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Soul-Move -新章開始-  作者: 癒柚 礼香
【エスナの地下迷宮】
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86話≫〔修正版〕

よろしくお願いします。








チュンチュンチュン…


小鳥のさえずりを聞きながら目を覚まし、

寝返りをうてば窓の軒先に留まる色とりどりの小鳥が見える。


(そうだ、昨日は【猫丼亭】に泊まって部屋のベッドで寝たんだった。)


今日は26日目の朝、

冒険者ギルドに行ってEランクに見合った簡単な依頼を受けようと決めている。


俺は上半身を起こして身体が動かしづらい事に気がついた。


どうやら昨日は装備を来たまま寝てしまったらしい。

布地の装備とは言え分厚い布だったし、

少し身体が固まってしまった。


寝間着を買う事も考えておかねばならないようだが、如何せん定住する予定の無い今では荷物を増やすのは得策では無いため、見送りとなるだろう。


俺は装備一旦脱ぎ、シャツとズボンだけになってから部屋を出て【猫丼亭】の店主、


ドイノフさん41歳♂(猫耳)


最後のオプションが嬉しくなさすぎるおっさんだがかなり良い人だ。


そんな残念猫耳のドイノフさんに頼んで裏庭にある井戸を貸してもらい、

そこで水浴びと服の洗濯をした。


この世界にも風呂はあるみたいだが、

生憎ドイノフさんの宿にはないみたいだ。


もうすこし高いレベルの宿には設置されているみたいなので、

冒険者ランクが上がり収入が安定したらそういう宿に泊まるのも良いかもしれない。


取り敢えず服を裏庭に干して少し休憩する。


上半身裸で下半身も裸だが、

最初にこの世界で目が覚めた時も裸だったから何と無く懐かしい。



※変態ではありません。



思えばもう1ヶ月近く前の事になる。

病室で1歩も外に出れない生活から一転、

死んだと思ったら森の中で目が覚めてサバイバルに明け暮れた日々。


思い返せば期間は短いが、

中身は溢れんばかりに濃かった。


俺の前の世界での一生を何度繰り返してもこの密度には届かないだろう。


死線を潜り抜ければ抜けるほど強くなれる。


それはこの上なく生きていると実感できる瞬間だった。



(あれ?いつの間にか思考が戦闘狂(バトルジャンキー)みたいになってるな)



まぁ、そうなるのも仕方ないかもしれない。


目が覚めたらいきなり身体が動くようになって、

目が覚めたらそこは死と隣り合わせの森の中。

戦いの連続で娯楽のスポーツはない。


不謹慎かもしれないが、

自然と戦いが娯楽のスポーツに代わったのだろう。


俺は若干乾いた笑みを浮かべた。


多分この時の表情は少しひきつっていただろうが、誰も俺の顔を見る者などおらず、

俺自身の表情を知る術はなかった。



しばらく待っていたが、装備の乾きが遅いので、

以前からやろうと思っていた魔法の練習も兼ねて服を乾かそうと思う。


スキル【全属性魔法オール・アトリビュート・マジック】発動


風属性下位弾発動


右の手のひら集まる風が渦巻き球体を形成する。


それを干してある装備の前まで持っていき、

発動キーは唱えずイメージで風を動かそうとしてみる。

拡散する風を強く意識しながら手のひらの風の球を干している装備に(かざ)す。


【魔法操作:中】も手伝って、制御は比較的に楽であるが、ミスを起こしたら装備に傷がつくかもしれないから油断は出来ない。


手のひらから球体を崩しながら溢れる風は、

流れるように満遍なく干してある装備を撫でていく。


勿論風は循環する様に手のひらに帰って来るように強くイメージし、

そしてまた装備の合間を縫う様に風を這わせる。



※カナデは現在裏庭で全裸です。



風を循環させる魔法。


現在(・・)、そのような魔法は存在しない。


この世界の魔法を使う生命はその難しい魔法を簡略化して発動する。


盾、槍、弾の形状に固定(・・)して、


多様化を犠牲にする代わりに発動までの速度と、

魔法自体の簡略化を実現させた魔法。


それが現代(・・)の魔法、そう俺は当たりをつけた。


さしずめ、今俺が行った手法による魔法の行使は古代魔法と言えるのかもしれない。


こうやって魔法を簡略化して盾、槍、弾に固定する前には必ず、

俺が今行使している魔法の手法があった筈なのだから…


まぁ、そんな事は過去に行ってみないと分かるわけなど無いのだが。



(うーん。魔力の消費が少し多いな、ムラがあるって事か…まぁ風を循環させてるだけだし使い道は洗濯物を早く乾かせるだけかな)


