店で一番強い酒と、一番甘い果実酒
「ジェイソン・ドナパルドか?」
モルティマーは自分の目を疑った。
かつて共に悪事に耽った仲間だが、彼は「入婿の予定があるから」と一線を引き、あまりに凄惨なことには手を貸さなかったはずだ。
その男が、真昼間から裏ぶれた酒場で、ひと目でそれとわかる荒くれ者たちとたむろしている。その瞳には、かつての慎重さは消え、隠しきれない陰惨な光が宿っていた。
「帰ってきちゃったんですね」
ジェイソンは、こともなげに言った。
「ああ。……お前、随分と変わったな」
モルティマーの言葉に、ジェイソンは愉快そうに喉を鳴らした。
「そりゃあそうですよ。お貴族様から真っ逆さま。許嫁をちょっと躾けただけで捕まって、牢獄行きだ。労働刑を終えて出てきても、帰る場所なんてどこにもない。今は、塀の中で一緒だった仲間とこうしてつるんでるってわけです」
口では軽口を叩きながらも、ジェイソンは内心で戦慄していた。目の前の男のあまりの窶れようは、ただ事ではない。
つい先ほど、彼が仲間とくだらない儲け話に興じていると、店に入ってきた妙な中年男が、妙な注文をした。
「店で一番強い酒と、一番甘い果実酒を。それから、クルミを十粒」
その聞き覚えのある頼み方は、かつてモルティマーが好んでいたものだ。ジェイソンは泥酔して重くなった瞼をこすった。
外見はどう見ても別人だ。しかし、肩肘をつき、周囲を見下す不遜な目つき――。
躊躇する間もなく声をかけていたのは、過酷な刑を終えた後、ようやく「かつての自分」を知る者に会えた興奮からだったのかもしれない。
モルティマーはジェイソンと、その連れの男たちを品定めするように眺めた。
(丁度いい。見るからに荒れている……金のためなら何でもやるだろう。利用してやる)
彼は男たちの中心へ割り込むと、極上の「儲け話」があると持ちかけた。
狙いは王城。彼は不敵な笑みを浮かべ、城内へ潜り込むための手立てを相談し始めた。




