一瞬の快楽と一生の自己嫌悪
「京次郎、また親を見限ってきたのかよ」
「あんな毒親どーでもいいじゃん。俺は俺が可愛いからそれで良い」
「でもな?」
と説得しようとその懐に入ろうと、肩に手を置くとパシンとはたかれた。
「触んな!!お前は良いよ、ちゃんと愛されて育ったから。俺よりも愛されてんだから。俺の気持ちなんかわかんないだろ??」
嘲られた。湊くんのがまだ理解してくれるって。本物の兄弟なのに、心は乖離している。
「なあなあ、兄ちゃん。やっぱ俺ってセンス良いよな??」
と可愛く話しかけてくる京次郎とつらそうに首を絞めてくるアイツが同一人物なのが受け入れ難くて、でもそうさせてしまった俺が悪くて、京次郎にはとびきり甘やかして可愛がってやらなきゃという使命感と、そうしなければならないという強迫との境をさまよっている。
「そうだね、兄ちゃんモテモテになっちゃうなあ」
「鼻の下伸ばしてんじゃねーよ、ブサイクなくせに」
と自分のセンスを鼻にかけて、鼻で笑われた。
「あはは、それもそっか」
俺がいくら手を施したって、原型がどうしようもないのだから、これはただの浪費だ。湊におだてられるから、ついつい勘違いしそうになる。
「京一郎、友達作る気あんの??」
「え?それは、まあ」
「クソ陰キャ、自分から話しかけるぐらいしろ」
大学に着いてもダメ出しばかりくらう。自信をつけようと変えた髪型も、変じゃないかということばかり気になるだけで、自信なんて全くない。よし、もうヤケクソで講義で隣になった奴に声掛けよ。
「あの、こんにちは」
と声を掛けても会釈されて終わりだった。ノートやらをカバンから取り出している。あれが終わったら、あ、勉強始めちゃった。このまま講義始まったら声掛けにくいし。
「今日って、何ページからですか?かなり休んじゃってて」
「六十四からです」
「ありがとうございます」
いや、会話発展しろ!!また終わったじゃん。でもなあ、勉強の邪魔しちゃ悪いしなあ、と思ってる途中で講義が始まった。一向に、わからん。
「これ、良かったら」
と隣の子に開いたままのノートを差し出された。そこにはちょうどわかんなかった単語とか全然わかってなかった内容の要約などが記されていた。
「ありがとうございますぅ」
優しさに感動しながら頑張って授業についていけるよう寝ないで精一杯努力した。講義終了、力尽きて机に突っ伏した。いや、こうしちゃいられない。
「本当、すごい助かりました!勉強できるんすね!」
「いやいや、僕は勉強できないですよ。できないからこうやってわかんないところをまとめて頑張ってるんです」
「うわあ、尊敬しますね!俺は勉強嫌いが抜けなくて……」
「そうだと思いました。それじゃ」
とリュクサックを背負って逃げられる。
「待って待って待って、ください。その、どうやったらそうやって勉強に向き合えるようになりますか?自分でどうにかしようとしてもダメで、すごい困ってるんです」
「遊ばなきゃいいんじゃないですか?」
……馬鹿にしてんな、コイツ。
「遊んでないです、遊んでないつもりです」
「それじゃあ、いくらでもやる時間が……」
「できないんです、やろうとしても。だから、涙が出てくるんですよ」
何言ってんだ?俺??