この魔法に名前をつけるとすれば、

循環(サーキュレーション)】って所だろう。


暫くすると装備も完全に乾き切った為、

それを着て【猫丼亭】の店主ドイノフさんに井戸の礼を言った後に、

冒険者ギルドに向かった。




××××××××××××××××××××××××××××××××××




「ようこそ!冒険者ギルドウォルテッド支部へ!…ってカナデさんじゃないですか!本日はどの様なご用件ですかっ!」


冒険者ギルドに着くなりエイラに声を掛けられたので仕方なく、


仕方なーく、


エイラの座る受付に向かった。


もちろん他意は…無い。


「おはようエイラ。今日は簡単な依頼を受けようと思って来たんだ」


「お、おはようございますっ…カナデさん。そうですか、で、では、いくつか良い依頼を私が選びましょうか?」


そんなサービスがあるのか、

まぁ張り出されている依頼の控えも奥にあるだろうし受付嬢の方が依頼に詳しそうだからな。


初心者にはサービスとかでやっているのかもしれない。


※やっていません。


「お願いしようかな。」


「は、はいっ!お任せくだしゃい!!…はうぅ…」


また噛んだ…


あぁ!くそ!なんだこの可愛い生き物は!


勿論俺はそんな事をおくびにも出さずスマイル一徹だが、

保護欲が掻き立てられるのは仕方あるまい。

あまり歳は離れていない筈なのだが…


「焦らないでも大丈夫だよ?ゆっくりでいいからな?」


「は、はぃ…し、少々お待ちください」


ピンとしていた兎耳がしゅんとなっている。


目は口ほどに物を言うじゃないけど、

獣人族の人達は"耳は口ほどに物を言う"と言う言葉をプレゼントしたい。


エイラはゆっくりと立ち上がり俺の方を少し見てから奥に向かって行った。


俺はその時に「頑張って」と小声で言ったらエイラの耳がその小声を拾ったのかピンと直立しスキップしながら奥に消えて行った。


あ、聞こえたのか…


なんて単純な子なのだろう…お兄さん心配…


そして相変わらずフワフワの白くて丸い尻尾は可愛い。


俺はもしかしたら、獣人族の尻尾や耳に弱いのかもしれない。




暫くしてエイラが戻ってきた。


「お待たせしましたっ!此方がEランクで近場の依頼になりますね!」


エイラの持って来てくれた依頼に目を通す、持って来てくれた依頼は3枚、

順に見ていくとしよう。



ーーーーーーーーーーーーーーー


〈冒険者クエスト〉


[適性ランク]:Eー技術系


[依頼内容]:ウォルテッドの酒場【男釜場】での臨時アルバイト

人手が足りないの!

働くのは今日の夜よ!


