第三十三幕 藤裏葉
体格からいけばロディの方が大きく力もある。
エルフは調停者であるから種族的には戦闘には向いていない。
一対一の戦いになれば勝ち目はないがこれは複数の戦いだ。
ロディの体に矢が降り注ぐ。
半分は避けたが何本かは刺さったままになった。
「ええぃ鬱陶しいわ」
尻尾を振り回しエルフを二人弾き飛ばす。
空中で受け身を取ったところで減速することなく幹に激突した。
「ぐぅ」
うめき声とともに動かなくなった。
骨が折れる音がしたから肋骨の何本かは確実に折れた。
ロディを矢で狙っているエルフを背後からルルーシェは強襲する。
「やぁ」
「くっ」
こめかみを思い切り蹴り一撃で昏倒させる。
攻撃した隙を狙って別のエルフが矢を射るが気配を感じたルルーシェはその場に伏せて回避した。
一撃で相手を倒す力はないキルシェは狙ってきたエルフの攻撃を受け流すことで精一杯だ。
「ちっ」
「人にしてはなかなかやるな。だが所詮は人よ。勝てぬ」
わずかに後ろに体を倒して衝撃を逃がしたが肝臓のあたりを的確に狙った蹴りによって倒れた。
痛みによって起き上がれないが追撃がくることはない。
相手の息の根を止めることが必要な戦いにおいては甘いことだった。
ロディに降り注ぐ矢も急所は外されている。
それに気づいているから何本かは避けていないのだが根っからの戦闘狂であるため痛みをほとんど感じていない。
「ふむ」
「なぜ避けぬ」
「避ける必要を感じぬのでな」
正面から射られた矢をそのまま受けたロディは右肩の付け根当たりに刺さった。
鏃の大きさからはロディにとっては掠り傷程度の痛みだった。
矢を放つタイミングも申し分なくロディでなければ避けることはできないほどの攻撃だった。
それを目ではなく右肩というところにロディは苛立ちを覚えていた。
「急所を外した攻撃など笑止」
「しまった」
体を震わせ矢を抜いてしまうと体を小さくするとエルフに噛みつき腕の骨を砕いた。
「ぐぁ」
「つまらんな」
物足りない相手に嫌悪感を滲ませながらエルフの腕や足に噛みついて戦闘不能にしていく。
命を取ることはしないがロディも首に噛みつき殺すことはできた。
動きの速いルルーシェに飛び道具は効果が薄いと判断して直接攻撃に移行した。
戦うことが楽しいのだろうルルーシェは唇を舐めて地面を蹴る。
繰り出した右足の蹴りは簡単に防御されたが次の一手のための囮だ。
左足と絡めて体を反転させる。
反動でエルフの体を崩すつもりだったが腕を外されてしまった。
「へぇ」
「なかなか良い攻撃だった」
関節を自分で外してルルーシェの拘束から逃れた。
戦い慣れているエルフだった。
「だが無駄な動きが多い」
「余計なお世話だよ」
「こちらから行こう」
残像が残るほどの速さで跳ぶと木を足場に体の向きを変えてルルーシェの首を狙う。
視覚に頼っていたルルーシェは一瞬反応が遅れた。
木を蹴るわずかな音に直感的な反応で体を反転させて左腕を曲げた。
急所への攻撃はさせたが左腕に痺れが残った。
首に受けていたら気を失うことは確実だっただろう。
残ったエルフたちは戦闘力からロディとルルーシェに的を絞ることにした。
キルシェは痛みが引かないから木の後ろに隠れる。
戦力は拮抗していると言えるが長引けば応援がやって来るだろう。
「・・・そこまでだ」
「長」
「彼らを客人として迎え入れる」
エルフは不老だと言われているが外見に老いが表れにくいだけで老化はする。
杖をついたエルフは長老だということは分かるが気配というものを感じなかった。
「手荒なことになり申し訳ない。傷の手当てをさせてもらいたい」
長の言うことは絶対だということなのだろう。
エルフの攻撃がぴたりと止まった。
一人で立てないキルシェはエルフの手を借りて立ち上がる。




