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『神秘の青いノート』

奈々脱出への作戦会議!

「みんな! 青いノートの電子データをプリントアウトして来るから読み込んで検証しましょう! 奈々ちゃんが無事カフェリンダに帰って来られるように!」

奈々が異空間から帰って来られる可能性がフィフティーフィフティーと言われ黙っていられるリンダではなかった。

いそいそと店の奥に向かうリンダ。


「そう言えばさ京子ちゃんの体に書いてあるこの文字・・・どうしたの?」

椿姫が京子の手の平や腕に書かれた文字を見咎める。


「これね・・・たぶん京子が自分で書いたんだと思う・・・自分の字だし・・・でもこれのおかげでカフェリンダまで来ることが出来た。気がついたら自分では書いた覚えがない、それから聞いたこともない名前やカフェリンダの文字・・・それで、やっぱり身に覚えのないけど手に持っていた青いノートをペラペラめっくてたら最後のページに、他のところはボールペンで書いてあるんだけどそこだけ太いマジックで『カフェリンダに行って奈々のことを聞くこと』って・・・それからここの住所が書いてあったの。京子は体に書かれた文字とノートのおかげでたどり着けたのよ」

「この文字のおかげで、記憶がないのにカフェリンダに来れたんだ・・・京子ちゃんってやっぱり頭いい」

椿姫が感心したという風にそう言う。


「さぁ、みんな! これを読んで! こういう時はやっぱり紙媒体! 気になるところやおかしいなって思うところがあったらドンドン線を引いたり丸で囲んでね!」

慌ただしくやって来たリンダはそう言うと次々青いノートのコピーを渡す。

一刻の時も惜しいという気持ちがありありと表れていた。


「でも椿姫に何かわかるかな・・・不安だよ」

椿姫がさも不安そうな顔をして言う。

「そんなことはない・・・椿姫ちゃんの感性は・・・とても素晴らしい・・・セラ君は・・・椿姫ちゃんのそんなところに・・・魅かれているのではないか?」

「えっ! お兄ちゃんが椿姫の感性に魅かれてる!・・・。本当っ! 椿姫、頑張って読む! 奈々ちゃんが無事帰って来られるように!」

そう言うと食い入るようにコピーに目を通し始める椿姫。

椿姫の性格と行動体系を良く知る常連ならではの一言であった。

そんな椿姫を愛おしそうに見る面々もまた何かを見つけ出そうと無心に文字を拾い始める。

しばし静寂が広がりその静けさはセラをも包み込んだ。


「『青いノート』・・・終戦まもない・・・荒寥とした時代を生きていく少女たちの友情を綴った・・・そんな著書があったわね・・・。この青いノートは異空間での京子ちゃんと奈々ちゃんの友情を綴ったノートね・・・」

静寂を破ったのはドキンちゃんであった。


「私にとっては奪われた記憶を・・・奈々ちゃんとのかけがえのない思い出を取り戻してくれる宝物・・・奈々ちゃんと私を再び繋いでくれる大切なノートです」

京子はたまらずそう言った。

青いノートには奈々と京子の異空間での愛おしい日々が溢れんばかりに書き綴られていた。


「京子ちゃん? 椿姫ひらめいたんだけどさ! このノートに京子ちゃんが異空間からどうやって脱出したのかを書いてここに置いておけば、奈々ちゃんはそれを読んで異空間から同じように脱出できるんじゃないかな?」

椿姫が探り探り言うが、


「椿姫・・・京子はどうやって異空間から抜け出してきたのかを覚えてないんだ・・・。だからこのノートにそれは書けない・・・。奈々ちゃんの役に立てないんだ・・・」

無念さをにじませて京子が言う。

そんな京子の様子を見て椿姫もまたしょんぼりする。


「そんなことはない・・・カフェリンダに異空間から戻ってきたこの『神秘の青いノート』があれば・・・奈々ちゃんは京子ちゃんが異空間から無事帰って来たことを知る・・・。そして記憶が無くなったにもかかわらず京子ちゃんがカフェリンダに辿り着いたことも・・・」


「そうよ! それがわかれば奈々ちゃんならそこから様々な仮説を立てて脱出方法を見つけ出すわ! そして京子ちゃんが記憶を失くした状態でどうやってカフェリンダに辿り着いたのか、きっと考えるはずだわ!」

リンダが弾けるように言う。


「でも・・・」

一転リンダが暗い顔になる。

「でも? どうしたのリンダちゃん?」

そんなリンダを見て椿姫が心配げに言う。


「奈々ちゃんにそれを発想できるかが心配・・・」

「へ? 奈々ちゃん頭良いから絶対わかるって! 確かに奈々ちゃんはおっとりしていて鈍臭くて、世間ズレしてるけどさ、超がつくほどの天才なんだから! 椿姫だってさっき京子ちゃんからお話し聞いてわかったよ。奈々ちゃんならすぐ思いつくって!」


「奈々ちゃんが超がつくほどの天才だからこそ心配なの・・・それがかえって仇になることもあるから」

「リンダちゃんそれってどういう事?」


「誤解しないで聞いてね、京子ちゃんや椿姫ちゃんがそうだっていうわけじゃなくて例えば自信がないテストの前に、手の平に漢字や英単語や数式を書いちゃおうって思う事って誰でもあるじゃない?」

そう椿姫を見ながら言うリンダ・

「椿姫はそんなことしないよ! それってカンニングじゃん! そんなのお兄ちゃんが一番嫌いな事! だから椿姫は絶対にしないんだから!」

むきになって反論する椿姫。


「だから誤解しないでって最初に言ったでしょ? カンニングペーパーを作ったり手の平に情報を書こうかなって考えることは誰でもあるものよ。結局カンニングはしなくてもね」

「それは椿姫だって考えもしないとは言わないけどさ・・・」

バツが悪そうに言う椿姫。


「でもね、奈々ちゃんはあの性格だから・・・これまでの人生でカンニングしようとか考えもしなかったろうし、その必要がないからね。だからこういう方法も知らないと思うのよ・・・」

「ん~だから?・・・ん? あっ! そう言う事か!」

「そう! わかってくれた? 椿姫ちゃん」

リンダが椿姫に言う。


「京子ちゃんがカンニングするって言ってるわけじゃないのよ。でも京子ちゃんは異空間を脱出する寸前に発想できたのよ! だから体にカフェリンダや奈々ちゃんの名前を書いて、同じように青いノートにもカフェリンダの住所や『カフェリンダに行って奈々のことを聞くこと』ってメッセージを残して自動的にここに誘導されるように仕掛けを作ったのね」


「椿姫、京子ちゃんってすごいと思う・・・」


「京子ちゃんは記憶にない体に書かれた文字が、にもかかわらず自分の字であったりすることや、やっぱり記憶にない手に持っていた青いノートを読んでその異常事態から目を背けることなく考えた。京子ちゃんはやっぱり素晴らしい理系の女の子だわ! きっと京子ちゃんは疑問をそのままにしない自分の行動体系にも自信があったのね」


「そんな、リンダさんそんな褒められるようなことじゃなくてとっさに思いついたんだと思いますよ」

「とっさにそれを思いついて、さらに行動に移せるところが京子ちゃんの素晴らしいところよ」


「そう言われると椿姫も、奈々ちゃんには思いつかないような気がしてきた・・・」

不安そうに言う椿姫。


「誰か他に・・・奈々ちゃんのそばにいてくれる人がいると良いのだが・・・」

ドキンちゃんがぼそりと言う。


カフェリンダに奈々への愛情が溢れる。





 





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