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救世の召喚者  作者: 五月 和月
51/51

51 決着~エピローグ~

こちらが五話目です!これで最後になります。


 ペンダントを外したら、髪の毛が金色に変わって逆立ち、全身から青白いオーラが立ち昇る・・・なんて事は一切なく。


 全身に力が漲り、それを解放しなければどうにかなりそう、とか、頭の中で変な声が聞こえる、とか・・・そんな事も勿論なく。


 ただ、さっき死にかけてた割には元気と言うか、身体が軽いかな?くらいの感じだ。プラシーボ効果みたいなものかも知れないが。


 何が言いたいかと言うと、黒竜には人族の百倍以上の力があると言われたものの、まるで実感がないって事。


 でも、それが本当だったら・・・召喚される度に増す力は、当然最初から持っている力をベースにしている。本来の力を今まで「一」に抑えられてたとして、それが突然「百」になったら?


 そんな事を考えながらシールドから一歩踏み出す。それと同時にタクマが迫り、上段から大剣を振り降ろして来る。


 だが、何だろう?わざとゆっくり動いてるのか?こんなの躱せない奴は居ないよな?


 俺は右足を半歩引いて半身になり、タクマの剣が自分の右側を通過するのをじっくり観察していた。なんなら奴の剣の刃こぼれを数えながら。


 切っ先が地面に当たる直前、今度は下から俺の方に向かって斬り上げて来る。


 今度はタクマの方に一歩踏み込んでみる。いやこれ、隙だらけだけど・・・殴って良いのかな?何かの罠?


 俺が罠を警戒していると、タクマが後ろに飛び退いた。


「き、貴様ぁ!いったい何をした!?」


「え?避けただけだけど?」


 普通に答えただけなのに、タクマの怒りゲージが更に上昇したようで、顔を真っ赤にしてわなわなと震えている。なんて答えりゃ良いんだよ?


 次の瞬間、タクマがフレアを地面に向かって放つ所が見えた。


「黒点」


 俺はフレアが放たれる場所に、先回りで黒点を放つ。タクマのフレアが全て黒点に吸収されたので、即座に解除した。


 目くらましのフレアも不発に終わり、タクマは鬼の形相でこちらに突進して来る。


 さっきまで目で追えない速度だったのに、今は普通より少し速く走ってる程度に見える。俺はタイミングを合わせて、右脚で中段蹴りを放った。


 ・・・と思ったのに!蹴りを繰り出すのが早過ぎたのか、空振りしてしまった!カッコ悪い・・・


 身体が回転してるので、軸足の左脚で軽くジャンプして、そのまま後ろ回し蹴りを放つ。


 これがタクマの胸にヒットした!そんなに強く蹴ったつもりはなかったのに、タクマは西棟の瓦礫まで五十メートルくらい吹っ飛んだ。


 この数十秒で分かった。


 あのペンダントを外した事で、俺の能力が飛躍的に上がっている。二十七回目の召喚者の力を軽く凌駕するくらいに。


 そして、俺自身がこの力を使いこなせていない。頭が身体能力に追い付いていないのだ。


 瓦礫の中からタクマが立ち上がった。俺の蹴りは瞬間的にシールドを張って威力を軽減したらしい。


 俺はケイオス・ブレイカーを構えた。タクマが瓦礫から飛び出し、大剣を横薙ぎに払ってくる。


 太腿を狙った横薙ぎを受けると、特大の火花が散る。タクマが縦横無尽に大剣を振るって来る。俺はそれを片手で握ったケイオス・ブレイカーで捌く。


 タクマの攻撃の全てが見えていた。次第に剣で受けることもせず、わずかな体捌きで攻撃を躱せるようになった。


 これはルルから教えてもらったおかげだ。タクマの目線、筋肉の動き、爪先の向き、重心の傾きから、剣筋を予測できる。そして先回りして避ける事が出来た。


 タクマの斬撃で俺たちの周りの地面は抉れ、風圧で土埃が舞う。一発でも貰えば致命傷は必至。しかし当たる気がしない。


 俺は徐々に立ち位置を変え、タクマの後方に闘技場の観客席以外、建物が見えない場所まで移動していた。


「もういいか?」


 一声掛けると、タクマはたまらず後ろに飛び退った。その時にはもう、ケイオス・ブレイカーを左下から右上に斬り上げていた。


 五メートルほど離れていたタクマをケイオス・ブレイカーの斬撃が襲う。斬撃はタクマを通過して百メートル以上一直線に地面を細く抉り、観客席を斜め四十五度に切り裂き、闘技場の向こうの森を抜け、数キロ先の山の頂きを崩した。


 タクマは、右脇腹から左肩までを両断され、地面に倒れた。その身体を黒い炎が覆う。しばらくすると、亡骸だけがその場に残された。


 ふと顔を上げると、少し先にアンナが蹲っている。そしてその横にエスペンが・・・って、あれ?なんで死体が残ってるの?


