京葉線のリアルエンジェル・奈々VS内房線の美神・エミリーVS外房線の美姫・舞ちゃん
京葉線、内房線、外房線伝説の3大美女!
京葉線リアルエンジェル奈々、内房線の美神エミリー 、外房線美姫舞ちゃん!
「雅樹さんこそ知らなかったんですか? あの時間にあの車両に乗る人はみんな雅樹さんのこと知ってますよ?」
あきれた様な顔をして奈々が言う。
「え…? 俺何か変なことしたっけ…」
ものすごく不安になり聞き返す俺。
「雅樹さんあの車両のヒーロー? 的な?」
「ヒーロー?」
ヒーロー扱いされる覚えがない俺は拍子抜けしたように奈々の言葉を繰り返す。
「そうヒーロー」
「んな訳ないだろう? ヒーロってのは悪を懲らしめ正義のために戦うんだぞ? 俺は別にあの車両で戦ったことないぞ?」
「それは、男の人目線のヒーローでしょ? 雅樹さんはあの車両をいつもほんわかとした優しい空気にしてくれるヒーローなのよ」
「どう言う事?」
ヒーロー呼ばわりされるような武勇伝は思いつかない。
「小さなお子さん連れのママが来たり、ご高齢者が朝のラッシュの中戸惑ってたり、荷物が多くて大変そうな方を見かけるといっつもさりげなく席を立ったり譲ったり・・・。それから奈々以外にも具合の悪くなった女の子助けたこともありましたよね? 奈々やあの車両に乗っていた人はみんな見てました」
「ってそんなの当り前だろう? ヒーローってのはな、こう正義のために自己犠牲をいとわず世界のためにだな・・・」
俺は一生懸命自分のヒーロー観を奈々に伝える。
「小さな親切、ちょっとした声かけ、あの満員電車の中でそう言う事するのって当たり前の様で結構勇気がいると思います。誰でもできそうで、本当はなかなか出来ない。だからみんな知ってます。あの車両の空気を温かくするヒーローだって。奈々を助けてくれた日だってお年寄りに席を譲ったから雅樹さんは吊革につかまってたんでしょ?」
「まぁそう言われればそうなのかもしれないけど…。ちょっと俺の中のヒーロー観とは合致しないな。でもそんな風に思ってくれていたのならそれはうれしいな。そっか! 俺も小さなヒーローだったんだな」
気恥ずかしいがそんな風に言われるとうれしいものだ。
子供のころからずっと憧れ続けたヒーロー。
悪をやっつける戦うヒーローじゃなかったけど。
電車の中でのちょっとしたお助けマンにはなれていたようだ。
「雅樹さん? 今は奈々だけのヒーローだ・か・ら・そこのところ忘れないで下さいね?」
奈々が人差し指を小さく振りながら念を押すように言う。
「ところで奈々は電車の中でラブレターとかいっぱい渡されたんじゃないの?」
流し目で奈々を見ながら言う。
「ラブレターなんてもらったことありませんけど?」
ぽかんとした顔の奈々。
嘘をついている風ではなかったが、
「嘘だ~絶対っ嘘! あの路線、内房線、京葉線ラインで奈々は相当有名だったみたいだよ? 京葉線のリアルエンジェルとか、癒しの天使とか、奈々が乗ってる列車に乗り合わせた奴らはその列車をエンジェルトレインとか呼んでたみたいだ。ただ、奈々に関しては連中、名前までは把握できてなかったみたいだけどね」
「そんなの全然知らない。ところで奈々に関しては名前まで把握できなかったって?」
奈々が怪訝な顔で言う。
「あぁ、どう考えても奈々のことを形容して表現しているのがありありとわかるんだけど連中、名前はわからないみたいなことも囁いてたからね」
「ふ~ん…。奈々に関しては、ってことは奈々以外の人で名前が明らかになっている人がいたみたいに聞こえましたけど?」
ん? また何かお気に召さないようだ。
「雅樹さん? 名前が明らかになっている方についても…奈々にちゃ~んと教えて下さい?」
やや引きつった顔をする奈々。
「あ、いや別にそう言う事では…」
「いいえ、あの言葉の運びは何か他のエッセンスが内在されていることを暗示しています」
暗示って…
しかしこうなるともう奈々の暴走は止められない。
観念する俺。
「いやこれは別に俺が言ってたわけじゃないよ? あの車両に乗ってた男の子たちが言ってたことが聞こえてきただけだから誤解しないでほしいんだけど、奈々の他にも、内房線の美神・エミリーとか外房線の美姫・舞ちゃんとかあの路線の男の子たちはいつもひそひそ噂してたよ。奈々のことを浜辺美波ちゃんに似てるって騒いでる奴もいたな」
「え~奈々が浜辺美波ちゃんに似てる! うれしい~美波ちゃんってこの世の者とは思えないくらいすごく可愛いですもんね~。可愛いだけじゃなくて美しいと言うか、賢そうって言うかお嫁さんにしたいって言うか~」
珍しく奈々がはしゃいだ様に言うので載ってみる。
「だよね~美波ちゃんって本当に可愛いよね! なんて言うか見ていると切なくなるような可愛さっての?」
「ん? 雅樹さん? 奈々と美波ちゃんどっちが可愛いの? ん?」
ちょっと爪が見え隠れしたので大人しく撤退。
「もちろん奈々です…。でも二人とも双子みたいにそっくりだよ?」
「まぁ美波ちゃんのことは奈々も認める可愛さだから良いとして…内房線の美神? 外房線の美姫?
