表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄対策室 〜王太子に婚約破棄されましたが、あざと可愛い弟王子に懐かれています!?〜  作者: 空丘ジル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/53

店で一番強い酒と、一番甘い果実酒

「ジェイソン・ドナパルドか?」


 モルティマーは自分の目を疑った。


 かつて共に悪事に耽った仲間だが、彼は「入婿の予定があるから」と一線を引き、あまりに凄惨なことには手を貸さなかったはずだ。


 その男が、真昼間から裏ぶれた酒場で、ひと目でそれとわかる荒くれ者たちとたむろしている。その瞳には、かつての慎重さは消え、隠しきれない陰惨な光が宿っていた。


「帰ってきちゃったんですね」

 ジェイソンは、こともなげに言った。


「ああ。……お前、随分と変わったな」

 モルティマーの言葉に、ジェイソンは愉快そうに喉を鳴らした。


「そりゃあそうですよ。お貴族様から真っ逆さま。許嫁をちょっと躾けただけで捕まって、牢獄行きだ。労働刑を終えて出てきても、帰る場所なんてどこにもない。今は、塀の中で一緒だった仲間とこうしてつるんでるってわけです」


 口では軽口を叩きながらも、ジェイソンは内心で戦慄していた。目の前の男のあまりの窶れようは、ただ事ではない。


 つい先ほど、彼が仲間とくだらない儲け話に興じていると、店に入ってきた妙な中年男が、妙な注文をした。

「店で一番強い酒と、一番甘い果実酒を。それから、クルミを十粒」

 その聞き覚えのある頼み方は、かつてモルティマーが好んでいたものだ。ジェイソンは泥酔して重くなった瞼をこすった。

 外見はどう見ても別人だ。しかし、肩肘をつき、周囲を見下す不遜な目つき――。


 躊躇する間もなく声をかけていたのは、過酷な刑を終えた後、ようやく「かつての自分」を知る者に会えた興奮からだったのかもしれない。


 モルティマーはジェイソンと、その連れの男たちを品定めするように眺めた。


(丁度いい。見るからに荒れている……金のためなら何でもやるだろう。利用してやる)


 彼は男たちの中心へ割り込むと、極上の「儲け話」があると持ちかけた。


 狙いは王城。彼は不敵な笑みを浮かべ、城内へ潜り込むための手立てを相談し始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