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サンドボックスウォーズ  作者: 黒瀬雷牙
第八章 スペシャルオーダーズの物語

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第五十話 巨星墜つ

 城門前の石畳が、赤く揺らめいた。

 そこに立つ影はひとり。


  鬼朱雀。


 琉韻loveを斬り伏せ、ここまで血路を切り開いた怪物。圧倒的な“殲滅力”を宿す炎が、静かに息をしていた。


 そこへ、二つの影が並ぶ。


【ジェイ】「……アンタも来たか、White」

【White】「もちろんだ。ここを抜けなきゃ、厄災には辿りつけねぇ」


 技巧派アタッカーと、最強格タンク。

 二人は黙って武器を構えた。


 鬼朱雀が、ゆっくり笑う。


【鬼朱雀】「二人で来たか。いいぜ、まとめて焼き払ってやるよ」


 空気が震えた。大地が裂け、真紅の魔炎が噴き上がる。


【鬼朱雀】「イラプト・インフェルノ!!」


 城前一帯を丸ごと飲み込む広域殲滅魔法。

 ジェイもWhiteも、避けられないと悟った瞬間――


 光の壁が落ちてきた。


【そる】「間に合ったぜ!ホーリー・バリア!!」


 清浄のドームが炎を押し返し、地獄の熱風を霧散させる。


【ジェイ】「助かった、そる!!」

【White】「恩に着る!」


 だが鬼朱雀は歯噛みした。


【鬼朱雀】「……ちっ。面倒な奴が来やがった」


 その背後、影が一つすっと立つ。


【ココア】「はい、後ろ失礼♡」


 鬼朱雀の眉が跳ね上がった。


【鬼朱雀】「読めてんだよッ、小娘がッ!」


 炎刃が半月を描き、周囲ごと薙ぎ払う。


【ココア】「嘘……!」


 光粒が砕け、ココアはその場で崩れ落ちる。


【システム】《ココア 撃破》


【そる】「ココア姐さん!!」

【ジェイ】「……くそっ!!」


 だが、その一瞬。

 鬼朱雀の視界が“後ろ”に向いた、そのほんの刹那。


 Whiteの足元の土が、静かに削れた。


 投擲姿勢。


【White】「悪いが。お前はここで終わりだ――」


 風を裂く音だけが響いた。


 ドンッ!!!


 鬼朱雀の胸が、突然、外へ押し出されたように揺れる。


【鬼朱雀】「なん……だ……?」


 自分の胸を見た瞬間、

 それがWhiteの大槍だと気付く。


 遠距離、しかもタンクが投擲?

 ありえない。そう判断した自分の油断を、鬼朱雀は悟った。


【鬼朱雀】「槍、投げたの、かよ……てめぇ……」

【White】「アンタみたいなやつは……正面から受け止めるより、これが一番確実なんでな」


 鬼朱雀がぐらりと揺れる。

 その瞬間。


 モニターに、血のような赤文字が連続して走った。


【システム】《ガラハッド 撃破》

【システム】《ガウェイン 撃破》

【システム】《レオネル 撃破》


 最高位の三騎士が同時に落ちたという通知。

 鬼朱雀は、膝をつき、乾いた笑みを漏らした。


【鬼朱雀】「……へへ、間に合った……みてぇだな……時間稼げりゃ、それでよかった……悔いは、ねぇ」


 そして静かに、光となって崩れ落ちた。


【システム】《鬼朱雀 撃破》


 城門前に、風だけが吹き抜けた。


【ジェイ】「……行こう」

【そる】「Whiteさん、まだ戦えますか?」

【White】「当然だ。槍は投げたが、俺にはまだこの()()がある」


 スペシャルオーダーズ――

 厚すぎる壁を超えた生存者たちが、ついに厄災・カノンのいる城内へと踏み込んだ。



 その頃ーー

 石畳を焦がすマグマフィールドの熱気が、夜の城門前に揺らぐ。


 黒王は、深く息を吐いた。

 すなっち戦の負傷は、すでに限界を越えている。それでも剣を構える姿は、なお圧倒的だった。


【黒王】「……来い。“スペシャルオーダーズ”の残火ども」


 最初に飛び込んだのはトリスタン。

 続いてベディヴィアが隙を補う。だが黒王の太刀筋はまるで暴風。

 二人の盾ごとねじ伏せるように、黒王の二連撃が火花を散らし、トリスタンが沈み、ベディヴィアも膝をつく。


【システム】《トリスタン 撃破》


【ベディヴィア】「すまん、ここまでだ……!」


【システム】《ベディヴィア 撃破》


 二人が戦線から消える。


 残るはシャインとスカイ。


 シャインは歯を噛み締めた。


(おじサムライの“仇”!)


 黒王は血が滴る腕で剣を下段に構える。呼吸は乱れ、立つだけで限界のはずなのに、目の光だけはまるで折れていない。


【黒王】「どれだけ来ようが、俺は退かん」


 シャインが剣を構え、スカイが詠唱を重ねる。

 シャインのディレイが黒王の足を止め、そこへスカイのマグマフィールドが重なる。

 足元を溶かすような持続ダメージ。さすがの黒王も膝が揺れた。


【黒王】「……ククッ、上手い。詰ませにきたか」


 剣を握る黒王の手が、ついに震える。


 そして、ゆっくりと、武器を鞘へ戻した。


【黒王】「……俺の負けだ。もう抵抗はせん。見事だ」


 シャインが警戒を解かず叫ぶ。


【シャイン】「話すことなんてない! あんたは——!」


 だが、スカイが制するように前に出る。


【スカイ】「……聞こう。あなたの言葉を」


 黒王はスカイに視線だけ向け、静かに言った。


【黒王】「お前……“オニッシュ”の友達なんだろう?」

【スカイ】「……はい、この世界で最初に出会った、大切な友達です」

【黒王】「奴はな、無理矢理……配信をさせられている可能性がある。妙に不自然だった。言葉も、タイミングも、意図も。なにより、“誰かの指示を待ってる”みたいな間があった」


 スカイの手が震えた。


【スカイ】「そんな……オニッシュが?」


 黒王はゆっくりと笑った。


【黒王】「俺にも相棒がいる。カノンだ。アイツがいなけりゃ、今日ここにもいねぇし、レイドも、ランク戦も、全部やれなかった」


 シャインがぼそりと呟く。


【シャイン】「まさか、カノンってアンタの彼女……?」

【黒王】「バカ言え。アイツは男だ」


 黒王は鼻で笑い、そのまま石畳に崩れ落ちた。


【システム】《黒王 撃破》


 マグマの熱だけが、静かに残った。

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