80話≫〔修正版〕
よろしくお願いします。
【ロザリアSide】
「なぁ、黒髪の人は来てくれんのか?」
確かにポールの言う通りですね。
あの人はダンジョンの奥に続く階段に向かって行った。
今日中に冒険者ギルドに来るかも分からないし、
来たとしても私たちでは及びもつかない高ランク冒険者なのだろう、ギルドで接触できるかどうかも怪しい。
もしかしたら大陸に5人しか居ないと言うAランク冒険者かも…
ついこの前も魔物の討伐でロヴィスキィ村に1人来たって言う情報が酒場で流れていたし…
たしかオリエール、だったっけ…
Aランクの魔物と互角の実力なんて王国の【護国八剣】の序列八位の王子様にも迫る強さです…
まぁ他の【護国八剣】はみんなAランクの魔物も倒せるくらいの実力があると聞きますし、
それが普通の世界もあるのだと痛感します。
悔しいですが私達ではまだまだ手の届かない世界ですね…
ですが、【護国八剣】という存在が居るからこそ、常夜地帯に面する王国に住まう民は安心して暮らせるのです。
話がそれちゃいましたね、
「いや!来る!俺のスキルが叫んでる!」
「スキルが叫ぶ訳ないじゃん」
「まぁ、ギルドに居ればいずれわかるよな」
たしかカロンのスキルは【直感】。
なんか良い事あるかもー程度の効果らしいですが、
カロンの一直線な所とかはこのスキルを持っている事も関係しているようです。
そんな時です。
………………
目の前を人の行列が通りました。
「………あっ……」
エマが思わず声を出してしまいますが、
私達も関係が無い訳ではありませんのでエマの気持ちも分かります。
そう、目の前を通る人達、それは…
ーー奴隷ーー
手首と足首にあるアザが見え、
そのアザを覆う様に付けられているのは手足の自由を奪う手枷足枷。
手と足を拘束され鎖で繋がれている人達は、
盗賊の様な顔をした屈強な体躯の男達に鎖を引っ張られながら、街の中心に向けて歩いていた。
多分、何処かの奴隷商人が仕入れた奴隷なのだろう。
その中の1人にふと目がいく。
私の視線の先にはあの人によく似た黒髪を持つ少女が鎖に繋がれていた。
筋の通った鼻、ぱっちりとした瞳。
ここら辺では見ない肌の色。
そう、あの黒髪の人みたいな…
同郷なのかもしれない。
でもあの顔ならかなりの貴族がこぞって金を出すだろう。
性奴隷として。
…すごく綺麗な人…
ですが、素直にその言葉が浮かび上がりました。
「…か、かわいい……ッ…」
どうやらポールも分かってくれたようですが、見惚れた後に彼女の現状を思い出し怒りに顔を染めていました。
カロンは拳を握りしめ歯を噛み締めています。
カロンは真っ直ぐに奴隷商人を見つめます。
カロンはまっすぐな性格、悪を許す事は出来ませんが、
堪えている。その理由は私達【オルペイの竪琴】の私、ポール、エマが居るから。
カロンも自分がパーティの一員であるからぐっと堪えています。
もちろん歯向かっても今の実力では相手にならないと言うのもあるだろうけど…
カロンの目線の先の奴隷商人に目が行きます。
屈強な男達に囲まれた奴隷たちの先頭、
その馬車の窓から覗く酷く歪んだ顔は、
他の都市の貴族とも懇意にしていると言う奴隷商人。
バーチェーンドーバー
まさに悪人。
これぞ悪人。
そんな悪人の鏡の様な人物。
カロンの1番嫌いなタイプですね。
私達は黒髪の少女に少し引っ掛かりを覚えつつも、この場を後にした。
「スキルがあの少女に…
反応した……[未だ噛み合わぬ運命の歯車]……だと……?」
その時のカロンの呟きが、
やけに心にのこりました。
[未だ噛み合わぬ運命の歯車]
やはりあの女の子と黒髪の人は何か関係があるのでしょうか?
分かりません…
どうやら私達は奴隷の方に気を取られていて気がつかなかったようですが、
前をみればすぐそこまで冒険者ギルドが迫っていました。
そこで先頭を歩くカロンの足が止まりました。
何かあったのかな?奴隷商人を追いかけるんだったら止めないと…
「おい、あそこ…」
「………え?」
「ん?…どーしたのー?」
「……にゃ?」
カロンが冒険者ギルドの方を指差し、呟きました。
その指の先を見た3人は奴隷商人など頭の隅に吹き飛びましたね。
「「「いたー(にゃー)!!!」」」
ポール、エマ、私の声が見事にハモりました。
ですが無理もありません。
だってカロンが指差した先、
ギルド入り口にある松明に照らされている人。
それは命の恩人である黒髪の青年だったんですから。
その時の私達の驚き様は辺りの人達にも心臓に悪いものだったようで後々小言を頂くのですが、それはここでは話す必要の無い話。
【SideOut】
『獣人族/猫人族[lv:12]』 :【農民】/【剣士】
ロザリア
必要経験値/規定経験値:3600/1100
能力:【筋力補正:弱】【剣術補正:弱】
【食いしん坊】【俊足補正:弱】
加護:土神アンティアの加護
感想お待ちしております。




