だったら奈々はここにいてずーっと雅樹さんと一緒にいますから!
久しぶりに奈々と雅樹の絡み!
もうちょっと引っ張るかな・・・
奈々と雅樹のこれからをゆっくり考えよう・・・。
「奈々はそんなの絶対に嫌っ!」
激しい口調でそう俺に言い放つ。
異空間から元の空間に帰った時俺たちは記憶を失くし、その結果離れ離れになる事を示唆した事に奈々が反駁する。
「嫌だって言っても今までの話を総括すればそう言う結論になるだろう?」
なだめるように極めて穏やかにそう伝える。
「雅樹さんはそれで平気なんですか? 元の空間に帰ったら私達は異空間での記憶を全く無くしてしまうんですよ?」
「だからってそれを理由にこのままここにいるわけにもいかないだろう?」
「奈々は帰りません! 帰るなら雅樹さんお一人でど・う・ぞ!」
と、さも当然のことという顔をする。
「そんな事出来るわけないだろう! 奈々をこんな訳の分からない場所に一人で置いて行けないよ」
「本当に…?」
何やら企んでいる目つきで俺の顔を見上げる奈々。
「本当に…って?」
その企みをある程度把握しながら敢えてそのまま返す。
「奈々を一人に出来ないのなら雅樹さんもここに一緒に残ってくれるって事でしょ? 奈々うれしい!」
本気でそんな事を言っているとは思えなかったが奈々の顔は極めて本気だった。
「奈々? そんな無茶言って困らせるなよ。今まで一緒にこの異空間から脱出する方法を考えてきたんじゃないか!」
俺は祈るように奈々にそう話す。
「奈々は、脱出の方法なんて考えていませーん。ずーっと雅樹さんと二人で、大いなる存在のこととか、言葉の力とか天国と地獄がある確率とか意思の力とか。雅樹さんが地獄に落ちないこととかを考えてました〜」
「おいおい、それは異空間から脱出するための方法考える過程での話だろ? 奈々? 変なこと言ってるぞ?」
俺は思ったままを奈々に言うが、奈々は耳を貸そうとしない。
「そうでしたっけ? 奈々はどれも個別の案件として大切な課題だと思ってお話ししてましたけど? それにここにいた方が雅樹さんが地獄に落ちないから奈々は良いと思います。だって雅樹さんも言ってたでしょ? 奈々はどうしたって地獄には落ちれないって! だったら奈々はここにいてずーっと雅樹さんと一緒にいますから!」
と、とぼけたようにまた、極あたり前のことの様に言う。
奈々が無茶苦茶直情モードに入ってしまった。
こうなると元の知性が高い分かなり手強くタチが悪い。
普通なら、ふざけんなって議論を終わらせてしまうところだがこればっかりはそれもできないし相手は奈々だ。
流石にそんな風にバッサリ切れない。
俺はどう切り返せば良いかわからず言葉を失いそして必死に探す。
「さっ雅樹さんもうそんなことはどうでも良いですから朝ごはん食べちゃいましょう」
奈々は途中だった朝食に再び手を付け始める。
仕方なく俺もテーブルにつき朝食を食べる。
「雅樹さん? 美味しいですか?」
なぜか上機嫌で奈々が言う。
「ああ、美味しいよ奈々・・・」
俺はオウムのようにだだ同じ言葉を返す。
「どうしたんですかそんな顔して?」
「いや、だって奈々・・・」
俺が言いかけると奈々が遮る。
「今は。今だけはそんなお話しないで・・・」
さっきまでの上機嫌が嘘のように真顔になる。
「もう少しだけ・・・もう少しだけ心の準備がしたいんです・・・」
「奈々・・・」
「奈々だってわかってます・・・このままいけばいずれ死神から逃げることはおろか、逃げる必然性までわからなくなってしまう・・・その前に決着をつけなければいけないってこと・・・だけど・・・だけどもう少しだけ・・・ほんの少しだけでもいいから奈々はこのままでいたい・・・このまま時間が止まってくれれば奈々はそれが一番しあわせ・・・」
消え入るような声。
それでいて心の奥底から湧き上がるような言葉たち・・・。
その言葉の一つ一つを愛おしく思っている自分に今更の様に気が付く。
俺自身も奈々から離れることなど考えられなくなっていたのだ。




