表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄対策室 〜王太子に婚約破棄されましたが、あざと可愛い弟王子に懐かれています!?〜  作者: 空丘ジル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/53

大丈夫かフィン、おい!

お読みいただき、ありがとうございます。

 さて、レオである。


 彼は今、かつてない国家存亡の危機……ではなく、自らの恋心という名の猛攻にさらされていた。

 職務を遂行する鋼の自制心の裏側で、その内心は見るも無惨にあたふたしている。


 視線の先、廊下の向こうから「彼女」がやって来る。アイリス嬢だ。

 距離、約100メートル。


(いかん、逃げたい。だが近くで見たい。いやでも逃げたい……)


 脳内会議は紛糾を極めるが、身体は職務に従順だ。レオは、己の視力が鷹並みであることにこれほど感謝(と呪詛)を覚えたことはない。


(今日も綺麗だ。まとっている空気さえ、聖なる泉のように清らかだ)


 距離が縮まっていく。

 それはそうだろう。

 お互いに歩き続けているのだから。


 ああ逃げたい。

 ここでUターンしたい、でも、不審者のような振る舞いはしたくない。

 自分は職務中だ。

 そうだ、集中しろ俺。

 己の中でせめぎ合っている間に、近っ!


 アイリスがその美貌に爽やかな微笑を湛え、優雅に目礼を送る。

 レオは精一杯のポーカーフェイスで頷き返した。

(変じゃなかったか? 今の俺、変じゃなかったか!?)


 すれ違いざま、彼女の唇から鈴を転がすような声がこぼれた。

「お勤め、いつもありがとうございます」


 レオは、その場に凝固した。

 鼓膜を揺らす涼やかな声。通り過ぎた後に残る、微かな芳香。

 彼は行儀が悪いと知りつつも、その場の空気を胸いっぱいに吸い込んだ。


 この学園に配属されてから、幾人もの生徒や教師とすれ違ってきた。彼らの大半にとって、護衛騎士などは壁に飾られた甲冑と同じ。風景の一部だ。

 だが、あのアイリスが自分を「個」として認め、言葉をくれた。

 ……控えめに言って、最高だ。


「あれ、兄さん。そんなとこで何してんの?」

 我に返ると、そこは弟フィンの教室の前だった。窓越しに、不審な顔をした弟が声をかけてくる。

「いや、何でもない」

 レオが短く応じたその時だ。背後をセレナが通り過ぎた。

 途端、弟の顔がポポポポポと沸騰したかのように真っ赤に染まる。

「えっ、はっ、おい! 大丈夫かフィン、おい!」

 今度はレオが、彫像のように固まった弟の肩を掴んで激しく揺さぶった。


 ――その後。

 必死の形相の騎士が、男子生徒を肩に担ぎ、廊下を走り抜ける光景を、多くの生徒が目撃することになる。

お読みいただき、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