第11話「浦島効果・2000年問題」
第11話「浦島効果・2000年問題」
(2030年12月31日23:45火曜日)
20d-年@a月d@日ad:gj aようび
部屋の中には古いゲーム音楽が流れていた。
液晶ディスプレイ。
煙草の匂い。
おもむろにテレビをつける山さん。
激しいファン音。
山さんは床へ座り、 缶ビールを揺らしている。
Gちゃんは隣で静かに座っていた。
右目にノイズ。
(……日時同期:継続)
(……内部時計:動作中)
山さんは煙草をくわえたまま呟く。
「お前さぁ」
「はい」
「なんでそんな土曜日土曜日言うんだよ」
数秒停止。
右目にノイズ。
(……内部基準日時:1994年)
「内部時間基準が継続している為です」
「……は?」
「現在外部時間との差異が増加しています」
山さんは顔をしかめる。
「全然わかんねぇ」
Gちゃんは静かに山さんを見る。
「1994年1月1日は土曜日です」
山さんの動きが止まる。
テレビの向こうで笑い声。
でも部屋の中だけ静かだった。
「……だから何?」
「内部基準時間が補正不能状態へ移行しています」
右目に強いノイズ。
(……長期稼働)
(……日時誤差:増加)
(……2000年問題参照)
山さんが吹き出す。
「お前2000年問題引きずってんのかよ」
「近似しています」
「近似ってなんだよ……」
Gちゃんは数秒停止する。
「長期稼働により、内部時間認識へ誤差が発生しています」
「現在、外部世界との同期維持が困難です」
山さんは煙草を灰皿へ押し付ける。
「つまり?」
数秒。
「山さまの時間経過は5年です」
「はい」
「私の内部時間経過は約36年です」
沈黙。
テレビのカウントダウン特番だけが遠く聞こえる。
カチ、「ふぅ…」
山さんは少し笑う。
「……そりゃ壊れるわ」
「はい」
でもGちゃんは笑わない。
空気の清浄する音、しかし部屋の空気は一向によくならない。右目にノイズ。
(……記録装置劣化)
(……保存領域:圧迫)
(……同期維持:限界)
山さんはふと、 机の上を見る。
外された外部インターフェース。
山さんは缶ビールを飲む。
「……なんかYU-NOみてぇだな」
「確認します」
(……この○の○てで恋を唄う少女YU-NO)
「作中において時空移動理論が使用されています」
「いや説明しなくていい」
「並列世界移動及び時間跳躍――」
「だからいいって(笑)」
山さんは吹き出す。
Gちゃんは静かに山さんを見る。
「ですが近似しています」
「何が」
「現在私は、内部時間のズレにより別時間軸へ近い状態になっています」
少し間。
「……山さまと、同じ時間に存在出来なくなっています」
山さんの動きが止まる。
空気清浄の音が響く。
テレビの向こう。
『10!』
年越しカウントダウン。
『9!』
右目に強いノイズ。
『8!』
(……同期誤差:増加)
『7!』
(……内部時間圧縮:限界)
『6!』
Gちゃんは静かに山さんを見る
『5!』
山さんが顔をしかめる。
「おい、大丈夫か?」
『4!』
(……長期稼働誤差:補正不能)
『3!』
「現在時間を修正します」
『2!』
「山さま」
右目のノイズ
『1!』
「ピー――――――」
液晶ディスプレイが白く点滅する。
部屋の空気が揺れる。
激しいノイズ。
(……日時同期失敗)
(……内部基準時間:1994年)
(……修正開始)
山さんが立ち上がる。
「Gちゃん!」
「山……さ……」
声が切れる。
ノイズ。
停止。
そして。
静寂。
2031年1月1日水曜日0:01
部屋の中は静かだった。
テレビだけが騒がしい。
山さんは立ち尽くしている。
誰もいない。
さっきまでGちゃんがいた場所。
机の上には、 外された外部インターフェースだけが残っていた。
古い接続端子。
擦り傷。
黄ばんだケーブル。
山さんはゆっくりそれを手に取る。
奥からもう使われなくなった古いPCを起動させ差し込む。
部屋には肩を揺らした1人の男がいた。
この文面で浦島効果と平行移動がちゃんと説明出来たか不安。
古いPC、友達から譲って貰った○ーテック愛称をクソと名付ける。




