302話 6月20日#35
それから1時間ほど経って。
俺たちは、街のはずれまでやって来た。
「谷筋を通って歩けば、そんなに大変な道のりではないはずです。目指す穴は、わりと街の近くにありますから」
そしてもう1時間、俺たちは急な坂道を歩いていた。
さすがに疲れた俺は、あくびがこらえきれなくなった。
「……カイト君、大丈夫?」と、テンが訊ねた。「君、走り回ってたんでしょ?」
「……ああ。実は今すぐ倒れて寝そうなくらい疲れてる」俺は頭を掻いた。「でも、この街にいると危ねえだろうからな」
「……ええ」カヤは頷いた。「この後パニックが転じて、暴動が起こるみたいです」
「『起こるみたい』って……」
「わたくしも悲しいですが、そのあたりはここを警備している兵士や警察の方に任せるほかないようです」
やがてカヤは、ふとその場で立ち止まった。周囲に建物はなく、見晴らしのいいスポットだった。
「……日の出はまだまだ先ですね」カヤはくるりと街を背にした。
「……今夜はだいぶ長いな」
「夏至なのにね」
「そうですね」
それからさらに数十分間、俺たちは黙々と歩き続けた。
その後、カヤは再び立ち止まった。街の建物は後方へ過ぎて、代わりに全方向が岩に囲まれていた。
「余計なお世話かもしれないけど……」と、テンは言った。「カヤちゃん、大丈夫?疲れてない?」
「お気遣いありがとうございます」カヤはテンの方を振り返った。「ですが、大丈夫です。目的の岩穴は、すぐそこです」
実際、今のカヤは『進む』というより『探す』ことを優先しているようだ。
――そして、
「……ここにありました」カヤさんは、手招きした。「こちらです。足元にお気をつけて……」
少し段差があって中に入ると、結構大きな空間がそこにあった。真っ暗でよく見えなかったが、俺のライトとテンのランプで照らしてみる限り、岩と岩のすき間の空間であることがわかる。
「……とりあえず、少し休もうか」テンは帽子をとって、中をガサゴソやりだした。「レジャーシート敷いて上に毛布を広げれば、少しはリラックスできると思うよ」
「助かります」カヤはほっとしたように言った。「お二人も疲れていらっしゃると思いますし、ここで少し横になっていましょう」
カヤは『少し』と言ったが、俺もテンもだいぶ疲れていたので、5時間近くそこで眠ってしまった。




