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プロローグ
何が起こったかわらなかった。
いきなり誰かにつき飛ばされ、床に体を打ち付けた。
顔を上げ、振り返りざまにこもった爆音が響き、姉の身体が跳ねるのを見た。
なんだ、これ。
なんだ、これは。
うつぶせのその身体から、白い大理石の床へ艶やかな紅が広がる。
わからない、いや、すでに頭はそれを理解している。
姉の死を。
だけれども、心はそうではなく、まだ姉が生きているかもしれないと思わせる。
どこからか銃声が聞こえるが関係ない。
その身体に駆け寄り、仰向けにして救命処置を試みる。
意識はない、呼吸もない、腹部からはとめどなく血が流れている、そして心臓の鼓動は感じられない。
姉の腹部の服を破くと傷が顕になり、自分の白いシャツを傷に当て、圧迫する。
それでも出血は止まらず、紅く布を染め上げ、無情にも床へと滴り落ちる。
助けを求め叫んでも、パニックに陥った人々の耳には届かない。
腕に力を入れ、叫び続け、気づくと辺りは静かになっていた。
姉は死んだ。
冷たい身体が、辺りを染めた血が、閉じたままの瞼が、僕の心に理解させる。
何故、こんな事になったのか。
誰が、こんな事にしたのか。
そいつは誰なんだ。
灰色の煤が舞う中、僕は復讐を決意した。




