117話 5月25日#03
モルガンは「覚悟しろ、ウィルゴ!!」と叫びながら、女性に向かって素早く飛んでいった|(やっぱり飛べるらしい)。
だが、女性は動じていなかった。
女性は不動のまま、植物の蔓がもう一つ生え、モルガンに棘を叩きつけた。
「私のことは『ソフィア』と呼べ」
女性――ソフィア――がそういった途端、講堂の床や壁や天井から一斉にたくさんの蔓が伸びてきた。そのうちの4本が1本ずつ、握るようにハチェットの柄に巻き付いていた。
俺たちは、思わず後ずさりした。
「……何度かそう言っただろう?」
ソフィアの声が、壁に反響して聞こえてくる。
「知るか!」
モルガンはまた勢いよく飛び出そうとしたが、蔓が伸びてきたので後退するしかなかった。
――その後が、すごかった。
モルガンは、四方八方+上下から来る蔓の叩きつけを避け、かつソフィアの両手と蔓によるハチェットの投げ合いをかわさないといけない状況に陥った――それがめちゃくちゃ速い。正直、一般人の俺の目では、全然追いきれない。
それなのに、ソフィアはその場から一歩も動かず、機械的にハチェットを受け取り投げる動作を繰り返していた。
「何あれ?」隣を見ると、テンがぽかんとしていた。「……曲芸?」
「あの人、絶対強いわよね」テンの肩に乗っていたリアも隣を見た。「いくらアリエスでも、あれには勝てないんじゃない?」
「………………」
――レイは読書中だった。
それはさておき、一般人ではないモルガンは、ソフィアによる攻撃全てを避けきっていた。
「我がそんな攻撃に怯むとでも思ったか……我の鱗に、その攻撃は通じぬ」
そう言った後、モルガンの体は黒い鱗に覆われて、尻からも黒い尾が生えてきた。先端が尖っていて、おそらく毒も持っている。
モルガンは、蔓の叩きつけもハチェットも力に任せてはねのけ、ソフィアに殴りかかっていった。
しかし、その拳がソフィアに到達する前に、2人の間に植物の葉が現れた。蔓から生えているその葉に、モルガンは傷一つつけられなかった。
仕方なく、モルガンはまた後退した。
「一方的だねえ」テンは講堂の壁に寄りかかりながら言った。「あのモルガンって子、もしかしなくても本来の力が出せていないよね」
『みたいですねー』ピエール33世はじーっとカメラをモルガンに向けていた。『本来のレジェンダリなら、『数人の星霊使いが集まって、ようやく倒せる』くらいの強さがありますから』
「あの『ウグイロン』とかいうドラゴンでさえそうだったもんな」
「そういえば、普通にドラゴンの姿になれば、もっと強くなるんじゃないの?」
――リアの言うとおりだ。
「もしかして……『変身』できない……?」
『かもですねー。ありえます』
俺たちがそんな話をしていると、ドンと何かが床に叩きつけられる音が聞こえてきた。
見ると、太い蔓に巻き付かれ動けなくなったモルガンが、何度か床に打ちつけられていた。
そして最後に蔓がモルガンを投げ飛ばし、モルガンは壁に全身を打ちつけ、床に伸びてしまった。
「……勝負あったな」
俺たちは、傷だらけで倒れているモルガンと、最後までその場から動かなかったソフィアを交互に見つめていた。




