120話 5月25日#06〜太陽の神とドゥファン〜
「……ソフィアって、学校の校長じゃなかったのか?」
部屋で待っている間、俺はソラに訊ねた。
「もうちょっと正確に言うと、ソフィアは学習塾の会社のトップ……その利益の一部を、さっきのみたいな学校の経営に回してる……」
――とりあえず、すごすぎる人だということはわかった。
「もともとソフィアのお母さんの会社だった……」
「へえ。母娘で才能溢れる人たちだねぇ」
テンは口笛を吹いて、だらけた姿勢で椅子に座った。
「母と娘って、モルガンと一緒だな」
「そのあたりが、似ている者同士なのね」
そんな話をしていると、やがて扉が開き、ソフィアが中に入ってきた。ポットとカップが乗っているトレイを両手で持っていたのは、ちょっと意外だった。
「少し長くなる。茶でも飲みながら話そう」
お茶が1杯ずつ全員に行き渡ると、ソフィアは改めて自己紹介をした。
「もう知っているだろうが、私はソフィア。『おとめ座の星霊使い』だ」
「……あー、もしかして、俺たちのことはもうわかってます?」俺は遠慮がちに訊ねた。
「ああ。だから、君たちは自己紹介しなくていい」
ソフィアはそう言うと、テーブルの中央に紙の資料をドンと置いた。めっちゃ分厚い――500ページくらいありそうだ。
「君たちの敵に関する資料だ」ソフィアは、空いている席に座った。「もう少し詳しく言うと、『ピース教団』に関する資料だ」
「えっと……」テンは戸惑って口をもごもごさせた。「『ピース教団』って、僕たちの敵なの?」
「そうだ。わかりやすく、順番に説明しよう」ソフィアは資料をめくった。「君たちが一番警戒しないといけないのは『ドゥファン』という男だ。太陽の神と手を組んで、この国……いや、この世界を破壊しようとしている」
「「「「…………は?」」」」
――何か、急にスケールのデカい話が出てきた。
しかしピエール33世は、『やっぱそうですよねー』と悲しそうにつぶやいた。
『太陽の神は、ワタクシを殺そうとしているんですけど、それって『神が1人いなくなる』ってことでしょ?そうすると、世界の秩序が壊れるのは、何となくわかりますか?』
「そ、そうかもしれないけど、」俺は首を傾げた。「そもそも、そんな『神を殺す』みたいなこと、神様が考えるのか?」
『えっとー、たぶん想像するの難しいと思いますけど……太陽の神って、結構感情が激しいというか、怒りやすいタチの神なんです』
「それで、そんな極端なことを……?」
『はい。ワタクシが邪魔でしょうがないんでしょう』
――楽天家の月の神とは、だいぶ違う性格のようだ。
「……で、ドゥファンの方は、この世界を憎み、破壊衝動に駆られている」
――それもまた、理解しがたい話だ。
「幼い頃からさまざまな悪い経験をした結果、全てのものを敵視するようになった、哀れな男だ」
「そもそも、その『ドゥファン』って人は、何者なんですか?」
テンも真剣になっているのか、椅子に座り直して前のめりになっていた。
「……『てんびん座の星霊使い』……」
俺たちは、一斉にソラの方を見た。
「つまり……あたしたち星霊使いのうちの1人……」
「……てんびん座……」俺は、自分が持っている、あの緑色の石を思い浮かべていた。




