20話 映画版「褒めドロ」『上』
五年前、2期中半で打ち切りになった深夜ドラマ『拾ったアンドロイドが空気清浄機能しか褒められない』
作者渾身の打ち切り最終話(2期6話)が人気をはくし「褒めドロ」の愛称で5年の月日を経て映画決定!
20話 映画版「褒めドロ」『上』
2031年1月。
部屋。
灰皿。
煙草。
でもそこには空気清浄機はない。
山さんは何気なく外付けHDDを接続する。
認識不安定。
何度か接続音だけ鳴る。
苛立ちながら再接続。
そこで見つかる。
「G_LOG」
大量の破損ファイル。
文字化け。
ノイズ。
だが一部だけ再生出来る。
『山さま』
『空気状態を改善します』
『御主人様笑顔:保存』
山さんは少し黙る。
煙草をくわえたまま画面を見る。
笑わない。
泣かない。
ただ。
「……なんだよこれ」
ログを読み進める。
接触ログ。
映像保存。
株価記録。
断片的な1994年。
そして。
『B1994年4月29日』
『NEC PC-9821Ce2 外装転送』
『ヨ○バシカメラ駅前店経由』
山さんの手が止まる。
「……地元?」
子供の頃に住んでた所だ。
さらにログ。
『2031年4月29日』
『同期予定』
『時空誤差』
意味は分からない。
でも。
“4月29日にPC98の姿で現れる”
そこだけは理解する。
山さんは苦笑する。
「んなわけあるか……」
その時。
ピンポーン。
郵便受けの音。
無造作に封筒を開く。
株式通知。
クリスマスの日。
Gちゃんが勝手に買っていた株。
山さんは顔をしかめる。
「なんだこれは……」
スマートフォン確認。
数秒停止。
表示された数字。
山さんの呼吸が止まる。
暴騰。
「……は?」
何度も更新。
数字は変わらない。
椅子へ座り込む。
煙草。
灰皿。
静かな部屋。
「……よっしゃあ!♪」
数日後。
売却完了。
口座残高。
山さんはしばらく画面を見る。
最初に浮かぶ感情は感動じゃない。
「……修理できるな」
そこから迷い始める。
直すのか。
終わらせるのか。
そもそも本当にいるのか。
でも4月が近づく。
ログの日付。
1994年4月29日。
山さんは煙草へ火をつける。
「……行くだけ行くか」
そして。
2031年4月29日。
○○。
ヨ○バシカメラ。
店員にPC98がないか確認する。
「すみませんPC98ってないですよね」
店員は不思議がりながらもお客様の熱意に負け捜査する。
管理番号: PC98-94-B-051。
なぜそんな物が倉庫にあったかはわからない備考欄に紛失と書かれている。
上司と相談してお客様に売却。
山さまは自宅でPCに電源を入れる。
ーーー
山さんの動きが止まる。
液晶へ表示。
『山さま』
ノイズ。
『おはようございます』