「まあ、ここの大学にいるってことは、それ相当に努力されてきたんでしょうね」
「ごめんなさい、変なこと言いました」
「勉強はつらいものじゃないですよ。そう教わらなかったのは、可哀想だと思います。けど僕は精神科医じゃないので、そんな悩みを伝えられても……」
「そうですよね、ごめんなさい」
と頭を下げた。
「へえ、貴方って、そんな見た目してる割に、結構真面目なんですね」
と微笑まれた。
「真面目ですか?」
「これから図書館で勉強していくんですが、一緒にどうですか?」
「え!良いんですか!?」
「僕の方から誘ってるんだから、良いに決まってるじゃないですかあ」
「それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらいます」
京次郎にチャットで友達一人できたことを自慢した。
「氷野さん、泣かないでくださいよ」
「泣いてないです。わかんなくてイラついてるだけです」
頭を抱えて机に顎をおいていると隣の席から心配された。
「ここはこの構文からこの訳になって」
「あ、そんなのがあるんですね。初見です」
クッソ、知らなかった。ムカつく。
「また一つ、成長しましたね」
とそいつ、遥斗は俺とは対照的に朗らかな微笑みを見せた。あ、こいつの中で分からない問題って、バカの再認識じゃなくて、成長できる伸び代っていう捉え方なんだろうな。
「俺、今日で大分強くなりましたよ」
分からないを倒して倒して倒しまくって、レベル上げをした気分だ。帰り道をルンルンで歩いていると、
「勉強嫌いって嘘なんじゃないですか?」
と怪訝そうな顔で見つめられた。
「嘘じゃないです、今日は分からないを分かるに変えてくれる人がいたから楽しかったんです。一人で勉強してるとヤケになってすぐ辞めますから」
「そうなんですね。氷野さん、」
「京一郎!!なんで電話出ないの!!バァカ!!!」
京次郎がいきなり胸倉を掴んできた。
「ごめんごめん、気付かなくて……」
とゆーか、京次郎一人で帰ってたんかとばっか思ってた。バッと京次郎が一緒に歩いていた彼の方を見る。
「あ、本当に友達がいる。ぼっち卒業おめでと」
そして、俺のシャツをパッと離して、まじまじと彼の方をみて値踏みしているようだ。
「ありがと。……あんま失礼するなよ」
俺は弟に釘を刺す。
「それじゃあ、僕はここで」
「待って待って待って、ください。京一郎の友達ですよね?俺、弟の京次郎って言います。以後お見知りおきを」
と去ろうとする彼を弟が引き止めた。
「僕は野嶋 遥斗です。兄弟で同じ大学なんですね」
「いや、俺はオーキャンというか、学校見学です。まだ高校生なんで」
「高校生?学校は??」
「あー」
京次郎が言葉を詰まらせる。
「東野高校ってとこで地元では結構有名な進学校に通ってんですよ。兄ちゃん、鼻高いわあ」
そーゆーことじゃないって顔されてる。けど俺がこう返すことでそれ以上聞いてくんなって言ってるのも同じなんだ。な?って京次郎の肩を持つ。
「うん。……ほんま、口だけ達者」
助け舟乗せてやったのに。
「そうなんですか、大学はこっちの方で?」
「いえ、受かったところに行きます」
「あははっ、せやな!!」
と気前の良い兄を演じる。自由に一人暮らししたいも、子離れしてない両親を置いて行きたくないも、優しい京次郎は両方持ってて、でも喧嘩ばかりの両親の元にずっといるのは息苦しいんだ。可愛い奴。
「似てますよね、氷野さんと」
「どっちも氷野ですけど?」
と意地悪く言うと
「あ、じゃあ……」
なんて困惑された。
「こいつが一郎」
「こいつが次郎」
「一郎さん、次郎さん」
「じゃあ俺も、遥斗さんって呼んで良いですか?」
「京一郎のが歳上やないの?留年ばっかやし……」
グサッと何かが刺さった。今まで同い歳として接してきたのが馬鹿みたいだ。やべえ恥ずかしい。
「え??」
「サバ読んだら二十歳だから!!」
苦し紛れに主張した。
「そこでサバ読むなよ、二十二やったっけ??」
「何で知ってんだよ」って冗談半分でどつくと「兄弟じゃん」って笑われた。
「なら、敬語使わなくて良いですよ」
「嫌です。遥斗さんには敬語使いたいです」
「何故ですか?」
「言ったじゃないですか、尊敬しますって」
「そうですか、何だか嬉しいですね。それじゃあ、僕はこっちなので」
と駅のホームで別れる。
「あ、じゃあまた、大学で」
と俺はぎこちないながらも手を振った。
「お前が敬語使ってんの、ばりウケる」
「はあ?俺だって敬語ぐらい使いますけど??」
「湊くんに敬語使われて気分良くしてるクセに」
図星───☆
「だって、アイツのアレは、可愛いじゃん」
「うっわ、心底見たくねえ瞬間見ちまった」
俺だって弟に恋人の惚気け言って照れる瞬間、心底見られたくなかったけどね!!
