驚きと、診察と
宮原さんが部屋を出ていったのを確認してから、漫画を閉じる。
実は暇すぎて、この巻を読むのは二周目だ。
それにしても、宮原さんが能力者だなんて、びっくりだ。
ウソか本当か分からないけれど、こういうときの大人は嘘をつかないと知っている。
とはいえ、あまり絡まれると面倒だし、しばらくは冷たい態度を取るとするか...。
...この漫画、意外と面白かった。
全巻一気に持ってきておけばよかった。
今度、続きも持ってきてもらおう。
すると、廊下でガシャーンという大きな音が聞こえた。
部屋から出るつもりはなかったけれど、ドアの隙間から顔を出してみる。
看護師がカートから物を落としてしまったみたいだ。
特に手伝うこともなさそうだし、やることもなくなってきた。
少し、あの人の診察をのぞいてみようかな。
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丁度診察が終わったときに、入れ替わりに遼太くんが入ってきた。
「お、どうした。なにか足りないものでもあるのか?」
「いや、暇だから見学しようと思って」
「そうか。そこのカーテンの裏で聞いてればいいんじゃないか。」
「うん。ありがとう。」
また少し、心の距離が近づいた気がして、嬉しくなる。
看護師が「次いいですか。」と聞いてきたので、「はい。」と返事をしてから、一応「来るぞ」と言っておいた。
入ってきたのは、若い男性だった。
今日は仕事の合間に来たようだ。
「本日はどのようなご要件で?」
「最近、喉の調子が悪くて。市販の薬を試してみたんですが、悪化してしまって...。」
「ここ数ヶ月で風邪をひいたりはしましたか?」
「いいえ、特にありません。」
「でしたら、この薬を処方しますので、食後に飲んでみてください。それと、味が濃いものや炭酸飲料は避けてください。」
「普通だな。」
人がいなくなった診察部屋で彼は言った。
『普通』という言葉に心がチクリとするが、
「大した能力でもないんでな。」
と返しておく。
『お前、"普通"じゃないな。』
あの日の言葉が蘇る。
僕だって、普通が良かったよ。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
名前の案がすり減っていく笑 次回までしばしお待ち下さい。
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