第五十話 ウード=メリュジーヌ
「メリュジーヌ…」
やはり、そうか。
こいつ…もまたメリュジーヌ…。
最近、メリュジーヌ系多いな…。
「ハァアアアアアア!!!!」
体から染み出る赤き鮮血が、段々と浮いていく。
そして、それらが渦を巻いて回転しだす。
「我が呪印、今…解放する」
体中の鉄板が段々と外れていく。
そして
「また…蛇か、本当に蛇運いいよな・・・俺」
と、俺はつぶやく。
それを横で聞いていたシェイノは
「蛇運?」
と疑問の表情を俺に向ける。
俺は、それに対して
「蛇によく合う確率みたいな言い方で言ったんだよ」
と、少しふてくされた言い方をした。
シェイノは「ああ、納得」と言って、構える。
…何を…構えた…?
「シェイノ…?それは…」
「ボクにいつから武器がないと思っていたの?これは、ボクだけの投影武装…『ヴリトラ』よ」
その鞭にも似た形状をしたものは、シェイノが投影した武器『ヴリトラ』だという。
「ボクの『ヴリトラ』は、僕の意志とは関わらず、敵を認識すると、その方向へ攻撃を開始する」
それ、チートじゃね?
と、まあそんな事はおいておいて。
「兎にも角にも、やるぞ」
「ええ」
「言い忘れていたよ…俺の名は、ウード=メリュジーヌ…メリュジーヌの中でも下級だ…が、お前らのようなカス相手には俺で十分」
突如として、消えたと思えば、すぐ背後から風の突風が襲い…
「おせぇんだよ、カス」
いいや…お前のが遅いみたいだぜ…?
「残念!ボクのが速いんだからねっ!」
そう、そこには既に…イユちゃんがいた。
「ぐっ…」
「…ロシル先生には、この一番弟子…俊足のイユが指一本触れさせないよ!」
俺たちの背後で、速度負けしたウードが倒れ、そして手前にはイユちゃんが立っている。
イユちゃんの特技…というか、その目の能力 幽体速度 は、
その超人的な速さだけが取り柄だ。
そして、このガレーであっても、それは例外ではないという事になる。
…これは、いい助っ人を得た。
「イユちゃん、相手の行動パターンは読み切れる?」
「もーたい、ない!」
イユちゃんは言い終えると同時に、疾風の如き速さで、移動を開始した。
その移動先は、ウードの近く。
そして
「嬢ちゃん、早いねぇ…でも、俺たちメリュジーヌを甘く見ないことだよ」
「なっ…!?」
「おい…兄…」
そう、そこには…もう一人のウードがいた。