「ただいま」
「お帰りなさい」
と言って京一さんにハグをする。その後ろの京次郎さんにもハグ構えをしたが素通りされた。
「ごめんな、京次郎つれなくて」
頭をポンポンしてくれる爆イケな京一さんにときめいて、頬にチュッとキスをした。すると、ふにゃって笑うのが可愛い。
「うわああ髪型、超超超超超格好良いです!!もう全部がお洒落で理想的で、一目見た瞬間に全人類惚れさせる最ッ高に格好良い男ですね、京一さんは」
「湊くん、そこまで言うと逆に胡散臭いんやけど」
「はっ!!」
そんなに言ってないのに!?これでも胡散臭くなるの!??嘘をついている人間ほどよく喋るってのは聞いたことがあるから気を付けてたけど、まだまだ京一さんの格好良さの一ミリも表現できていないんだが!!??
「湊、たくさん褒めてくれてありがとね。俺は褒められるの好きだからすごい嬉しいよ」
「それと、それに京一さん、大学までちゃんと行ってこんな遅くまで勉強してきたなんて……」
本当、偉すぎてずっとよしよししてたいし、京一さんまじで頑張ったじゃん、お顔も天才、大優勝!!メンタルも崩さずに疲れも見せずに、ここまで帰ってきたとか、感激で涙が出てきそう。生きてるだけで偉いのに、それ以上に頑張るなんてすっごい偉いよ!!!大好き!!!
「ご褒美、貰ってもいい?」
「え、僕にできることならば何でも!!」
と言うと、唇を合わせて長めにキスをされた。
「ああああ、もう良い!!俺消えるわ!!」
そのイチャつきぶりに痺れを切らした京次郎さんがイラつきながら荷物をまとめている。
「京次郎、外暗いし危ないよ?」
「んなもん知るか、夜行バスでも何でも良いから今日で帰る!!」
「京次郎」
と京一さんがその腕を掴もうとすると、叩かれ避けられて、
「うっせえんだよ!!バカ!!俺が邪魔なんだろ!!」
と真正面から怒鳴られた。
「邪魔じゃないよ、俺は京次郎といられて嬉しいのに……」
涙目になった。ストレス値が限界を迎えてる。いやもうとっくに超えてるはずだ。京次郎さんのために京一さんはいつもより強く振舞っていられた。その疲れは尋常ではない。
「弱っちい、何泣いてんんっ!!」
「許さないです。貴方が京一さんの弟だろうと、京一さんのことを傷付けるのならば、この僕が許しません」
京次郎さんの悪い口を塞いだ。京一さんには喧嘩しないで欲しいと言われてきたけど、もう我慢の限界だ。
「っざけんな!!お前だって俺がいなけりゃあ今頃京一郎とやりたい放題できたって思ってんだろ??」
「僕は京一さんの悲しむ顔が見たくないだけです。京一さんの思い通りにさせたいんです。僕の欲がどうのこうのなんて、今クソどーでもいいじゃないですか」
って僕は京一さんとの約束を破って京次郎さんと喧嘩している。矛盾してるけど、京一さんの悲しむ顔は見たくないし、悲しい思いはさせたくない。
「つまり、京一郎のためにここに残れって言いたいの??」
「そうです」
「鬼かよ、慈悲の欠片もねえ。こっちの優しさが全部水の泡、俺の居場所はもう何処にもねえなあ」
と自暴自棄で狂ったように笑われた。
「京次郎、ごめんね。うまくもてなせなくて」
「本ッ当!!!せっかくここまで来たのに、最悪な気分やわ」
肩に触れた手がそのまま首へと流れ、ググッと京一さんの首を握りつぶすかのように締めた。京一さんが苦しそうに唸る。
「やめ、殺さないで……」