 などと考えていると・・・


「ユウト様ぁぁあ!」


 ルルが背中に飛びついて来た!


「ユウト!」


 アスタが腰に飛びついて来た!


「ユウト!」


 ユナが・・・って、ユナ!?ユナが前から抱きついて来た!?


「ユウトさんっ!」


 カエラが!もう抱きつく所がなかった!俺は腕を伸ばしてカエラを抱きしめた。


「ルル、アスタ、ユナ、カエラ・・・心配かけてごめん。それと・・・ありがとう」


 アンナがゆっくりとこちらに歩いて来る。両目から涙を流しているが、それは安堵の涙だろう。


「ユウトさん、ありがとう」


「アンナも。ありがとうな」


 後ろを振り返ったが、黒竜はいつの間にか居なくなっていた。





 俺たちはガルムンド帝国皇城に来ていた。


 コンクエリア共和国の三人の召喚者を倒した事で、戦争は回避された。それは喜ばしい事なのだが、国王を失った共和国は大混乱に陥った。力で統合された七つの国が、それぞれの主権を主張し始めたのだ。


 帝国の諜報員が捕縛していた四人に協力してもらい、俺たちは元ロズリンド王国を始めとする七つの国の代表者を集め、協議を重ねた。


 正直、共和国がどうなろうと知ったこっちゃなかったのだが、こうなった責任は国王を倒した俺にもあるし、混乱のせいで罪のない人々が犠牲になるのは忍びない。


 召喚者たちを倒した直後、帝国のフリッカとレナード団長に顛末を報告し、魔族領のアルさんにも無事を伝えた後、混乱を収めるため一か月程共和国での滞在を余儀なくされた。


 と言っても、滞在は日中だけで、夜はアルさんの家に帰ってたけどね。


 結果的に、共和国を元の七つの国に分断するよりも、このまま共和国として存続させる方が良いとの結論に達し、コンクエリア共和国は「ロズリンド共和国」と名を改め、不満が出ないよう初代国王は元ロズリンド王国以外から選出される事になった。


 そして、すったもんだの挙句、初代国王にはなんとアンナ・リヒターが就任。故郷に帰る事を望んだアンナだったが、元々責任感が強い性格だったのか、三年間の「期間限定」で大役を受諾した。


 玉座に座ったアンナの顔が満更でもなかったのはここだけの秘密だ。


 と言う訳で、ようやく落ち着いたので改めてフリッカの所に挨拶に来たのだ。それと勿論、セルジュさんの墓参りに。


「ユウト様、それに皆さん。この度のご活躍、いくら感謝しても感謝しきれません」


 皇帝の私室で、フリッカが深々と頭を下げる。


「いやいや!俺たちが勝手にやった事だから!頭を上げて?ね?」


 俺の言葉に顔を上げたフリッカの顔には、悪戯っぽい笑みが浮かんでいた。


「ユウト様は、約束通り無事にお戻り下さいました。もちろんわたくしは信じていましたけど」


 まぁ、ちょっと死にかけたけどね。良く考えたら、あれってタクマに掴まって避けられなかったとは言え、半分カエラにやられたようなもんなんだよな・・・まさしく自爆。盛大なオウンゴール。


「ユウト様たちのおかげで、帝国は戦争を回避できました。無駄な血を流さずに済んだのです・・・」


 話がどこに向かってるのか分からない。


「ユウト様、それにルルさん、アスタ様、ユナさん、カエラさん・・・五人は、帝国の英雄です。帝国は、この事を未来永劫忘れないでしょう」


 俺はポカンと口を開けていた。横を見ると、四人とも口を開けて目が点になっていた。


「つきましては、中央広場に五人の銅像をつk―」


「ちょぉっと待った―っ!それはいらない!断固としていらないっ!」


「と言うのは冗談です!でも、どのように感謝を表せば良いか・・・」


「だから良いって!勝手にやったんだからっ!」


 銅像なんて以ての外。これ以上お金も要らないし。戦争を回避出来た事は、俺たちにとっても嬉しい。それで十分だと思うんだけど・・・


「だから、わたくしを貰ってください!」


 フリッカが真っ赤な顔をして叫んだ。ん?何だって?


