表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/32

第二章 泰三の話-10

※本作は 文芸社より2026年7月に書籍化 されます。

応援してくださる皆さまのおかげです。ありがとうございます。


30歳のとき、僕の人生は音を立てて崩れた。

母のくも膜下出血による介護、うつ、解雇、転職失敗。

どれかひとつでも重いのに、一度に全部が襲ってきた。


それでも――

毎日「1日20分だけ」書くことを続けた。


この作品は、

人生のどん底に落ちた男が、

どうやってもう一度立ち上がったのかという、

“再生の記録” です。


読んでくださるあなたの人生が、

少しでも軽くなるなら、それ以上の幸せはありません。



普段、用がない限りはめったに東京に行くことはないであろうと、最後のお別れに、再度、「ハチ公」を見に行くことにした。相変わらず大勢の人が銅像の回りに群がっていた。その中心で、毅然と飼い主を待っているハチ公の雄姿を目に焼き付けた。


「俺も、お前のように、忠実に生きるようにするよ」


そうハチ公に勝手に約束をし、泰三は元気よくその場をあとにした。


渋谷駅から秋葉原駅へは、山手線内回り、東京方面で約三〇分だ。泰三は、東京に不慣れで心配性なため、いちいちスマホで時刻表を確認した。数分おきに電車はやってくるのだからいいのだろうに、生まれ持った性格は、あまり変わることはないのだなと感じた。秋葉原のイメージは「オタクの聖地」だ。東京に来たからにはぜひ行っておきたい場所の一つだった。泰三はゲームも好きだが、アニメも大好きだった。秋葉原に行けば、きっと好きなアニメグッズが山のようにあるだろう。オタクの人たちは、それを「宝島」と呼ぶのかもしれない。それに、気になっているメイドカフェも体験したい気持ちも恥ずかしながらある。泰三は、はやる気持ちを抑えつつ、山手線内回りに乗り、秋葉原駅に着くのを心待ちにした。


山手線を降りると、ホームはすでにアニメのキャラクターたちで溢れていた。さすが秋葉原。これがオタクの聖地かと、まるで無邪気な少年時代に戻ったかのように、童心に帰っていた。


それでも感情を抑え、ひとまずは、秋葉原駅北側の電気街に向かった。お楽しみは後に残しておいた方がいい。電気街北口改札を抜けると、そこには古いながらも歴史を感じる電気店が並んでいた。一画の店に立ち寄ってみる。たくさんの電気部品がこれでもかというくらいに溢れていた。泰三は大学の工学部で電気専攻なので、抵抗やトランジスタ、コンデンサなど、基本的な知識は一応持ち合わせている。ただ、何に使うのかよく分からない部品も数多く存在していた。一部の人からすれば、それこそ「お宝」といわれるものも多くそろっているのだろう。熱心に何らかの部品を探す中年男性が多く見受けられた。日本をモノづくり大国と言わしめるに至ったのは、このような熱心な人たちがいたからだろう。泰三は人知れず感謝していた。今の泰三には、自作のPCを作ったりするほどの技量は持ち合わせていない。ただ、秋葉原が、戦後の日本を下支えしてきたであろうことは容易に想像できた。秋葉原は元来、電気街だ。それが、今となっては正反対だとも思われるオタクの聖地として崇められている。異色の文化が共存しており、少し不思議に思えた。とりあえず、電気街に感謝だ。これから大学でしっかりと勉強しなきゃだめだと、泰三は身が引き締まる思いとなった。


とはいうものの、泰三は、アニメやゲームが大好きな、今時の若者である。今はとにかくオタクの聖地をこの目で確かめたい一心だった。この際、電気回路やPCのことなど忘れてしまえ。泰三は、嬉々としてアニメイト秋葉原店に向かっていった。


広告なしで全文無料公開中! 続きは2026年7月文芸社書籍で加筆修正版を!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