って?」
「ああ、だからそれぞれの路線の男どもが競い合ってるわけよ、どっちの路線の方が美人か? みたいな。つまり京葉線のリアルエンジェル・奈々VS内房線の美神・エミリーVS外房線の美姫・舞ちゃん! みたいな! もうほとんどゴジラ対モスラ対キングギドラか、ウルトラマン対ゴレンジャー対仮面ライダーみたいな感じでどの勢力も自分たちの押す子が一番って一歩も引かないわけさ! バカだろ男って」
「ふ~ん…。で? どっちの子の方が可愛いんですか?」
俺の力説には全く耳を貸さない。
奈々は奈々の知りたいことだけをピックアップする。
「う~ん内房線の美神・エミリーって呼ばれてた子は『強い美しさ』って感じだったな! 外房線の美姫・舞ちゃんは『清々しい美しさ』? 太平洋の海風を運ぶ! みたいな」
ん? って…しまったまんまと奈々に乗せられた。
「信じられない…雅樹さんその子たちのこと見に行ったんですか? へ・ん・た・い! 」
ものすごい目で睨みつけられている~。
「いやいやそんなわけないだろう? それこそ犯罪だって! 見に行くわけないじゃん!」
俺は身の潔白を訴える。
「じゃあなぜその子たちの容姿まで奈々にうれしそうに語れるんですか!」
「別にうれしそうに語ってないだろ? 聞かれたから答えただけだよ!」
「開き直って~」
ふたたび奈々の爪が…
そして牙まで生えてきた気が…
「誤解誤解! 俺はどの路線も乗り入れる蘇我駅で乗り換えてただろ? ってか奈々だってそうだろ? そうするとさ時々帰りの電車なんか接続が悪い時に蘇我で降りて喫茶店でコーヒー飲んで時間つぶしたりさ、ベンチで電車待ってたりするわけ! そういう時に『おっ! あれって内房線の美神・エミリーじゃね? ハーフだってよ! マジ可愛くね?』とか『あれが外房の美姫・舞ちゃんだよ!』みたいな会話が飛び交うわけよ男どもの間で。 というわけです」
「と、言うわけです?」
「と、言うわけです! はい」
「……」
無言のまま俺の顔に穴を開けるくらいの目力を照射する奈々。
「雅樹さんは本当は奈々を正常空間に戻したくないんですか?」
「そんなことないよ。なんで?」
「奈々はますます正常空間に帰るのが嫌になるばかりです」
「だからなんで?」
「じ・ぶ・ん・の・む・ね・に・聞いてみて下さい! 奈々はやきもち妬きって言ってるのに!」
「イヤイヤ、だから奈々? 当然奈々が一番かわいいし! 奈々が周囲をざわつかせるくらい美しくって、そんな奈々と一緒にいられることが自慢だよってことを奈々に伝えたくてこんな話をしたんだよ」
なぜそんなことをわざわざ奈々に伝える必要がある…。
苦し紛れに良くわからないことを言ってるな…俺。
この窮地を切り替えし奈々の爪と牙から逃れるためには…
「あ~早く正常空間に戻って奈々と一緒に美浜大橋に来たいな~。それで『どう? 俺の奈々? 信じられないくらい可愛いでしょ?』って見せびらかしたいなぁ…っと」
チラっと奈々を見る。
やや目つきも穏やかになり
鋭い爪と牙が引っ込んだようだ。
「じゃあ蘇我駅も一緒に行って、稲毛海岸駅から今日みたいに美浜大橋まで歩いて…」
「そうそう! 蘇我駅で見せびらかすんだ! 京葉線のリアルエンジェル・奈々は誰にも渡さないってね!」
「雅樹さん! 早くカフェリンダに行こう! 奈々はどこにいても雅樹さんを独り占めするし、奈々は雅樹さんだけのものだってみんなに早く教えるの!」
奈々が俺の手を引き走り出す。
サンキュー 内房線の美神・エミリーちゃん、外房線の美姫・舞ちゃん。
ふたりのおかげで京葉線、内房線、外房線伝説の3大美女がうち京葉線のリアルエンジェル・奈々が正常空間に戻る決意が出来ました。
俺は奈々から見えない角度でこっそり空に向けて投げキスをした。
もちろん三大美女のうち俺の手を引く美女の他のふたりに向けて。




