第9話 青春はドーナツだ!
「そっちはどう?」
「うーん、味が好みじゃねぇな」
部室に入った僕と遥ちゃんを迎えたのは……
「何してるんですか?」
「ドーナツの食べ比べ」
部屋には甘い香りが漂っている。 テーブルの上にはドーナツ有名店の『マスド』のドーナツの山。
「あ、お茶淹れてきますね」
鞄をロッカーにしまい、台所へと向かう。
「僕も手伝うよ!」
「大丈夫でーす。 キョン君はお姉ちゃん達の相手をしていてあげて下さい」
「ま、お前も食え食え」
「一体どうしたんですか? この尋常でない量」
「ほら、前に園芸部の手伝いしたじゃない。 覚えてる?」
「えぇ、まぁ。 それがどうかしたんですか?」
「さっき、顧問の佐渡山先生に会って貰ったのよ。 『部員と自分の分で分けたんだけど余ったから君達にあげるよ』って。 捨てるわけにも腐らせるわけにもいかないからこうして食べてるの」
「うぇぇ……甘いもの続きで口がゴワゴワする……」
遥ちゃんからお茶を受け取り、一気に飲み干す部長。
「ぷはー! 後、どれくらい残ってるよ?」
「四ケースちょっと。 私と遥で二ケース消費」
「随分と食べましたね……太らないんですか?」
「アタシは成長期だから」
「私は自宅にトレーニング器具があるから」
「なるほど……」
「ほら、口動かすぐらいなら手も動かして食え」
「は、はい!」
と、近くにあったチョコのかかったドーナツから食べ始める。
「うん! 結構美味しいじゃないですか!」
「そりゃあ、ドーナツ専門店だから美味いに決まってらぁ」
「美味しい美味しい言ってられるのも最初の内よ、キョン」
「あはは……ところで、遥ちゃんは食べないの?」
「私は……遠慮しておきます、ダイエット中なので」
「ダイエット? これまた意外だな遥」
「最近、体重計に乗ったらちょっと増えちゃってて……」
指先で軽く頬を叩きながら視線を床へと逸らす。
「そう? いつもと変わらないみたいだけど」
「でも、増えてたんです!」
確かに亜里沙さんの言う通り、遥ちゃんの外見には何の変化も見当たらない。
「なのでドーナツはキョン君に譲ります」
「……遥、ちょっと来い」
「どうしたの、お姉ちゃん?」
「いいから」
部長が亜里沙さんと遥ちゃんを伴って台所へと移動する。 ちょっと心配だな……
「あの、部長?」
「男子禁制だっ! テーブルで大人しくドーナツ食ってろ!」
「はっ、はい!」
思わず気圧されてしまった。 ……うん、大人しくしてよう。
「いやさ、腹は変わってないんだよ」
「そうね。 足もそうでもないし」
「くっ、くすぐったいですー!」
「……背は伸びてない」
「えー? だとすると後はどこよ?」
「胸、とか?」
台所からそんな会話が聞こえてくる。
「メジャー! メジャー貸せ!」
「はいはい。 えぇと、あったあった。 てか、環じゃ届かないでしょ?」
「うっ、うるせー! さっさと測って終わらせろ!」
「……ん? 前回より増えてない?」
「前っていつ測ったか覚えてくるか?」
「確か、二ヶ月前です」
「おいおいおいおいおいおい。 どうすんだよ、どうすんだよー!」
「三桁の大台まで後ほんの数センチ。 安心なさいな、至って健康よ」
「良かったぁ……」
その場でへたり込む遥ちゃん。
「……僕の心配もしてほしいんだけど……」
同時に僕のお腹も限界に達しようとしていた。




