side-story 買い出し
「おまたせ。待った?」
「うん、十分ぐらい。」
別に付き合っているわけではないので、素直に答えると、
「え!?いやそこは『いま来たところ』って言うじゃん!?」
「いやいや、そういう関係じゃないだろ。」
「もう...そんなんだから、奏の気持ちにも気付けないんじゃん。」
「? さっさと行こうぜ。」
「うん...やれやれ。」
返事を聞いて、とっとと歩き出す。
それにしても、奏以外の女子と出かけるの久しぶりかもな。
「ところでさ、どの店行くつもり?」
「え?それを遼太が決めてくれるんじゃないの?」
そんなこと考えていなかったから、驚いて、思わず
「あ、そうなの?」
と声に出てしまった。
「で?なにがいいと思う?やっぱペアキーホルダーとかかな?」
「んん...この前と同じようなものは避けたほうがいい。スポーツ用品のほうがいいんじゃないか?」
「えーでも揃ってるでしょ」
「まあ、意外と変えたくなるもんだろ」
「そうなの?」
「それに、毎日使ってくれるってことだぞ」
「ま、毎日...!?...いいかも」
なにを妄想していたんだか。
「あ、あの店行こ!」
急に走り出した笹野を、なぜか走って追いかける羽目になった。
「――待てってば!」
遼太くんがあんまり見てくるから、恥ずかしくって、つい走ってしまった。
成り行きで入った『DASH!』という店は意外にも品揃えが豊富だった。
「ほー思ってたよりあるな。」
遼太くんも、この反応。私が知る限り、ここ周辺で一番大きい店だ。
えーっと、たしか結斗くんは緑が好きだから...。
「これとかいいんじゃねえの」
まさに私が今見ていた商品を手にとって渡してきた。
ああ、落ち着け私。遼太くんは手伝ってくれてるだけだから!
でもやっぱり、二人きりで買い物なんて...緊張する。
奏ちゃんは私の気持ちにも、気づいてるんだろうな。
「笹野?」
やばっ。考えすぎた。
「あ、ごめん。いいと思う。」
とっさに出た声は思っていたよりもテンションが低くて、ばれてしまわないかドキドキしたけど、
「そっか、よかった。」
と言って店内をまた見回した。
思わず反対側に視線を向けると、サッカーボールがデフォルメされた緑のスポーツタオルがあるのを見つけた。手にとって、生地の感じをたしかめたけど、結構いい感じかも。これにしようかな。
「ねえ、遼太くん...」
言い終わる前に、視線がひとつのコーナーに止まる。
”置物コーナー”
こんなのも売ってるんだ。さっきの声は聞こえてなかったみたいだし、少し見ていこうかな。
そうだ、せっかくだし、なにか遼太くんにあげようかな...。
花とか、動物とか、色々あったけど、半透明の鯉の置物を選び、レジに向かった。
この鯉に、私の小さな恋をかける。
鈍感な彼はきっと気づかないだろうけど、それでいい。
会計を済ませて、遼太くんのところに戻ると、
「あ、終わった?」
「うん、わざわざ来てくれてありがとうね。」
「まあ暇だったし」
と言うと、スタスタと行ってしまうから、慌てて追いかける。
「じゃ、俺こっちだから。」
まだ一緒にいたい。置物も渡せていない。
そう思い、今日は遠回りすることにした。
少しくらいなら、お母さんも許してくれるはずだ。
「私もこっち。」
「こっち方面だっけ」
「向こうから行っても大して変わらないし」
「そっか」
彼が歩調を緩めてくれたので、さりげなく隣に並ぶ。
さすがにそろそろ曲がった方がいいかな、と考えていたとき、
「笹野、曲がったら?」
と声をかけてくれた。
(嬉しい...。)
「あ、あのさ、これ、今日は、ありがとうね。」
時折噛みつつ、なんとか渡す。
「お、ありがとう......きれいだな、これ」
やった!
「でしょ!よかったら、部屋に飾ってね」
「うん、そうする。じゃ、また明日。」
「ばいばーい!ありがとうねー!」
「うんー」
どうしよう...!?心臓バックバクなんだけど!?
上手く言えてたかな...心配になってきた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
会話文ばかりになってしまうのは、僕の技術不足です...。やっぱり書くのって難しいです。
作中のDASH!はその場の思いつきだったのですが、東京に存在するみたいです。びっくり!
感想・リアクション・アドバイス等々お待ちしています。
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