屋台
夜風の吹く土の道。
帰路にあるクリカラの営む屋台で静かに軽食を取る。
最近は彼女の作る料理を口にするのが、仕事帰りのささやかな楽しみになってきている。
肉野菜料理と肉のスープと緑茶を注文。
先に出された茶に口をつける。
「最近顔色が優れないようですが、いかがされましたか?」
注文した汁物をお椀に入れながら、クリカラがそう呟く。
「ここのところ色々とありまして、忙しくなっているんです…」
「もしかして、上級モンスターでも現れましたか?」
彼女の言葉に、緑茶を持つ手がぴたりと止まる。
「そうですか、大変なことになりましたね。
詳しくお聞かせ願えますか?」
厚切りの肉の入ったスープを置きながら、話の詳細を伺う。
「実は、ミギナ山地にアララガルが現れまして…」
「アララガルですか、確かに脅威的ですね。
私もかなり昔に遭遇したことがあったのですが、逃げ回るのがやっとでした」
「そうだったんですか?」
遭遇したという彼女の話に、興味を持つ。
「あれは、確か300年前くらいですね」
「……」
スケールの大きすぎる言葉がいきなり出てきたことに反応に困る。
アイリーンでさえ200歳と少しなのだが…
「ここから南方にあるレイネス霊峰で遭遇したことを覚えています」
「レイネス霊峰…ガイドマップによると、古代人の遺跡があると記されていますね」
ギルドに置かれていた国内のガイドマップを開きながら、レイネス霊峰に視点を置く。
南方にある寒冷帯にそびえる山岳地帯。
永久凍土に包まれており、氷漬けになった古代の生物が時折発掘される他、国家の研究機関が調査中の遺跡が点在している。
「あの遺跡は竜人族の儀式の場でありました。
一年の吉凶を占う儀式の場にて、かの竜は現れました」
「それで…どうなったんですか?」
「必死になって逃げ回ったくらいしか、よく覚えていません。
ただ、あれ以降あの一帯は禁足地として立ち入りが禁止され、長い年月を経るにつれて忘れられていきました」
「そうでしたか」
茶を飲み干して一息つく。
ハンターとしての職業がこの大陸に根付いたのは200年程前。
彼女の語った当時では為す術がなかったのは考えるまでもない。
昔の竜人達が遺跡一帯を禁足地にしたのは、アララガルにまつわる出来事を忘れてしまいたいからだろう。
「.....」
討伐作戦のことを彼女に言おうか迷う。
彼女は優秀なハンターだ。
それは数々の指名依頼が来ていることからわかる。
しかし、それでも上級モンスターとの戦いとなれば無事ではすまないかもしれない。
「何か言いたいことがあるようですね」
こちらの心情を見透かすクリカラの言葉。
「実は、アララガルの討伐作戦が行われることになりまして…」
彼女に対して、作戦の詳細を伝えた。




