第1集 献身慈悲のナインペイン 第6章 異変 ー5ー
次の日の昼頃、何やら騒がしいと思ったら…
ライフィールド氏の息子夫婦…もといリバス嬢の両親が屋敷に帰ってきていた。
「お父様…お母様…お久しぶりです…」
「ただいま、りーちゃん。一人で心細かっただろうに…だが、もう大丈夫だ。」
「りーちゃん、一人でよく頑張りました。えらいえらい。」
フィーヴィーと一緒に様子を覗きに行ってみると、リバス嬢がご両親と丁度感動の再会を果たしているところだった。
「一人じゃなかったですよ、お父様・お母様。ニーメンが一緒にいてくれました。それに、ここ最近はお祖父様のお客様がずっと滞在していますので…」
「ん?お祖父様のお客様って、父に…おじいちゃんに客人が訪ねてきていたのかい?」
「はい、そうです。お祖父様の依頼を受けてウィル・フォーメン様が訪ねて…あっ、丁度よかった。こちらが、そのお客様です。」
私に気づいたリバス嬢がこちらに視線を向けてきた。
「あっ、初めまして。ウィル・フォーメンです。人形技師をやっています。」
「父の客人にしては随分若いねえ。人形技師ウィル・フォーメン…初めて聞く名前だ。」
あからさまに怪しまれてしまったけれど無理もないか。
「お父様。ウィルさんはナインペインを作成した人形技師モールス・フォーメンさんのお孫さんなんですよ。」
「リビングドールの開発者の孫!?……失礼、そういう事なら合点がいったよ。」
「本来はお祖父様がナインペインのメンテナンスを依頼していたのですけれど、まあ色々とありまして。ですが、それを話すと長くなってしまいますので…」
「詳しく話を聞きたいが、今はおじいちゃんの葬儀が優先だからな。それで、おじいちゃんの遺体は?」
「昨日、死亡を確認したお医者様に葬儀屋さんを紹介してもらったのでそちらに。」
「そうか、ちゃんとできたんだね。よくやったぞ、りーちゃん。」
「まあ、りーちゃん。暫く見ない間にしっかりして…お母さんは嬉しいですよ。」
「とりあえず、父さんたちは部屋に荷物を置いたら葬儀屋まで行くよ。遺体の確認もそうだけど葬儀の打ち合わせなんかもしなくちゃいけないし。」