53話【国王】
話が王国に飛びます
テンプレっぽいけど
それしかうばびまてん!
【ドヴォルザークSide】
王の気の休まる場であり時に政務に追われる厄介な場所
執務室
だが今日の彼はどちらでもない
彼の名はドヴォルザーク・ノイン・トリステイン
トリステイン王国第9代目国王であり
燃えるような赤い髪と赤い瞳を持つ精悍な顔立ちの壮年男性である
その王は現在とても喜んでいた
「報告いたします。
王国辺境グランハーツ伯爵領の西、【深淵の密林】上空にて発見された、準災害級Sランクの魔物砂塵鳥爪獣がロヴィスキィ村近郊にて討伐されました」
「それは誠かっ!?!?
本当に討伐出来たのだな!?よくやったぞ!
勲章の授与式を開かねばならんな。」
王は歳に似合わず狂喜乱舞した
何故なら長年国を脅かしてきた魔物をわしの代で倒せたのじゃからなウハハ
等々
「で、ですが被害の方が…」
「そ、そうじゃったな…もうせ。1万か?1万5千か?」
王は部下への威厳を損なわないように気を引き締めー既に遅いがー部下の報告を促した
「申し上げます…今回の討伐隊の死者は1万2千となります。
負傷者は3千、死亡した指揮官は重戦士部隊指揮官ゼントハルト・ヒュートンハイト、歩兵部隊指揮官ゴルエント・ブロンズウェイトの2名です。軽戦士部隊指揮官ローチェルド・ベールフェイト
は右腕欠損により療養中となり隊復帰は3日後となります」
「な、なんと…ゼントハルトとゴルエントが…」
王は現在とても悲しんでいた
ゼントハルト・ヒュートンハイト
その人物は帝国嫌いで有名な伯爵であったが
人望は厚く聡明な軍人であり
帝国を心から嫌い
王国を心から愛していた
その為王との親交も厚く信頼できる部下であった
軍を退いたら要職につける予定もあったほどに
そのゼントハルトが…か…
「それともう一つ…」
「なんだ?まだあるのかっ!?」
その時、執務室のドアが勢いよく叩かれた
「父上!!おりますか!?
アイゼントです!入ります!」
普段おとなしいアイゼントがここまで息を荒げて来るなどと思わなかったドヴォルザーク王は一瞬目を見開く
だが執務室に入ってきた王子を見るなり直ぐに表情を弛緩させ王子を迎え入れた
(大方、ダストファングバードを倒せたことで舞い上がっておるのかもしれぬな。まだ子供と言うことか…微笑ましいの)
「どうした。アイゼント、何かいい事があったのか?」
分かり切ったことでも話しやすくわしから聞いてやるのも良いだろう
だがアイゼント王子から放たれた言葉はドヴォルザーク王の予想とは全くもって違った
「父上!ダストファングバードを倒したのは我が軍では無い!【黒髪の英雄】だっ!」
「ぶふぉっ!?ダストファングバードを倒したのは我が軍では無いだと!?何処の国だっ!何故それを言わなかった!」
王は焦った
既に国民にはトリステイン王国の国軍が冒険者と協力し倒す事に成功したと発表し
帰還した時に凱旋をしてしまっている
これで実は他国が討伐しました
なんて言ったら周辺国や国民の笑いものになってしまい王族の権力はそこに落ちてしまう
「それが父上…その者は国を示す物をつけておらなかったのです。
しかもダストファングバードを倒した後に【深淵の密林】に入って行ってしまった事で疲労した我々も追う事が出来ず、」
【黒髪の英雄】…他国で無いとすれば冒険者か…
「なら冒険者かもしれぬな。至急冒険者ギルドに連絡しその【黒髪の英雄】とやらの身体的特徴などをギルドマスターに教えるのだ
そして我が軍の取り柄を横取りした事で罪を来せ処刑せよ」
「ハッ!」
先程報告をしていた者が下がって行く
ドヴォルザーク王は勘違いをしていた
国軍が既にダストファングバードを追い詰めていたのに
華麗にトドメだけを刺し去って行った輩だと
「待ってください父上!我々は殆どダストファングバードに手が出せない状態でした!それを【黒髪の英雄】が瞬きの間に倒したのですよ!?信じられないとは思いますが生き残った兵や指揮官に聞いて見てください!本当なのです!彼が居なければ我が軍は全滅していました!」
(な、なんと…本当にそのような者がいたのか…ありえん。だが…兵士達が見ていたのならば…)
3万の兵が叶わなかったダストファングバードを1人で仕留めるなど
常識ではありえない
それこそ御伽噺の英雄くらいだろう
(何故わしが王の時にこれほどまで忙しくなければならんのだ…)
王は愚痴を心の中だけにとどめておき
指示を出した者を直ぐに呼び戻した
そして【黒髪の英雄】を見た兵士や指揮官達に箝口令をしいた
その後日
砂塵鳥爪獣を1人で倒した
正体不明の【黒髪の英雄】の名が王国の兵達の間に広まった
兵も酒の力には勝てなかったようだ
その日、王は頭を抱えたという
そして兵達に二度目の箝口令をしいたが
真の英雄はいずれ民衆の間に広まる
そう思うと頭が痛くなった
【SideOut】
王は時代が動くのを感じた的なかんじですな




