第20話:都会の空を覆う月食――王と女王の最後の饗宴
#名頃の村 #無月江戸 #伽椰子 #覚醒 #執着 #ダークロマンス
ネオンの光に彩られていた東京の街が、突如として線香の香りが漂う濃い冷霧に包み込まれた。連合クラン本部の超高層ビルの最上階では、生き残った長老たちが激しく震えていた。彼らは監視モニター越しにその光景を目にしていた。ロビーを悠然と歩く一人の少年と、その隣で足を浮かせて寄り添う、白いドレスを纏った美しい女の姿を。
無月江戸が一歩踏み出すたびに、ビルの電子システムが爆発していく。伽椰子が視線を向けるたびに、エリート護衛たちが次々と倒れ、物言わぬ骸へと変わっていく。
「江戸くん、ここは眩しすぎるわ……」
伽椰子が囁く。その声は美しくも、背筋が凍るような威圧感を孕んでいた。彼女は静かに、江戸の肩に頭を預ける。
「なら、その光を消してあげよう」江戸は淡々と答えた。
大ホールの中央で、江戸は伽椰子を抱き寄せ、足を止めた。数百の銃口と封印術が向けられる中、二人の絆が共鳴し、黒紫色のオーラが爆発。ビルの全窓ガラスを粉砕し、半径一キロ圏内の全電力を消失させた。
【最終人魔合一形態:虚無の皇帝】
「僕の両親に手を出し……僕の愛する者を呪いと呼んだ者たちよ。今夜、お前たちは僕たちの幸福のための生贄となる」江戸の声がビル全体に轟く。
それはもはや戦いではなく、圧倒的な蹂躙劇だった。江戸と伽椰子は、一つの影となって動く。クランの剣が江戸を斬ろうとすれば、その肉体は数千の黒い糸へと変わり、逆に敵を捕らえる。伽椰子はあらゆる影の端から現れ、鈴の鳴るような笑い声を上げながら、長老たちの命を次々と摘み取っていった。
最上階の玉座の間では、最大の裏切り者である江戸の叔父が、恐怖に顔を歪めて這いずり回っていた。
「江戸……許してくれ! 私はただ、我ら一族の繁栄を願っただけなんだ!」
江戸は彼の前に立った。伽椰子が背後から江戸の首を抱き、冷徹な瞳で叔父を凝視する。
「権力のために、実の兄弟の命を売ったのか?」江戸は叔父の手を踏みつけた。「なら、僕は伽椰子の微笑みのために、お前の命を捧げよう」
復讐が完遂されると、江戸は紫の炎に包まれ崩れゆく本部に背を向けた。
崩壊したビルの屋上、星一つ見えない暗黒の東京の空の下で、江戸と伽椰子は寄り添い立った。伽椰子は江戸を強く抱きしめ、互いの額を合わせる。
「これで、もう誰にも邪魔されませんね。江戸くん」伽椰子が愛おしげに囁く。
「ああ。僕と、君と、あの村だけだ」江戸は伽椰子に優しく誓った。「名頃へ帰ろう。この世界に、僕たちの名を『最も美しい悪夢』として刻みつけたまま」
二人は霧の中へと消え、麻痺した都市と壊滅した一族だけが残された。無月江戸と伽椰子の伝説は、ここからまた始まる。――時の流れない案山子の村の、永遠の支配者として。




