115話≫〔修正版〕
よろしくお願いします。
俺は視線の先に堕零竜人を見据えて、
城壁の外に1人で降り立った。
背後で呼び止める声が僅かに漏れる中、
俺は概念魔法を発動する。
「ー【我一陣の疾風を纏う】ー」
フォールン・ドラゴニュートとの距離は数キロ。
目視しづらいが、
放つ魔力が周囲を蜃気楼の様に揺らめかせ敵を何倍も大きく見せている。
この距離だと名前とレベルしか見る事が出来なかったが、
目の前に広がる魔物の軍勢に穴を開け、
近づく事が出来れば解析出来るだろう。
上体をゆらゆらと揺らしながら歩くフォールン・ドラゴニュートだが、
その動きには隙が見えず武人のそれだ。
俺は吹き荒れる風を背後に残しながら噴き出る魔力が色付けた薄緑の風を纏いながら疾走した。
もちろん目の前の軍勢で目の前に立ちはだかるモノは排除する、剣を薙ぎ、斬り、裂き、
魔法で爆発させ、燃やし、焦がし、切断し、溺死させ、凍死させる。
無駄な力を使わない為にそれぞれの魔物の弱点を【並列思考】で瞬時に把握し的確に仕留め、
魔力が減れば回復薬で回復させ、
傷を負えば瞬時に【超回復】で傷を治癒させまた剣を握る手に力を込め戦う。
その間にも前に進む事は辞めず、
ひたすらに道をこじ開け先へ、
先へとその身体をねじ込む。
後ろに居る戦士達の負担を出来るだけ減らせるようにという程の高尚な精神は持ち合わせて居ないが、
せめて目の前にいる敵だけでも倒そうと思ったのだ。
それを背後から見ていたとある冒険者は後の酒場で酔いに顔を赤らめながら、
「次々と戦場を蹂躙する色とりどりの魔法、見惚れる剣舞、俺は英雄の居た神話の時代に居るのかと思ったよ」
と周囲の冒険者たちに語ったとか語らなかったとか。
視界にうつるフォールン・ドラゴニュートは未だ笑みを崩さずに上体を揺らしながらゆっくりと歩いている、
まるで俺が来るのを待っているかのように…
目の前の敵を排除して居るうちにかなりレベルが上がった感覚がしたが、
まだフォールン・ドラゴニュートとのレベルの差は相当離れている為、
格上との戦闘で御用達のスキルは使用可能。
俺が高ぶる精神を鎮め、
思考をクリアにすると自然とスキルが発動された。
ー【下克上】ー
急激なレベルの上昇により明確に感じ取れる自分の筋力や反射神経等、
見えないステータスの上昇を実感しながらさらに上乗せするようにスキルが力を貸してくれる。
溢れ出す存在感が空間を揺らし音を立てる中で、
フォールン・ドラゴニュートの笑みが消え去り僅かに驚いたように見えた。
その直後、
俺は魔物の群れを抜け切りアイオロスを解除する。
そしてフォールン・ドラゴニュートと対面する位置に音をたてず足を落とし、
視界に敵の姿を収めた。
フォールン・ドラゴニュートの体表の色は赤黒くしなやかな体躯に極限まで無駄を排除し引き締められた筋肉が乗り、
完全な美を体現している。
指先から生える爪は長く鋭く光り輝き、
肉をバターのように切り裂くだろう。
そして頭部は竜の頭部を人間に少しだけ近づけたような感じで、
凛々しい爬虫類顔という言葉がぴったりだ。
背中から生える翼は広げれば全長5mにもなるであろう巨大さであり、
所々にある傷は自らの戦功を表しているかのようである。
「オ前、ソノ溢レ出ス威圧感…何者ダ?…」
やはりここまでレベルの高い魔物になると言語能力を備えているのだろう。
「俺は只の人間だ。それより何故攻める?理由は何だ。」
俺は魔王のイベントが本当にあるのか確認が取りたかっただけなのかもしれない。
魔王とは関係のない侵攻ならば御の字、魔王のイベントであったならそれ相応の対応を考得る事が出来れば良い。
「我ガ主ノ威光ヲ再ビ知ラシメルノダ、
1000年前ノ苦戦モ今ノ時代ノ人間相手ナラバ余裕、
オ前ハ危ナイ危険、ココデ俺ガ殺ス。」
我が主…か、間違いない。
魔王は生きているのか眠っているのか知らないが、
既にイベントが始まっている。
フォールン・ドラゴニュートから放たれる殺気に自らの殺気をぶつけながら考えていた思考を打ち切り、
俺を腰を落としいつでも動けるようにする。