腕力では京次郎さんに到底敵わない僕は、無力である。さっきまでは最高に幸せだと思ってたのに、何でこうなるんだ。何で涙が出るんだ。
「お前さえいなきゃ、全部、お前が悪いんだ」
「京次郎さん、お願いだから!!僕が何でもするから!!言うこと聞くから!!」
その腕にしがみついて死に物狂いでお願いした。
「なら、京一郎と別れてくれ」
その一言の衝撃で僕は力無く床にペタンと座ってしまった腰抜け野郎。そして、ふと視界に入ったのは、京一さんが京次郎さんの胴に蹴りを入れるところ。
「ごほ、んんっ、こんなこと、可愛い可愛い弟にしたくなかったがよぉ、お前さあ、失礼すぎて目に余んねん。優しい兄ちゃんが礼儀って奴を教えたるわ」
「はあ???うっざ!!死ねよクズ!!!ゔっ!!」
京一さんが暴言吐きながらまじで蹴ってる。鋭くて重い蹴り。そして、一蹴。京次郎さん、立てなくなっちゃう。
「京一さんやめて、ダメです!!」
と僕が無闇に止めようとしたら、胸倉掴まれて重い右ストレートが頬に当たった。バカ痛い!!!頭がぐらんとして足元がおぼつかない。口の中が切れた。血の味がする。
「はあはあ、はあ……湊??京次郎??……ああ、うわ、ああああ、最悪……」
京一さんが手で顔を覆う。悲しまないで、泣かないで、僕は大丈夫だから。
「京一さん、ごほっごほっ、はああ、僕はっ、大丈夫ですから、京次郎さんを……」
「湊ごめん、俺、無我夢中で」
「京次郎さん、死んで、ないです、よね?」
僕は立っているとふらふらしちゃうから床にとりあえず座った。取り返しがつかなくなる前に、お願い。これ以上、京一さんを、悲しませないで。
「京次郎京次郎京次郎京次郎、ねえ、返事して」
横で壁を背にして京次郎さんが寝ている。京一さんがその頬をぺちぺちとしても反応がない。
「嫌だよ京次郎。死なないで。ごめん、全部全部俺が悪いってわかってるよ。けどこんなの酷すぎるって。俺もうどうやって生きてけばいいかわかんねえや。俺みたいなクズは死んだ方が世のためだろ?だから俺の生命、俺の全部をお前にやるから、どうか京次郎、お前だけは幸せに生きてくれ」
ボロボロと大粒の涙を流して、神様なんか信仰してないのに、誰かに向かって一生懸命にお願いしている。土下座するようにうずくまる京一さんに、僕は何も言えずにただただ見つめることしかできなかった。
「んなのいらねえよ、バカ京一郎」
さっきの言葉に呼応するように、せせら笑いを浮かべた京次郎さん。
「京次郎!!!」
と京一さんが強く彼を抱きしめる。痛い痛い離せっ!!って暴れられるんだから案外元気そうだ。
「俺が死んだかと思ったん?」
「うん、もう吃驚させんなよ。ああああ、生きてて良かったあ♡」
って京一さんが京次郎に、キスした。僕は二度見した。余計に苦しんだ。
「は?おまっ、何してんねん、バカなん??」
「馬鹿で良いよ。京次郎が生きているってことを感じられるんだったら、それで良い」
恍惚とした表情で彼氏の目の前で弟にキスをするなー!!!
「んむっ、ちょっ、恥ずいねんけど」
「うわあ、京次郎だあ♡♡」
ダメだ、完全にストレスが限界を通り越して、ばぶちゃんモードに突入してる。こうなったらキス魔だからなあ。
「京一さん、僕も……」
小声でアピールしても気が付かないか。
「あ、みーたん、血ぃ出てるよ?」
気付いた。みーたん呼び、心配してくれてるの??
