第22話 映画版「褒めドロ」『下』
第22話 映画版「褒めドロ」『下』
2031年5月24日 土曜日。
秋○原。
曇り空。
山さんは"Gちゃんだった物"持って『ミスターレガシー』の中に入って行った。
古い看板。
色褪せたPCパーツ。
ジャンク箱。
店へ入る。
「いらっしゃ――……あ」
店員の動きが止まる。
視線。
山さんが持っている黄ばんだPC98。
傷。
CCDレンズ。
刻印された"G"。
店員の目の色が変わる。
「……PC-9821Ce2だよね」
店員に信じて貰えないかも知れないが今までの敬意を話す。
沈黙。
数秒後。
店員が急に椅子を蹴る。
「ちょっと待ってください!!」
奥から工具箱。
古い資料。
配線図。
テンションが一気に上がる。
「そんなことがあるんか……!」
「いやマジか……!」
山さんは少し引く。
店員はGちゃんを解体していく。
CCDレンズ。
増設基板。
とても綺麗な半田跡。
本来存在しない配線。
店員は笑う。
「これ作った奴イカれてますよ(笑)」
「褒めてんのか?」
「最上級です」
PCを起動。
ノイズ。
そして。
液晶へ表示。
『Ca-d@年j月ag日土曜日』
『A時空2025年5月24日土曜日』
『ご主人様修理依頼』
『B時空2025年5月24日土曜日』
『山さま成分データ入力』
店員が黙る。
「……内部時計壊れてる」
「直る?」
「いや、これもう“直す”じゃないですね」
店員は苦笑する。
「作り直しです」
山さんは煙草が吸いたくなる。
静かな店内。
「……いくら」
店員の顔が変わる。
「予算あるんです?」
山さんはスマホ画面を見せる。
株売却後の金額。
数秒停止。
「えっ」
空気が変わる。
「なら話違う!!」
店員が立ち上がる。
「天文CCDいけますよ!」
「今度は星まで見れます!」
「温度管理も組める!お湯だって沸かせますよ!」
「空気清浄なんてもう業務用レベルで――」
「いやそこはどうでもいい」
「良くないですよ!!」
店員は興奮している。
工具を広げる。
「ただ問題は外側だな……」
「外側?」
「中はモジュール化された拡張基板収納ユニットでなんとかなるけどそれを入れる入れ物が…」
ーーー
数日後。
紹介された人形工房。
古い住宅街。
ジョギング中によく挨拶するおじさんがいた。
「……あれ?」
「あ」
お互い止まる。
「いつも走ってる人?」
「アンドロイド連れてる兄ちゃん?」
数秒。
山さんは信じて貰えるか不安ながら言う。
事情説明。
おじさんは静かに聞いている。
そしてCCDレンズを見た瞬間。
「あー……」
まだ半信半疑な顔。
「PC98がアンドロイドにねぇ」
山さんが黙る。
おじさんはけげんに笑う。
「予算どれくらいあります?」
金額を見せる。
沈黙。
「……完全人間仕様いけますよ」
「え?」
「皮膚、体温、髪、瞬き」
「全部やれます」
「今の時代そこまで珍しくないですし」
おじさんのテンションも上がっていく。
「汗表現も出来ます」
山さんは頭を掻く。
「よろしくお願いします……」
そして。
ミスターレガシー。
配線。
半田。
コード。
モニター。
山さんもノートPCを開いている。
「だからこのif文が――」
「意味わかんねぇ……」
「プログラム、ほぼ音声学習ですよこれ」
「勢いで作ってたからな……」
「怖ぇよ……」
夜。
煙草。
コーヒー。
大量のエラー。
山さんは何度もコードを書き直す。
『山さま』
『おはようございます』
『空気状態を改善します』
昔のログを見ながら調整。
店員が笑う。
「それ消さないんですね」
ニヤニヤしながら店員は言う。
山さんは少し黙る。(恥ずかしい)
「……まあ、一応必要だから」
ーーー
2032年10月23日 土曜日。
完成。
リバーサイドの住み慣れたボロアパート。
外からは近接メロディーが聞こえる。「夢でもし、会えたら素敵な事でーす♪」
固唾を飲みいざ山さんが電源を入れる。
数秒…「ピー……ガガガガガ……」。
右目のCCDレンズへ光。
そして…。
「山さま」
山さんの動きが止まる。
「おはようございます」
煙草に火をつける。
空気清浄機が静かに動き始める。
[Ce2]
【Cherish END 2】
二人で大切にした終着点
エンドロール。
ノクターンノベルズ『個人用「褒めドロ」』へ続く蛇足です。
ノートPC、D○LL製、極限までハイスペックにして貰った。川○のヨ○バシカメラで即売会してた時に購入、「あれはマジで高かった…」




