第1章 第1節:困難のない人生には、生きる価値がない。
「挑戦のない人生など、生きるに値しない」……そんな言葉から、この話は始まる。
セレバー・デ・ラ・ロサ。
生まれたばかりの頃から、あまり幸運には恵まれなかった少年。
八歳のある日、彼は学校から家に帰った。
しかし家の中に足を踏み入れた瞬間、その後の人生を永遠に縛りつける光景が目に飛び込んできた。
泥棒が家に侵入し、貴重品を奪い、両親を殺していたのだ。
床に広がる血だまりと、そこに横たわる両親の亡骸。
幼い少年は絶望のあまり、その場に崩れ落ちた。
体を震わせ、かすれた声で、激しく鼓動する心臓を抱えながら、涙を流して叫んだ。
「誰か……助けて……!」
その声を聞きつけた一人の犯人が家の中に戻り、両親の亡骸を抱きしめて泣いているセレバーを見つけた。
犯人は子どもに襲いかかり、力任せに蹴り飛ばした。
セレバーは必死で逃げ出した。
しかし犯人は追ってきた。証人が残っては困るからである。
セレバーはこれまで以上に必死で走った。
家の近くにあった森に隠れ、犯人が去るのを待った。
その後、彼は祖母の家へ向かった。
祖母は曾祖父と一緒に暮らしていた。
泣きながら事情を説明するセレバーを見て、祖母はすぐに警察を呼んだ。警察はほぼ同時に到着した。
一ヶ月にわたる捜査の末、警察は犯人のうち二人を逮捕した。
だが三人目の行方は杳として知れなかった。
事件は「解決」したことになったが、セレバーの頭の中からは、床に倒れていた両親の姿が消えることはなかった。
一週間ほど学校を休んだ後、彼は登校した。
すでに全員が事情を知っていた。
教師たちは慰めようとしてくれたが、うまくいかなかった。
そんな中、同じクラスで同じ年の少年――アントニーが近づいてきた。
以前からセレバーが痩せ型で内気なことを理由にいじめていた相手だ。
そのアントニーがこう言った。
「お前の親は弱かったから死んだんだろ」
周囲は言葉を失った。
後のことはどうでもよかった。
セレバーはアントニーの顔を殴った。鼻から血が流れた。
それは何ヶ月も溜め込んでいた怒りが爆発した結果だった。
セレバーはクリスチャンだったため、これまでほとんど言い返すことも、罵ることもなかったのだ。
教師は二人を叱り、教頭室へ行かせた。
あの日から、セレバーは自分を厳しく追い込むようになった。
頭の中を繰り返しよぎるのは、こんな言葉だった。
――俺は足りない。
――もう弱いままでいたくない。
――祖父母のために、もっと強くならなきゃ。
――自分のことが嫌いだ。
アントニーによるいじめは、すでに一年以上続いていた。
アントニーはセレバーを深く憎んでいた。
自分がなりたかった存在がセレバーだったからだ。
一方のアントニーは、クラスでも一部の教師からも嫌われていた。あまりに落ち着きがなく、反抗的だったからである。
内気ではあったが、セレバーは人を惹きつける魅力を持っていた。
彼が何か話せば、周囲の人間は自然と笑った。
だからこそアントニーは彼を罵り、嘘を広め、時には手を出し、犬の糞を投げつけたりもした。
学校だけではない。
外ではさらに酷かった。
アントニーは三人の仲間と一緒に、セレバーに石を投げつけた。
ある時には彼をゴミ箱に閉じ込め、蓋を閉めて逃げた。
三十分ほど経ってから、通りかかった青年が鍵を開けて助けてくれた。
その日からセレバーは、曾祖父に師事して訓練を始めた。
曾祖父は第二次世界大戦を戦った元軍人だった。祖父が亡くなったため、祖母の家に同居していたのだ。
数日間の訓練を終えたある日、曾祖父はセレバーのその後の人生を長く彩ることになる言葉を口にした。
「弱いままでいるな、小僧。そうじゃなきゃ、悪い奴らにいつまでも踏みつけにされるぞ」
子どもに言うには少々厳しい言葉だったが、曾祖父はセレバーを奮い立たせるためにそう言ったのだった。
十二歳になったある日、セレバーはアントニーから受けている仕打ちを曾祖父に打ち明けた。
ある午後、帰宅途中のアントニーが路地を通りかかった時のことである。
セレバーの曾祖父が彼を呼び止め、力ずくで首を掴んだ。
「お前が何をしたか、知っているぞ」
そして折りたたみナイフで、アントニーの右腕に傷をつけた。
そのまま地面に放り投げる。
「今のことを誰かに言ったら……次はお前の親だ」
実際に親を傷つけるつもりはなかった。
ただ、自分の側に騒ぎを起こさないための脅しだった。