そして相手が話している内に解析したステータスを見ながらフォールン・ドラゴニュートを見据える。
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[堕零竜人]lv:64
[解説]
Aランク上位の魔物。体長1.9m
竜よりかは防御も攻撃も劣るが、
人間大の体躯に秘められた竜の力は人間を遥かに凌駕する。
【火属性耐性】【炎属性耐性】
【打撃耐性】【闇属性無効】
【光属性脆弱】【堕零竜人の咆哮】
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チートだな、俺も人の事は言えないが、
アンデットエンシェントドラゴンのステータスも今見る事が出来ればこんな感じだったに違いない。
どうやらこのドラゴニュートは火や炎を司る竜を祖先に持っているらしく、
火と炎は効きづらいようだ。
闇が無効なのは闇に堕ちた、からであろう。
フォールン・ドラゴニュートの瞳の光が弱くなったような気がした。
俺のスキルが危機を知らせる警鐘をならしはじめる、
直ぐに戦闘体制に入りいつでも動けるようにする。
フォールン・ドラゴニュートは大きく胸を反らせ、
光の弱くなった瞳で俺を見ながら叫んだ。
ー【堕零竜人の咆哮】ー
「G.GAA…ァ…GA.GAAAAAAAAAAa!!!!!!」
まるで地獄の餓鬼が叫んで居るような、
枯れた喉を無理やり動かし咆哮しているかのような、
そんな哀しみに溢れ悲痛に呻く叫びが俺の聴覚を麻痺させる。
「ぐぁっ!?………くそっ!!」
俺はスキル【予測の目】と【超回復】を同時に発動させ、
耳を治癒させながら次の動きを探った。
〈左手の爪で攻撃、右腕を裂かれる〉
その予測が見えた瞬間、
俺は力の限り後方にバク転で飛び去り荒くなる息を必死で堪えた。
次の瞬間、目の前に広がる赤黒いフォールン・ドラゴニュートの体躯、
そして脳裏に浮かぶ予測は俺に死を運ぶ。
〈頭部をもぎ取られる〉
俺は即座に剣を横に構え全力でガードした。
直後首のあたりを狙った腕の一振りが剣の腹にあたりを衝撃をもろに受けた俺は横に50m以上吹き飛ばされバランスを崩しながらも何とか足を踏ん張り、
土を抉りながらも止まった。
だがすぐに距離を詰めて来るフォールン・ドラゴニュートに俺のフラストレーションはどんどん溜まっていく。
俺は高速で流れる思考の中で一計を案じ、すぐに行動に移した。
スキル【瞬間移動】発動
俺はワープで100m程先に跳ぶが直ぐに俺を視認したフォールン・ドラゴニュートは接近して来る。
首を狙い鋭い爪を横薙ぎにして来るフォールン・ドラゴニュート。
もしこの場面を見ている人間が居たならば最後の希望が潰えた事を悟り、
何度目かの絶望しただろう。
そして俺の首が…
「……………ァ……………ジ………」
フォールン・ドラゴニュートの爪により宙を舞った。
【SideOut】
『半人族[lv:45]』 :【剣士】/【戦舞技師】/【全属性魔術師】
雪埜 奏
必要経験値/規定経験値:0/4600
能力:
【戦舞技補正:強】【鈍感:大】
【剣豪:Ⅰ】【魔力探知:強】
【体力補正:強】【筋力補正:中】
【解析の眼】【弱点解析】【縛りの咆哮】
【竜種の咆哮】【野生の本能】
【下克上】【全属性魔法】
【魔力量増大:中】【隠密】【暗視】【魅了】
【砂塵の爪甲】【魔法操作:強】【思考加速】
【並列思考】【瞬間移動】【予測の眼】
【血分体】【下位従属】
【魔法威力補正:中】【魔法命中率:強】
【超回復】【粘糸精製】【識字】【色素調整】
【剥ぎ取り補正:弱】【異次元収納】
【毒耐性:弱】【麻痺耐性:弱】
【雷耐性:弱】【炎耐性:弱】【氷耐性:弱】
【武器作成:Ⅰ】【格闘術補正:弱】【幸運補正:弱】
残存Point:[21]
所持金:[1096300エル]
称号:【魂を鎮める者】
【英雄の国の者】
[!]経験値を299010手に入れました!
※規定経験値を超えました。
9Levelupします。
必要経験値がresetされます。
9Point獲得




