108話 5月24日#02
バッカスを出て東へ進んでしばらくすると、乾燥した大地が広がるエリアに出た。
乾燥地帯と言っても、草や木はそこそこ生えていて、あちこちで群れている草食動物たちが、草をはんでいるのが見えた。風もそんなに強くなかったが日差しが強かったので、俺たちはリビングの窓から外を眺めていた。
「そんなに海岸から大きく離れているわけでもないのに、不思議ねえ」
リアは窓に小さなクッションを敷いて、その上で寝転んでいた。
「イェリナの森は、海からの風が山にぶつかるところにある……」ソラはガイドブックを読んでいた。「このあたりには大きな山がない……雨が少ない……」
「今は乾季に入りかけてるくらいだから、植物もまだ全部は枯れていないだろ」
レイは本を読みながら、補足説明をしてくれた。
「そういや、ずっと思ってたんだが、」俺はソラの方を向いた。「ソラとテンって、何で俺たちと一緒について来てんの?」
「……え?」部屋にはいないテンの声が聞こえてきた。「だって、『仲間』じゃん!」
「……勝手についてきてごめんなさい……」ソラはそう言って謝った。
「えーっと、」俺は頭を掻いた。「……とりあえず、まずソラは飼育員の仕事はいいのか?」
「うん……」ソラは下を向いていた。「もともと辞める予定だったから……」
「へえ。何で?」
リアは遠慮なく訊ねた。
「もう言っていいと思うけど……あたし、王都でこっそり情報収集してたの……」
「『情報収集』……?」
「『ピース教団』とあなたたちのこと……」
「え!?」
「……ごめんなさい……こそこそ見張ったりして……」
「それって、『おとめ座の星霊使い』にやれって言われたの?」
「……うん……ヴィクトリアへ行くかどうか見てろって……」
――まあ、それは重要かもしれないな。ヴィクトリアへ来てほしいなら。
すると、ずっと読書していたレイは、ふと目を上げて本を閉じ、ソラに訊ねた。
「ソラは『星霊使い』なのか?」
「うん、そう……『しし座の星霊使い』……ゴーレムがあたしの武器……」
「「あれ、武器なんだ」」俺とテンの声がハモった。
「まあ、あんたはどう見ても普通の人じゃないもんね」
リアは頭だけこちらに向けながら言った。
「ふーん、そうか……」
レイは急に興味がなくなったらしく、また本を開いて読み始めた。
「……で、テンは?」
俺が問うと、テンはおどけて言った。
「僕も『星霊使い』だよー」
「ウソは言わなくていい」
「どうしてウソだと?」
「お前、俺が説明するまで『星霊使い』のこと知らなかっただろ」
「……わかる?」
「わかるよ。でも、お前が何者なのか教えて……」
「だからそれは、ヒ・ミ・ツ!」
「……もう、いいんじゃない?」リアはクッションを抱きしめてごろごろし始めた。「どう見ても敵のスパイには見えないし。勝手にさせとけば?」
「……まあな」俺はため息をついた。「いると、何かと役に立つしな」
「お〜!わかってるね〜!」
それから数時間がたち、昼前にピエール号はトリトンに着いた。




