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蒼空のルミナ遺跡  作者: ひろゆら


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エピローグ

王立研究院が、正式にルミナ遺跡の発見を公表したのは、それから数週間後のことだった。


王都は、その話題でもちきりになった。


空に浮かぶ古代遺跡。


失われた文明。


未確認空域。


新聞には連日、ルミナ遺跡の記事が並び、研究院には各地から学者や探検家が押しかけているらしい。


学院の中も例外ではなかった。


「リゼ、また呼ばれてるよ」


昼休みの教室。


ミナが呆れた顔で封筒を机へ置いた。


リゼは積み上がった本の隙間から顔を出す。


「今度はどこから?」


「研究院」


「また?」


「また」


ミナはため息をついた。


ここ最近、リゼ宛ての手紙は急増していた。


研究協力の依頼。


古代文字の解読要請。


空域調査への同行申請。


中には、かなり怪しい探検団からの誘いまで混ざっている。


「人気者だなあ」


後ろからノクトが笑う。


「他人事みたいに言わないでよ……」


リゼは机へ突っ伏した。


ガルドは窓際で腕を組みながら外を見ている。


「まあ当然だろ」


短い言葉だった。


「あれだけの発見をしたんだ」


リゼは小さく苦笑する。


あの日から、世界は少し変わった。


空域地図に記されていた未確認地点。


ルミナ以外の浮遊遺跡。


研究院は、新たな探索計画を次々と立ち上げている。


そして。


その中心には、いつも“古代文字を読める少女”の名前があった。


正直、まだ実感は薄い。


今でも時々思う。


どうして自分だったのだろう、と。


けれど。


あの遺跡で見た景色だけは、今もはっきり覚えていた。


青い結晶。


白い塔。


滅びゆく空の都市。


そして。


『知識を未来へ繋ぐ意思を持つ者』


という言葉。


リゼは静かに窓の外を見る。


青空が広がっていた。


遠くでは、小型飛空艇が白い航跡を残しながら飛んでいる。


そのとき。


教室の扉が開いた。


学院職員が顔を覗かせる。


「リゼ・アストラ」


「は、はい」


「来客だ。飛空港で待っている」


「飛空港?」


リゼは首を傾げた。


ミナが嫌な予感をした顔になる。


「……まさか」


数十分後。


学院飛空港へ到着したリゼたちは、そこで見覚えのある飛空艇を見上げていた。


細長い船体。


青い結晶機関。


側面へ刻まれた王立研究院の紋章。


見慣れた研究院の飛空艇が、静かに停泊していた。


「来たか」


タラップの上には、セレナが立っていた。


相変わらず無駄のない黒い外套姿だ。


ノクトが苦笑する。


「嫌な予感、当たったな」


セレナはそんな反応を気にも留めない。


「北西空域で、新たな反応が確認された」


その言葉に、場の空気が少し変わる。


リゼの胸が、静かに高鳴った。


セレナは一枚の地図を広げる。


そこには、見覚えのある光点が記されていた。


ルミナ遺跡で見た、あの古代地図。


その一部と一致する座標。


「おそらく浮遊遺跡だ」


セレナが静かに言う。


ノクトが笑う。


「また遺跡か」


「嫌なら降りろ」


「いや? 行くけど」


ミナは額を押さえた。


「なんでみんな即決なの……」


ガルドは静かに荷袋を持ち上げる。


「出るなら早い方がいい」


完全に行く流れだった。


リゼは思わず吹き出す。


なんだか、おかしかった。


少し前まで、ただの学生だったのに。


今はもう。


未知の空へ向かうことを、誰も迷っていない。


セレナがリゼを見る。


「どうする、継承者」


少しだけ口元が笑っていた。


リゼは空を見上げる。


白い雲。


遥かな空域。


まだ見ぬ遺跡。


知らない景色。


胸の奥が、静かに高鳴る。


そして、小さく笑った。


「行きます」


その答えを待っていたみたいに、飛空艇の浮遊機関が低く唸りを上げる。


ゴゥン……。


風が吹き抜けた。


リゼはタラップへ足をかける。


新しい航路。


新しい空。


その先に、どんな遺跡が眠っているのかは、まだ誰も知らない。


けれど。


それでも進みたかった。


空の向こうへ。


まだ見ぬ世界へ。


飛空艇は、青空へ向かって静かに浮かび上がる。


新しい冒険を乗せて。

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