奈々だって天使にも悪魔にもなりますよ? 雅樹さん次第では・・・
そろそろカフェリンダに行って次の展開に入ろうかな。
奈々を腕の中に包む俺。
奈々の言う不埒な感情が湧いてこないのは、俺が年齢を重ねたせいなのか、それとも天使のように純粋な奈々の切なる願い事であった為なのか。
ふたりはカモメのモニュメントの前で互いの体に腕をまわしてたたずんでいる。
天使のような奈々である事に何の変わりもないが、その瞳の奥に心なしか小悪魔のような光が宿されている気がした。
「また願い事が叶っちゃった・・・。本当に神様は奈々のお願い良く聞いてくれるっ」
さっきまで唇を交わしていた俺に照れ隠しをするかのように奈々が言う。
「今の奈々の願い事は俺が叶えたんだろ?」
ちょっと偉そうに言ってみる。
「ふふっ、そうね。奈々の一番のお願いは雅樹さんが叶えてくれました。本当は雅樹さんが奈々の神様なんじゃないの?」
そう悪戯っぽく言うと俺の頬に両手を添えてくる。
「とんでもない事言うなって」
「ううん、奈々にとって雅樹さんは願い事を叶えてくれてそばにいてくれる神様みたいよ」
無邪気な顔で言う。
「それを言うんだったら、奈々は俺にとって勝利の女神だからやっぱり神様だな」
「奈々が女神様・・・」
そう呟きながらまんざらでもない顔をする。
「俺は神なんかじゃないが、神も仏も悪魔も修羅も内在しているのが人間なのかもな。そもそも神は自分の姿に似せて人間創ったって言うし」
「神や仏は聖なる領域、悪魔や修羅は悪の領域に特化しているから畏れ敬われまたは忌み嫌われる。人は神や仏にもまた悪の権化にもなり得る。つまり双方を内在した存在だな」
「奈々だって天使にも悪魔にもなりますよ? 雅樹さん次第では・・・」
奈々らしくない妖艶な目つきで俺を見上げる奈々。
「結構・・・荒ぶる神的なこと多いんですけど・・・。できれば小悪魔くらいでお願いしたいな・・・」
俺は恐る恐る言う。
「荒ぶる神って? 奈々はいつも雅樹さんの天使じゃないの?」
今度は打って変って幼子の様な目で見つめてくる。
「いやいや時々すごい勢いで怒るしさ~」
この際だからちょっと言ってみる。
「そ・れ・は~雅樹さんが疑わしい言動を取るからでしょ? 奈々をヤキモキさせないで安心させてくれればいいのに」
「ってそんな奈々が心配するような大それたことをする男じゃないから安心していいって」
「そうなのかしら?」
「そうだって」
「そんなこと言って奈々を油断させておいてこっそり不埒な事や心変わりを・・・」
また不埒か・・・。
「不埒って・・・。俺と奈々しかいないここでどんな不埒や心変わりがあるっての?」
「ん?」
そう一言いうと奈々は無言になる。
「奈々? 奈々どうしたの黙り込んで」
俺は奈々の顔を覗き込む。
「やっぱり奈々はここに居たら心穏やかなのになぁ・・・」
小声だが、しっかっりと俺の耳に届く様に呟く奈々。
「死神が命を狙いに来るここでどうして心穏やかなんかでいられるかっての」
しっかりと否定する。
「だってここに居たら雅樹さんは他の女の子によそ見もちょっかいも不埒な思いを馳せることもなくただただ奈々だけをみて生きてくれるでしょ?」
得意の泣き出す寸前の顔で心細そうに言う。
やはり天使から小悪魔寄りにシフトして来ているな? 奈々・・・。
「いや心配しなくても正常空間に行ったって俺は奈々以外の女の子に興味なんて持ったりしないって!」
出来るだけ真摯に伝える。
が、
「う・そ・ば・っ・か・り! 奈々は何でも知ってるんですからね! 雅樹さんはきっと正常空間に戻ったら奈々より魅力的な女の子によそ見するっ」
また姫のご乱心か・・・。
自分がどれだけ魅力的な女の子なのかわかっていないのかこの姫様は・・・。
「ってなに確信的に言っちゃってるの? 奈々、安心しな。正常空間に戻ったって奈々ほど美しくて可愛くて可憐でまるで天使の様に純真でそれでいて知的な女の子は俺の周りには絶~対にいない! これは保障するし仮にだ、仮にいたとしても俺には奈々しか見えない。それにだよ。どうして奈々が俺をそんなに想ってくれているのかだって俺には理解できないのに、奈々以上に魅力的な女の子に俺がどれだけ言い寄ったって相手にされるわけないだろ? そのくらいちょっと奈々の優秀な頭脳で考えれば導き出せるはずだ」
一気に捲し立てる。
「言葉数が多くなるところが怪しい・・・。奈々には男女のことはよくわかりませんが何が起こるかわからないのもまた男女の仲なのでは?」
軽くスルーされた上に妙に達観した見解・・・。
確かに、今現在の奈々と俺の関係がまさにそうなだけにぐうの音も出ない。
奈々には敵わないよ。
だが、奈々は根本的なことをわかっているくせにそれを伏せて無茶を言っている。
では最後に引導を渡そう。
「奈々? 難癖つけてそんなこと言ってもや・く・そ・く・は、約束だからな!」
奈々のお株を奪う様に強調して言う。
「・・・・雅樹さんの意地悪っ!」
やはりどんでん返し狙って最後の悪あがきだったか。
「正常空間には全てがある。天国も地獄も阿修羅界も畜生界も餓鬼界も仏も神も悪魔も修羅も全てある。天国も地獄も寂光土も決して死んだあとの話しじゃない。どう生きるかで世界は天国にもなり地獄にもなる。奈々、全てがそろった正常空間で俺は全てをかけて奈々を守り全ての愛を奈々に捧げるよ」
「雅樹さん・・・」
俺は奈々を抱き寄せもう一度愛を確かめ合った。
奈々の唇が熱く濡れた。