「これはだいじょう、んんっ!!」
いきなり四つん這いで近づいてきてキスしてくる。
「んー、んはぁ。あははっ、みーたんの味がする。苦あ!!」
子供みたいに無邪気に笑う。
「僕の血液、ばっちいですよ!??」
「んーんっ、みーたんのだから美味しいよ♡もっと味あわせて?」
「いや、でも「良いの」
と舌を絡めさせたキスをされて、僕はとろっとろに絆されて惚れさせられた。無邪気って恐ろしい。
「ふふっ、俺のナカにみーたんの(血液)が入ったね♡♡」
確信犯でしょ!!!無理、この人無理、僕のアレが限界を迎えてる。えちえちだあ。
「やめろ淫魔。もう触んなって」
「俺、何でもすりゅからあ。お願い??」
また京次郎さんを襲っては可愛くお強請りしてる。あ、これ、彼なりの罪滅ぼしなんだ。
「もう何もしなくて良いよ、ありがとう」
え、京次郎さんって京一さんにこんなにも優しくできたんだ。頭ポンポンして労って、軽くハグをする。
「ふふっ、だぁーい好き♡♡」
って京次郎さんを抱きしめながら京一さんは寝た。
「ねえ湊くん、俺、半勃ちなんやけど……」
彼の腕の中で京一さんが幸せそうにすやすや寝ているのに、突如そんなこと言い出すから少し吹き出してしまった。「やばない?」って聞いてくるこの人もやっぱ可愛い人だなあ。
「僕よりはマシです」
「おお、フル勃起じゃん。さすがは彼氏なことだけあって、そーゆー目でいっつも見てるんやなあ」
褒められてんのか貶されてんのかわかんないけど、陽気に笑われた。
「やめてください、傷を抉らないでいただけますか?」
立ち上がって、トイレへと向かおうとすると、
「湊くん、ごめんってばあ。俺も連れてって??」
と厚かましくお願いされた。とゆーか、京一さんが貴方の上でまだ寝てるでしょーが!!だから、近くに布団を敷いて寝返りを打たせるようにころんと、布団の上に移動させた。
「はい、手出してください」
「やっぱ優しいね君は。俺が京一郎に似てるから??」
彼が立ち上がった瞬間、目眩のようにふらふらっとしたので胴体を抱きしめて支えた。そしたら、今度は嫌がられずに、おそらく褒められた。
「違います、僕は基本的に誰にでも優しいんですよ」
「そうなんだ。それじゃあ誰にでも優しくないと一緒だね」
「京一さんにだけは特段に優しいです」
「あっそ、負傷してる俺にはどれだけ優しくしてくれるんかな?」
「貴方の主観が答えですよ」
トイレに置いて、鍵を閉めようとすると、
「待って??手に力が入らんのやけど」
とズボンを下ろそうにもうまく下ろせないってのを見せられた。腕の上げ下げはできても、握力がなくて困った、という感じだ。
「分かりました」
とズボンを下ろしてパンツを下ろして、あれ?待って、ということは一人でできなくね??
「やってくれんの??」
ちょっと照れてんの、可愛い。どんどんおっきくなってんじゃん。
「京一さんにはシーっですからね」
「はいはい、恥ずかしくて言えへんもん」
手で京次郎さんのをしごきながら、自分のも同時にやった。途中、声が漏れると、「あ、そうやって喘いでんの?」とからかわれた。
「どうですか?気持ちい、ですか?」
「そりゃあね、もっと喘いでくれたらイける気するんだけど」
まだまだ余裕のある表情を見せられて、ちょっぴり悔しかった。
「何だかんだ言って、好きなんじゃないですか」
「いいや、ただの好奇心。京一郎が興奮するオカズを見ておきたくってさあ」
「京一さんのこと、ですよ??」
「うっさいなあ、青二才が」
だから僕はいつも通り妄想で補う。どんな風に触られてどんな表情でどんな台詞で僕のことをいじめてくれるのか。
「んんっ、やばっ♡もう、ダメ……///」
やめて欲しいの?って彼が意地悪そうな笑顔で聞いてくる。僕がやめて欲しくないのをわかっていて。
「や、もっとぉ♡♡」
「湊くん、ちょっと良い?一人芝居してんの??」
と京次郎さんが目を真ん丸にしている。
「そうで、す、んっ、ゃら、壊れちゃう……///」
見られてて興奮しちゃったんだあ、変態だね。とお仕置されるみたいにどちゅどちゅ突かれて、というシュチュを妄想するだけで僕は何回でもイけるのだ。
「やば、もうすぐ……」
と京次郎さんが苦しそうな表情になってくる。腰も自分で動かしたくてたまらないって感じでうずうずしてるし、可愛くて優勝!!もう限界ってところでその先っぽをパクッと口で軽く挟んだ。
「んぐっ……んーあっ♡♡」
そして口を開いて、京次郎さんに舌の上にある濃厚なそれを見せた。
「何してんの?まじで」
めっちゃ引かれた!!??便器に吐き出してから
「これだったら飛び散らないので証拠隠滅です」
と後出しの理由を言った。そうじゃないと僕が恥ずかしいから。そして、肝心の僕はうまくイケてないので欲求不満を拗らせたままだ。
「あーあ、死にたい」




