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元海軍少尉の受付嬢  作者: 影光
二章 狩場へ
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ミギナ山地へ

 荷台に支給品とハンターの装備を乗せた軽トラックに乗りながら、ミギナ山地へ続く道を進む。

 前方にはカレンが運転する、ハンターのサクラを乗せた六人乗りの車両が黒い排気ガスをマフラーから出しながら走行している。


「狩場に行くのは初めてか?」

 運転手であるロイがハンドルを握りながら話しかけてくる。

「初めてですね。

 陸上での戦闘経験は陸戦訓練で何度かあります」

「陸戦訓練?海軍も陸で戦うことがあるのか?」

「上陸したときに備えて陸戦隊としても動けるように訓練していました」

「モンスターと戦ったのか?」

「いえ、モンスターとは交戦しませんでした」

「そうなのか…

 軍のことはよくわからんからな」

 前を見ながら、雑談を続けるロイ。

 悪路に入ったのか、時折トラックがガタガタと音を立てて揺れる。

「ところで、前の車のハンターはどんな依頼を受けたんだ?」

「ランドファングの狩猟依頼ですね」

 依頼内容が書かれた紙を確認して問いに答える。


『毒猪狩猟依頼 下級相当

 目的地 ミギナ山地 下流エリア

 目的 ランドファング1頭の狩猟

 報酬 1000レバン

 受注者サクラ・ヨガミ

 ベースキャンプエリア 大滝前』


「そっか、ランドファングとその子分は甘く見てると痛い目にあうから気をつけた方がいい。

 目の前のモンスターに夢中になっていた所を横から突進で不意打ちされたりするからな。

 しかも傷口から毒を貰ったりもするんだ。

 牙のところに毒が蓄えられてあってな、かすっただけでも中毒になるからハンターにとっても厄介者だ。

 しかも肉も毒で食えたものじゃないと来た」

「ろくなモンスターじゃないですね...」

「全くだ。はっきり言って牙と体毛以外に価値がない」

 雑談を交えながら進むことしばらく、大きなフェンスと監視塔が見えてくる。

 陸軍によって管理された15メートルはある高さの防護フェンス。

 監視塔には大口径の重機関銃が内部に向けて取り付けられており、警備する兵士はモンスターとの戦闘用に対戦車ライフルを装備している。


「身分証を拝見します」

 ゲート前に着くと、下士官の徽章をつけた男が身分証の提出を求める。

 髭のない、端正な顔立ちだ。

「どうぞ」

 ロイと私の身分証を提出、確認を終えると返される。

「通れ」

「失礼します」

 下士官に敬礼すると、エンジン音を立ててゲートを通過。

 トラックを専用の駐車場に止めた後、荷台に載せてある支給品をオフロード用の軍用車両に積み替える。

 一方でサクラは陸軍の更衣室に装備を持ち込んで着替える。

 とてつもない重量のある防具や得物を身一つで軽々と運ぶハンターの膂力。

 興味本位で彼女の許可の下で太刀を持ち上げようとしたことがあったが、その重量は凄まじく、軍事訓練を受けた私の力でさえ持ち上がらなかった。

 ギルドに置いてあった支給品の剣なら両手を使うことで何とか持ち上げられるが、ハンターはそれを片手剣として軽々と扱う。

 しかもハンター資格を得たばかりの年下の新人が、だ。

 正直な話、どっちがモンスターなのか分からない。

 

「お待たせしました」

 10分ほどして更衣室からハンター装備に着替えたサクラが現れる。

 『白狐(びゃっこ)』と銘の刻まれた太刀を背負った袴姿の彼女。

 アイリーンから借りた外国を舞台とした歴史小説、『倭国戦記』に書かれた戦巫女を彷彿させる格好だ。

「それでは行きましょう」

 武装したサクラと一緒に陸軍の兵士が運転する兵員輸送用のトラックに乗り、支給品を搭載したもう一台の大型軍用トラックと共にベースキャンプへと向かう。

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