099話 5月23日#10
とりあえず壁際を探してみたが、特に不審な点は見つからなかった。
一方、テンは何とかレイのやる気スイッチを入れることに成功したようだ。
「……で、何すればいいんだ?」
レイが首を傾げると、テンは水晶玉を指しながら言った。
「あれを取り外して、スイッチを切る」
「……届かないぞ?」
「僕が君を肩車してあげる……あ、でもその前に……」
テンが、また服をごそごそやってる。
「……はい」
「これは?」
「簡易ガスマスク!」
――何でそんなもん持ち歩いてんだよ?
「さすがに顔近づけると危ないからね」
「着け方……こうでいいのか?」
「うん!じゃあ……」
その後テンはレイを肩車したのだが……何か嬉しそうなのは気のせいか?
「……届かない」
「絶妙に届かない高さだね……」
レイもテンも、ちょっと思案していた。
「……台はないのか?」
「帽子の中にはあるんだけどね」――あるんだ。
「じゃあ、私より大きいカイトを肩車するとか?」
「何で僕が男を肩車しないといけないの」
――そこ、こだわってる場合か?
「んー、じゃあジャンプするとか」
「そんな危ないこと、できないよ」
「私が立つとか」
「それも危ないねー」
「えーっと、じゃあ……」
「……グフッ!グホッ!ゴホッ!ゲホッ!」
――結局、レイに代わって俺が肩車されることになった。
「やっぱり重いし、むさ苦しいし……」
「……後で殴るぞ」
テンは文句たらたらだったが、水晶玉を外して、スイッチを切ることに成功した。
とりあえず、ガスの噴出は止まった。
「……ガス吸ってたみたいだが、大丈夫か?」
俺が心配していると、テンはこう言った。
「君なんかに心配されても嬉しく……ん?」テンは不思議そうに首を傾げた。「……あれ?大丈夫だ」
「じゃあ、あれやっぱりただ臭いだけのガス……?」
「……いや。さっきちょっと血を吐いたんだけど」テンはそう言って、床を指さした。
――確かに、血痕があるけど……
「……まあ、大丈夫ならいいや。後はどうやってこの部屋を脱出するか……」
「……もう出られるよ……?」ソラはそう言って、鉄の扉を開いた。
「え?」
「ガス止めたから?」
みんなで首を傾げた。
「……ま、いいや。とにかく、先行こう!」
そして、俺たちは廊下に出た。
この廊下は、さっきの部屋よりずっと明るく、眩しいくらいだった。
しかし……
『ギギ!ギシギシギシ……!!』
振り返ると、蜘蛛のような形のロボットが、こちらに近づいてきていた。腹が平たくなっている。
「なんだありゃ!?」
蜘蛛ロボットは動きを止め、頭を逸らせた。
「何か来る!伏せ……!!」
「……とりゃあ!!!」
突然テンが叫び、何かをいくつか、蜘蛛ロボットに向かって投げつけた。
すると蜘蛛ロボットに、太い蜘蛛の巣のようなものが絡みついた――あれは……
「『スピンドルスパイダーネット』!!!」
『ギシギシッ……ギシッ……』
蜘蛛ロボットは動けなくなり、攻撃は不発に終わった。
「お前……それ……」
よく見るとテンの手の中に、見覚えのある箱があった。
「僕のもう1つの武器だよー!」
「そんなデカいものが入るって……お前の服の中、一体どうなってんだ……?」
「それはねえ……ヒ・ミ・ツ!」
「………………」
ともかく俺たちは、蜘蛛ロボットのいる方とは逆の方向に、廊下を走り始めた。




