてくれ」
「ヴィリシアは書類が苦手なんだね」
日付の古い書類を見てルルーシェは呟いた。
一番古いので二年前のものがあった。
それは中央へ依頼受領した履歴として送る必要がある書類だが、ヴィリシアはのらりくらりとかわしていたようだ。
「C級ランクのハンターはここから選んでくれ」
「おい、俺らに指図するんじゃねぇ」
「なら出て行ってくれ。ほかのギルドで依頼を受けるといい。俺は構わない」
「何だとぅ」
「B級はこっちだ。あとは依頼を受けたら今日はこれで終わりだ。まだ報告していない依頼があれば今のうちにしてくれ」
自分のギルドなら押し付けるようなことはしない。
今回は、最低限のことで留めて起きたかった。
「・・・・・・全員、依頼を受けたな。なら出てくれ」
「待てよ、俺はまだだぜ?」
「うん?C++級で確か、ペルチェモナの討伐だったか?」
「うっ」
顔と依頼を一致させているとは思わずにカマをかけたが見事に返り討ちにあった。
周りのハンターからは笑いが起きた。
「ちくしょ。覚えてろよ」
それを皮切りにハンターたちが次々と外へ出た。
全員がいなくなったところで看板を片付けて代わりに臨時休業の札を出しておく。
「ふぅ、疲れたな。大丈夫か?ルル」
「大丈夫だよ、久しぶりにして楽しかったよ」
「そうだな」
「ロディたち元気になったかな?」
「上に行ってみるか」
灯りを消して二階に上がろうとしたが、顔色が悪いが自力で歩けるようになったヴィリシアが下りて来た。
その後ろにロディもいた。
「その必要はないぞ。今日は助かった」
「まだ辛そうだな」
「ここまで酷いのは初めてだ」
苦笑をしてソファに座る。
ロディも伏せの状態だが朝よりは回復していた。
「この一年であったことが二つある。その青い箱を取ってくれ」
「これか?」
「あぁ」
話を聞こうと立ち上がっていたルルーシェとキルシェは再び座った。
箱から出て来たのは中央からの報告書である印の入った書類だった。
「まずひとつ目だ。二十年前にある若手ハンターを騙してギルドマスターに据えた男がいた」
その持って回った言い方で誰のことを言っているのか分かる。
ルルーシェに至ってはあからさまに嫌そうな顔をしていた。
「騙されたハンターからは再三の訴えにも関わらずもみ消された」
「そんなこともあったな」
「二十年も経ってから問題視されても困るだろうが、最後まで聞いてくれ」
ヴィリシアはその書類を読んで今更であるということと中央からの申し出に対しての返答が予測できていた。
「二十年後、若手ハンターを騙した元ギルドマスターは再び同じギルドでマスターをした。そして罰せられた」
書類はかなりの厚みがあるのに、途中を省略しすぎて何が何だが分からないことになっていた。




