114話 5月24日#08
定期船の食堂では、乗客たちに軽食が振る舞われていた。
以前ウラヌスで食べた料理に比べるとずっと素朴だが、なかなか美味かった。
「うーん」テンは、食堂全体を見渡していた。「いないね、モルガンさん……」
「人間の食い物は食わないんじゃないか?」と、レイは言った。
『何食べてるんでしょうかねー?ワタクシもよく存じません』ピエール33世は緑色にピコピコ光った。
「まあ、それは置いといて、」リアはソラの方を向いた。「どうするの?あたしたちがウィルゴに会いに行ったら、たぶんあの人もついて来ると思うけど?」
「仕方ない……」ソラはため息をついた。「あたしたちの目的とは違うけど、『目的の人物』は一緒だから……あとはウィルゴに判断を仰ぐ」
「ちなみに、」テンは、ソラを安心させたいのか、柔らかく微笑んだ。「今から会う『ウィルゴ』さんは、モルガンさんのことを知ってるの?」
「うん……」ソラは頷いた。「次に会ったらウィルゴと勝負して、モルガンが勝ったら『鍵』を渡す約束……してた……」
「それ、大丈夫なのか?それを契機に、またレジェンダリが力をつけるんじゃ……?」
俺が心配していると、ピエール33世がこう言った。
『まあ、大丈夫だと思いますよ。この国にいるレジェンダリは、たぶんモルガンさんと彼女のお母さんだけだと思いますから。例え『黄金の林檎』を手に入れられたとしても、昔のような支配力を取り戻せるとは思いません』
「ウィルゴも同じこと言ってた……でも、あたしは心配……」
「まあ、そうよね」リアは肩をすくめた。「ちなみにレジェンダリって、あたしたちが束になってかかって、勝てる相手よね?」
『どうでしょうね』ピエール33世が答えた。『まあ、そんな戦いをしたら、少なくとも街の1つか2つくらい消し飛ぶと思いますけど』
「……じゃ、今の話、なかったことにして」
「困ったな」俺は天井を見つめた。「またややこしい奴が現れたな」
「確かにねえ」テンは苦笑いをした。「でも今のところ、僕たちにできることはなさそうだね」
「もう乗船してるんだもんな」そう言ってから、レイはあれ?と首を傾げた。「モルガンは、飛べるのか?」
『それは……本人に聞かないと、何とも』
「飛べるなら、無断で乗船している可能性も……?」
「……だったら、自分の翼でヴィクトリアへ行けって話だけど」
――いずれにしても、テンの言うとおり、今は成り行きを見守ることしかできなそうだ。
夕飯を食べ終わると、俺たちは席を立ち、船室へと戻った。