「へ?」


「今なら、ルルさんの次の第二婦人ですよね?私を二番目の妻にして下さい」


「いやいや、皇帝のお仕事があるでしょ?」


「うふふ。それは問題ありません、ね?お父様?」


 フリッカの言葉に、「うむ」と言いつつ壮年の男性が現れた。


「ガルムンド帝国皇帝、エルドア・フレデリク・ガルムンドである」


「へ?皇帝?」


 帝国の皇帝って二人いたの?いや、フリッカが『お父様』って呼んでたな・・・


「ユウト殿。それにお仲間の皆さん。此度の活躍、帝国を代表して感謝する」


「え・・・えーと・・・?」


 事態を吞み込めない俺たちにフリッカが教えてくれた。フリッカの父であるエルドアは先代の皇帝であり、一度退位してフリッカに皇位を譲ったものの、フリッカの一か月に渡るお願いと説得により、再び即位したのだとか。


 って言うか先代の皇帝ってご存命だったのね。勝手にお亡くなりになったと思ってたよ。


「これはお爺様も了承済みなのですよ!」


 先々代もご存命なのか・・・って、あれ?


「フリッカのお爺さんって・・・」


「三十年前に、ユウト殿とお会いしてますわ!『バルディアス・ガルムンド』ですわよ!」


「ほぇ・・・」


 変な声が出た。そうか。あの時の皇帝陛下がまだ生きてたのか。


「ユウト殿。儂からも頼む。娘の事はお任せした」


 フリッカの隣に座ったエルドア陛下(?)からも念押しされてしまった。


「うーむ・・・結婚云々はさておき、フレデリカ王女はお守りします、俺で良いのであれば、ですけど」


 これは、所謂『政略結婚』みたいなものなのだ。帝国が俺を敵に回さないための。


 強力な召喚者は一人でも一国を滅ぼす力を持つ。今まではセルジュさんという大切な『友』が居たから、俺が帝国に敵対する恐れは限りなく低かった。


 セルジュさんを失った事で、帝国内部では俺が帝国に牙を向ける可能性について議論されたらしい。これまでの経緯からその可能性は低いと思われるが、絶対にないとは言い切れない。


 ならば、いっその事『取り込んで』しまえば良いのではないか。


 気持ちが全くない敵国に嫁がせるという話なら胸も痛むが、フレデリカ様はユウト様にご執心だ。まさに渡りに船。ここは帝国の安寧のため、ひと肌脱いで貰おう。


 帝国の思惑とフリッカの恋心ががっちりと噛み合い、先代の皇帝を引っ張り出す次第になったという訳である。


「はっはっは!ユウト殿、今はそれで十分である!フレデリカの事は別として、そなた達に褒美を取らせようと思うのだが・・・」


「その件ですが、陛下。俺の希望を伝えても良いですか?」


 こういう話になった時の事は、ルル達と事前に話し合っていた。


「うむ。申してみよ」


魔族領ベルーダを自治領として認めて頂けないでしょうか?」


「ふーむ・・・自治領か。そこをユウト殿が治めると?」


「それはまだ決めていませんが・・・人族と魔族の間で無益な争いが起きないようにしたいんです」


「なるほど。儂個人としては自治権を認めるのに何の問題もない。帝国としても前向きに図らうと約束しよう。しかし、魔族領ベルーダと隣接するパエルマ王国とリネル王国とも協議が必要だな」


