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ダメです! ソファーではセ・マ・ス・ギ! ですから!

長い一日が終わりやっと体を休める雅樹と奈々。

目覚めるその時までゆっくりとゆっくりと・・・・

なんだかよくわからないがウキウキしている奈々。

この子はきっととんでもなく知性が高い反面、それが故に『自分が理解していることは当然、先天的アプリオリに他者も理解している』と言う価値観で話しを進める。


だから時々会話にズレが生じていることを感じる。


勿論カフェリンダに集まるような頭脳集団の中では、奈々の感覚で間違いなく認識がなされるのであろうが、俺はただの平凡なおっさんだから時々奈々の論理ロジックが理解できずに戸惑うよ・・・。


でもまぁ奈々をウキウキと嬉しそうさせる結論が出たのなら、理解には苦しむが俺も甘んじて受け入れよう。

こんな若い女の子に俺がしてやれることなんて、理解し、受け入れることくらいだろう。


そう、若い力は未来を変える。


俺達、大人はそれを支持してあげることが最大の手助けなんじゃないかな。


簡素だがセンスと機能性に優れたソファーに座り、夜景を眺めながら物思いに耽る。


だからこそ、このまれにみる知能と才能を持った女の子を、この異空間にとどまらせておくわけにいかない。

なんとしても元の世界に連れ戻し、この異空間について、その存在、必然性を明らかにしてもらわなければ。

きっとそこから、『大いなる意志』が我々人間に求めている方向性、つまり『人はなぜ生きるのか』といった根本的な問題についてある一定の回答が導き出せるのではないか、と直感するからだ。


「雅樹さんっ! 奈々はちょっとまだやることがあるので先に休んでいてください。ベッドルームにご案内しますね」

「いや、奈々俺はこのソファーで十分だから気にしないで」

「だめです! ソファーでは狭すぎですし、体が休まりません!」

「大丈夫だって、このソファーすごく居心地もよいし」


本当にこのまま眠ってしまいそうなくらい居心地の良いソファーだ。


「ダメです! ソファーではセ・マ・ス・ギ! ですから!」

ことさら狭すぎを強調する奈々。


「だってそしたら奈々はどこで眠るんだよ?」

「奈々も眠れるベッドがありますから気にしないでベッドルームで休んでください!」

すごいなベッドルームが2つもあるとは流石高級マンション。


「そう言う事なら、ベッドで休ませてもらうよ。ありがとう奈々」

俺は奈々に導かれるまま、これまた眠り心地の様さそうなベッドに誘われる。

キングサイズ? 大きくてフワッフワだな。


「ここで休んでくださいね」

「なんか・・・あまりに大きすぎて落ち着かないな・・・眠れるかな?」


「とても眠り心地が良いからすぐに眠れますよ!」

「ありがとう、じゃあ先に休むよ。奈々はまだ寝ないの?」

「奈々もたぶんすぐに寝ます。ちょっとだけ用事を済ませたら・・・」

「そうかじゃあ、おやすみ奈々」

「おやすみなさい、雅樹さん・・・」


奈々も若い女の子だ、色々する事があるのだろう。

お姉さんのマンションだし日頃から行き来していたみたいだからスキンケア?的な?

スマートだって自覚していたから風呂上りのストレッチとか、最近じゃヨガなんて言うのも若い女性に人気があるみたいだしね。

まぁ俺にはあんまりわからないけどね、若いって言うか女性全般的に・・・。


漆黒の津波も今日来たばかりだから、寝ている間にまた! ってこともないからまずは安心して眠れる。

異空間に二人っきりって言うのも逆に言えば二人しかいないわけだから泥棒や強盗に合うこともないしね。

そんなことをツラツラ考えているうちにどれほどの時間が経ったのだろうか微睡が訪れる・・・。

いい感じでアルコールも入ってるし、緊張感のある会話で精神的にもやや疲労、もちろん肉体的には超疲労状態だし・・・・。


眠りが俺を包みだしたその時、べッドルームの扉が少しだけ開いたのにかろうじで気が付く・・・・。

薄暗闇の中そうっと何かが近づいて来る気配を感じながらも俺は眠りに抗えない。


意識が遠のく寸前に、自分の左腕に柔らかな感触といつかどこかで嗅いだことのある匂いを感じながら、ついに眠りに落ちる俺・・・・。


「おやすみ奈々・・・」

そう言葉にできたのかどうか確認する間もなく、俺は得も言われぬ安心感の中で深い眠りについた。


「おやすみなさい・・・雅樹さん」







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