[依頼主]:酒場【男釜場】店主イウルホ♂

[場所]:【男釜場】

[報酬]:6000エル


ーーーーーーーーーーーーーーー



えーっと…ウォルテッドの酒場、


おかまばー…



おれは即座に目を逸らした。

これは絶対に受けちゃ行けない依頼だ、

スキルも魔物と遭遇した時並の警鐘を鳴らしている。

俺は記憶からこの依頼を抹消し、無かった事にしてから次の依頼を手にとった。



ーーーーーーーーーーーーーーー


〈冒険者クエスト〉


[適性ランク]:Eー技術系


[依頼内容]:ウォルテッドから北に徒歩で2時間の所にある【エルポック村】の畑の手伝い


[依頼主]:エルポック村村長

[場所]:【エルポック村】

[報酬]:1000エル


ーーーーーーーーーーーーーーー



この依頼は悪く無いが、

村までの距離もあるし報酬もイマイチだな、最後の依頼を見てから決めるとするか。



ーーーーーーーーーーーーーーー


〈冒険者クエスト〉


[適性ランク]:Eー討伐系


[依頼内容]:ウォルテッドから南に徒歩1時間程の所にある平原【ラエリの平原】に生息する魔物、

平原兎(プレーンラビット)]を5匹仕留めろ


尚、剥ぎ取った肉と毛皮は別で、ギルドで買い取りが出来ます。


[依頼主]:冒険者ギルドウォルテッド支部

[場所]:【ラエリの平原】

[報酬]:2000エル


ーーーーーーーーーーーーーーー



(これは…あの露店のおばちゃんが言ってたプレーンラビットか!)


間接的におばちゃんの助けにもなりそうだし俺もまた食べる機会があれば食べたいからな、

良いかもしれない。


それに肉と毛皮も売れると言う事は依頼の報酬以外のお金も手にはいるって事か。

お得だな。


これにするとしよう。

【ラエリの平原】もどんな所か気になるし、

絶対に油断はしないが、張り詰めた精神を和らげるには丁度いい依頼かもしれない。

素材を売れば懐も暖かくなるし、

平原に行けば心が安らぐかもしれない。


俺は3枚目の依頼を受ける事に決めてエイラに手渡した。


「この依頼を受けようと思うんだけど、良いかな?」


「は、はいっ…討伐系依頼ですが大丈夫ですか?」


討伐系と技術系があるのはわかるけど一応の確認みたいなものか?


「依頼には4つの種類があって、採取系、討伐系、捕獲系、技術系の4つがあるんです。」


エイラの説明を要約すると採取系は薬草とかの採取の依頼を一括りに分類してあり、

討伐系は俺が受けようとしている様な魔物を倒す依頼、

捕獲系は魔物や動物を捕まえる依頼、

技術系は市民や農民の手伝い全般の事を言うらしい。


なるほど、結構分かれていて分かりやすい。


「【ラエリの平原】は基本的にEランクの魔物しか出ませんが大丈夫ですか?」


あぁ、エイラは心配してくれてたのか。

まぁ、昨日冒険者になったばっかの奴がいきなり討伐系の依頼受けるのは無謀なのかもしれないな。


ちなみに違約金は報酬の額らしくこの依頼を失敗すると俺の財布は危機的状況に陥る事となる。


でも、エイラは俺のレベル見てないのかな?


最初に書かされた紙に書いた筈なんだけど…


ま、いいか。


「大丈夫だよ、こう見えてもEランクの魔物とやりあえるくらいの実力はあるんだから。しっかり討伐してくるよ。」


「そ、そうですか…では、気をつけて行って来てくださいっ!」


俺はエイラに見送られて【ラエリの平原】に向かった。




【SideOut】



半人族(デミヒューマン)[lv:25]』 :【剣士(ソードマン)】/【戦舞技師ダンズ・ワー・トリッグ】/【全属性魔術師オール・アトリビュート・ウィザード


雪埜(ユキノ) (カナデ)


必要経験値/規定経験値:1800/2600



能力(スキル):【戦舞技(センブギ)補正:強】【鈍感:大】

【剣術補正:強】【魔力探知:中】【体力補正:強】

解析の眼(アナライズ・アイズ)】【弱点解析ウィクネス・アナライズ】【縛りの咆哮(バインド・ロア)

野生の本能ワイルド・インセィティクト】【下克上】【全属性魔法オール・アトリビュート・マジック

【魔力量増大:中】【隠密(スパイ)】【暗視(ナイトヴィジョン)】【魅了(チャーム)

【砂塵の爪甲】【魔法操作:中】【思考加速(アクセラブレイン)

瞬間移動(ワープ)】【予測の眼(ヴィジョン)】【血分体(ブラッド)

【下位従属】【魔法威力補正:中】

【魔法命中率:中】【超回復(ハイ・リカバリ)

【粘糸精製】【識字】

色素調整ピグメント・アジャストメント


残存Point:[1]


加護:なし


所持金:[6100エル(6千1百エル)


称号:【魂を鎮める者(クロムソウル)







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