それから四年余りが過ぎた。
セレバーは高校二年生になっていた。
以前より強く、自信を持った彼は、もうアントニーに怯えることはなかった。
自分なりの在り方を築き上げていた。
長めの黒髪、太陽に焼けた肌、引き締まった体躯。そして人を惹きつける、明るくてユーモアのある性格。
八歳から十六歳までの間に、セレバーはあまりにも多くのものを経験した。
トラウマ、挫折、心に残る深い傷。
それらはたとえ誰かに助けを求めたとしても、簡単には癒えない類のものだった。
正直なところ、私もあの少年が味わった出来事を思い出したくはない。
……
アントニーはもう物理的な暴力は振るわなくなっていた。
それでも言葉での侮辱は続いていた。
セレバーはもう気にしなかった。無視した。
アントニーに対する怒りをすべてぶつけてしまえば、取り返しのつかないことになるとわかっていたからである。
ある日、クラスは最終登校日の遠足で、滝の多い場所へ向かった。
行きたくはなかったが、セレバーは仕方なく参加した。
現地に着くと、彼は他の生徒から離れて、一人で斜面にいた。
だが運は彼に味方しなかった。
ふと気を抜いた瞬間、アントニーが彼を押し落とした。
一番大きな滝のほうへと。
周囲の人間がセレバーを慕っていることに、アントニーは嫉妬していたのだ。
その瞬間、セレバーは周囲を見渡した。
体を打つ風、落ちていく水、飛ぶ鳥たち。そして下方に広がる、硬く尖った岩場。
……
その時、セレバーは死を受け入れた。
そして思った。
――ああ、もう死ぬんだな。でも人生なんてゴミみたいなものだったし、どうでもいいか。
ただ、祖父母に十分な存在になれなかったことだけが、少し悔やまれる。
――それに……死んだら、自分はどこへ行くんだろう。
しかし岩に叩きつけられる直前、彼は空間のような場所へと転送された。
目を開けると、目の前に神々しい存在が立っていた。
人間に酷似していたが、正確には「人間が彼の姿に似せて創られた」といった感じだった。
黒髪、白すぎない白い肌。
身長はおよそ一メートル八十センチ。
服装は極めて上品で、黒のスーツに白いネクタイ、黒いスラックスと革靴。
右手首には金色の腕時計がはめられており、その中には宇宙のようなものが広がっていた。
そして顔――顔には白い光が宿り、表情を見ることができない。
「こんにちは、セレバー」
目の前の存在がそう言った。
セレバーは困惑した。
「……さっきまで滝から落ちてたはずなんですけど」
「私がここへ転送した。君に死んでほしくなかったからだ。君の旅はまだ終わっていない。だからこの宇宙へ連れてきた」
「あなたは……誰ですか?」
「多くの者が『神』と呼び、『父』と呼び、『創造主』と呼び、『主』と呼ぶ。だが君は『グランデ・C』と呼んでくれればいい。私は至高の神であり、君をここに呼んだのには大きな目的がある。今は明かせないが、君が準備できた時に必ず教える」
「ああ、じゃああの本に出てくる、みんなに愛されて憎まれてる神様ですか?」
セレバーが笑うと、グランデ・Cも笑った。
「その通りだ、我が子よ」
「すごい……お目にかかれて光栄です」
セレバーは跪いて微笑んだ。
「立っていい」
「ここは……宇宙なんですか?」
「ほとんどそうだな。だが今は重要ではない」
「そして今から、君を別の世界へ送る」
何か言い返す間もなく、セレバーの足元にポータルが出現し、彼を飲み込んだ。
気がつくと、彼は古い趣のある街の前に立っていた。
夕日が沈みかけ、街を美しく染め上げている。
上を見上げると、街の入り口をカラスが旋回していたが、気にしなかった。
しかしすぐに、どうしても無視できないものに気づいた。
この世界には、土星のように宇宙の塵でできた環が浮かんでいたのだ。
「すげぇ世界だな……何か特別な能力でももらってるのかも」
アニメや漫画の大ファンであるセレバーは、手を伸ばして何か力を発動させようとした。
当然、失敗した。
「ファイアボール!」
いる場所もわからない人間にしては、かなり自信満々な叫びだった。
「……やっぱり何も持ってないみたいだ」
彼はがっかりしたように呟いた。
「それでも……この世界で、いい人生を送れますように」
セレバーは希望を込めてそう言った。
長い間味わってきた挫折の後で、もしかしたら――ただもしかしたら、ここでなら少しは幸せを感じられるかもしれない。
そう思った瞬間だった。
どう思いましたか?