「それについては理解しています。両国への働きかけに帝国がお力添えして下されば、それで十分です」


 これでようやく、魔族領の皆に少しは恩返し出来るだろうか。そうであれば良いな。





 俺とルル、アスタ、ユナ、カエラ、そしてフリッカも加わった六人で魔族領のアルさんの家に転移で戻った。


「うぅ~・・・」


 フリッカが絶賛転移酔い中である。ユナがすかさず治癒魔法を掛けてあげている。


「ふぅ。ありがとう、ユナさん」


「いいのよ、別に」


「フリッカよ。ユウトと一緒に居ると決めたなら、転移に慣れんといかんな!」


 アスタがフリッカの背中をバンバン叩いていた。


「ユウト様!ルル、それに皆さ・・・おや?またお一人増えたのですかな?」


 アルさんが目を丸くしながらフリッカに笑顔を向けていた。


「ああ、こちらはフリッカ。帝国の・・・まぁ、その、王女さんです。フリッカ、こちらはアルさん。ルルのお父さんだよ」


「まぁ、ルルさんのお父様!はじめまして、フリッカです。ユウト様の第二夫人になるべく付いて参りました」


「ほう、それはそれは・・・娘のルル共々、よろしくお願いします」


「アルさん、また一人増えてしまってすみません・・・部屋は足りますかね?」


「ユウト様!それなんですが、遂にお住まいが完成しましたよ!」


「えっ!?マジですか!」


 しばらくバタバタしてたので、家の事はすっかり忘れてた。と言う事で、アルさんの家から百メートル程の新居を皆で見に行く。


「おぉぅ・・・」


 それは、今まで魔族領で見たどんな建物よりも立派な石造りの家。小ぢんまりした家を頼んだ筈だったのに、学校の体育館くらいある二階建てのでかい家だった。


 中に入ってみると、玄関の先はちょっとしたホールのようになっており、右手には仕切りの壁がないキッチンとダイニング。左手にはリビングが見えている。ホールの奥には大人がいっぺんに二十人くらい入れる『大浴場』が設置されていた。


 一階には他にも何に使うのか分からない部屋が四つ。そしてホールに設えられた階段を登って二階に上がると、真ん中に幅広の廊下があり、その左右にずらりと扉が並んでいた。


 扉は左右に八つずつ。計十六の個室。そして廊下の突き当りに一際立派な両開きの扉があり、そこが俺の寝室らしい。


 これって家なの?もうホテルじゃん。


「ここからユウト様の世界征服が始まるのですな!」


「世界征服とかしませんからっ!」


 いつものノリのアルさんに速攻でツッコミを入れておいた。





 新居で食事し、風呂に入った後、新しいベッドにルルと横たわる。


「ルル・・・?」


「はい?」


「フリッカの事なんだけど・・・」


「ふふっ!ルルにも分かってます。帝国がユウト様を仲間にしたいのは」


「うん、そうだねぇ」


「でも、フリッカさんはとっても良い娘です。ユウト様の奥さんにも相応しいです」


「なっ!?」


「カエラさんも、ユナさんも。それにアスタ様も。綺麗で、強くって。こんな素敵な人たちに愛されてるユウト様が、ルルは誇らしいです」


「そ、そうか・・・」


「ルルは、こんなにユウト様から大事にされて・・・幸せだけど、皆さんに申し訳ない気がします。皆さんの事も、ルルは大好きだから」


「うん・・・」


「ユウト様が、その、嫌じゃなければ、そのうち・・・ルルと同じように、皆さんの事を愛してくれたら、ルルはもっと幸せです」


「そっか・・・」


 ユルムントに召喚されてまだ半年も経っていない。この短い間に、俺の人生を根底から覆すような事実を知り、たくさんの大切なものが出来、失い、愛すべきものと出会った。


 色んな事を諦め、同じ事を繰り返し、ただ生きてるだけの『おっさん』が、今では見た目も二十歳くらいに若返り、何故かとんでもない美少女たちに囲まれている。


 これから先、召喚者の力を揮う機会があるのか分からないが、もしそんな機会があれば、俺は自分の信念に基づき、俺が正しいと思う事にこの力を使おうと思っている。


 それが、俺が『生きたいように生きる』という事なのだ。


 ルルの首元で、俺がプレゼントしたペンダントが月明かりを反射してるのを見ながらそんな事を考えていた。そして、眠ってしまったルルに囁いた。


「ありがとう」


短い間でしたが、お読み下さり本当にありがとうございましたm(_ _)m


いくつかの伏線の回収が終わっていませんが、こちらのお話は一旦『完結』とさせて頂きます。

(もしかしたら、続きを書くかもしれません)


また新しいお話でお会いしましょう!

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