105話 5月23日#16
俺たちは、廊下を走って|(レイとピエール33世は飛んで)、『ロックボーン』から逃げまくった。『ロックボーン』が火で燃え上がっているため、建物のあちこちに火が燃え移り、火災がどんどん広がっていった。
「てゆーか!ちっこいくせに、足速くない!?」リアは、俺の肩に掴まりながら叫んだ。
「……この扉……!」ソラが、大きな扉を見つけた。「きっと、表側へ出られる……!」
俺たちは雪崩込むように扉の先へ入った。
確かにそこは、カジノの『表側』だった。テーブルや遊戯用の魔巧機械がいくつかごちゃごちゃと置いてあり、あちこちで人型ロボットが床に倒れていた――たぶん、開店準備中に電気の供給がストップして動けなくなったんだと思う。
――そして俺たちを追いかけて、『ロックボーン』も同じ部屋に入ってきた。
『ロックボーン』は、テーブルもロボットも蹴り飛ばして|(ついでに燃やして)、テーブルを避けて走らざるを得ない俺たちに、どんどん近づいてきた。
「あれに効く魔法は何!?」テンは、走りながら誰にともなく訊ねた。
『『水』……といいますか……』
「……『お湯』……」
「僕、『冷水』なら出せるんだけど……!」
「……あ。私、『沸騰』させられるよ?」
横に並んでいたレイとテンが、互いに顔を見合わせた。
「わかった!レイさんお願い!」
テンは急ブレーキをかけると、後ろを振り返り、一度深呼吸をして、呪文を唱えた。
「『清き山々から流れ落ちる急流よ、闇を浄化し光明を呼び寄せろ』!」
テンがパチンと指を鳴らすと、テンの前に魔法陣が現れ、そこから大量の水が『急流』のような速さで噴き出した。
『ロックボーン』はテンに向かって小さな岩らしきものを投げつけていたが、その岩ごと後ろへ流されていた。
間髪入れず、レイの魔法が炸裂する。
「『エレクトロウェイブ』!」
――といっても、レイは剣を『ロックボーン』に向けてはいたが、見た目は特に何も起こらなかった。
――しかし、水でびしょびしょになっている『ロックボーン』の動きが止まった。
そして、『ロックボーン』の体や水に濡れた廊下から湯気が立ち上り始めた。
「あああああ!!!」『ロックボーン』が叫ぶ声が聞こえてきた。
――よく見ると、体が柔らかくなり、ぼこぼこと音を立てている。そう――『水』が『沸騰』していた。
「え、これ……!」俺はつぶやいた。「もしかして、『水を温める』魔法なのか……!?」
――なるほど。海が蒸発した上に、水の塊であるソラやドラゴンにも影響が出るわけだ。
「あああああ……ああ……!」
『ロックボーン』は、床に張り付き、ぼこぼこ音を立てる泥のようなものに変化し始めた。
「……ああ……あ……」
そしてとうとう全身が泥に変化し、全く動かなくなった。
「……やっつけた……?」
「わーい!」テンは明るい声を上げた。「さすがは僕!『天才魔術師』だね!!」
「……確かに、ようやくテンが『魔術師』だってことが理解できた」
俺がそう言うと、テンは「でしょ、でしょーー!!」と大きな声を上げた。
「……やー!でもレイさんもすごいよ?僕と息がぴったりだったし」
「そうか?」
「レイさん、めっちゃカッコいいもん!僕惚れちゃうなー!」
「んー。よくわからんが、とりあえずハイタッチ」
「ハイタッチ♪」
レイとテンがハイタッチしていた。レイは、テンと比べるとテンションがかなり低いが、自分からハイタッチしたということは、それなりに喜んでいるんだと思う。
「でもでも!僕もカッコいいでしょ?レイさん、いつでも僕に惚れていいからね!」
「う、うむ。そうか……?」
俺は苦笑いしながら、カジノの入り口を解錠して扉を開けた。
――目指すは屋上!そこでデーンさんから持ち物を取り返す!
この『レイとテンの共闘』の場面は好きです。




