第一章 二部-1
「……ほう、初対面のはずだが、僕のことをそこまで知っているのか」
少し茶化すように僕が言うと、皐月が答える。
「ええ、あなたの資料を入学前に見ましたので。確かに、あなたの言った通り、成績は実技も座学も平均より少々良いくらい。訓練映像も見させてもらいましたが、平凡という評価は至極当然でしょうね」
「そんな情報、どうやって入手した?」
「当然、コネクションを使ってですわ」
少しも悪びれもせず、むしろそうすることが当たり前かのように言う。
しかし、この業界において情報は生命線である。それを入手するためには、使える物は全て使い、努力を惜しむべきではない。
それを理解し、実践できているという事実から、やはり、彼女は並以上の実力を持っているということは確実だろう。
「じゃあ、どうする?今更変更はできないと思うがね」
「それはどうでしょうか。私の成績はあなたよりも良いですし、実力も間違いなく上。であるならば、下手をすれば命にかかわる状況に置かれる可能性がある以上、私が班長になるのは、理にかなっているますわ。ならば、説明すれば交代されて同然です」
そう言って、皐月は瀬川先生の元に向かう。
「なあ、拓道。あれ絶対殴られるよな」
今まで、黙って横で見ていた慶太がそう言う。
「ああ、だろうな」
教室に鈍い音が響く。
「瀬川先生頭にグーでいったよ、痛そう…… 皐月ちゃん、大丈夫かな。たんこぶとかできてないかな」
桜が言うとおり、あれは痛そうだ。実際、去年は僕も何度か同じように殴られたが、かなり痛かった。
少し目を潤ませ、結さんに手渡された、冷却パックを頭に当てながら、皐月が僕の前に戻って来る。
「だから言っただろう、今更変更はできないだろうと」
「たしかに、瀬川先生には、これは決定事項であり命令であると言われましたわ。ですが方法はいくらでもあります。せいぜい、短い班長の経験を大事にすることですわね」
そう皐月は言って、自分の席に座ると、自分のスマートフォンをいじりだす。
慶太が、僕に大げさにお手上げのポーズを取り、その背中を桜が叩く。。
そんな二人に少し励まされはしたが、班員とうまくやっていきたいという目標は、最初から暗礁に乗り上げ、ため息が出てしまう。
結局、その日の授業は顔合わせと簡単な連絡で終わり、解散となってしまう。




