同類
回数こそ減ったが、ラウラも以前のように王妃と王太子との茶会の為、王宮に招かれるようになった。
しかし一方で、王妃とイリヤとの茶会も月一で行われており──結果としてラルフが主催する、高位貴族の令嬢を集めた茶会は続いていた。
とは言え、ラルフには宰相としての仕事もある。だから主催こそラルフだが、紹介状や茶会の手配は妻であるラスティに任せていた。それ故、珍しく早く帰った彼は執務室で、女主人の仕事をしているラスティの元へと向かったのだが。
「ラスティ」
「まあ、あなた! 失礼いたしましたっ」
「構わない。それより、次の茶会の招待状についてだが……」
ノックをし、妻の返事を待って執務室に入ったラルフは、出迎えなかったことを詫びる妻に答えた。そして机の上に、書類と共に置かれた数個の蝋燭や小さな包みを見てつ、と眉を寄せた。
「何故、それがここにある」
「えっ? ……ああ。ラウラに頼まれたので、商人に取り寄せて貰いました」
ラウラのピンクブロンドや可憐な容姿は、母親であるラスティ譲りだ。ラウラの青い瞳はラルフ譲りで、光の加減で赤く見える薄茶の瞳だけがラウラとラスティの違いだ。
微笑みながら答えるラスティに、いつもなら癒されるラルフも──今だけは、更に眉を顰めた。妻は、そして自分はこの蝋燭や包みの中身が『何』かと理解しているからだ。
「……それはもう、必要ないだろう」
そう言ったラルフは、細かい話をするとラスティから『毒』だとは聞いてはいない。
しかしラスティが、屈託のない笑顔でラルフにそれらの品を渡してきたのは、過去二回で。
「王妃様の故郷に伝わる薬なんですって」
一回目は、ラルフの父に。
二回目は、ラルフの元妻に。
そんな二人に何も言わず、ラルフが包みの中身を入れた薬を飲ませるよう手配したり、蝋燭を焚いたりしていたら──二人は、それぞれ息を引き取った。だからラルフは家を継げたし、平民であるラスティを妻に出来たのである。
しかし、また誰かに──いや、今回の場合はローラン伯の養女にだろう。いくら邪魔者とは言え、毒まで盛らなくて良いだろう。
ラルフはそう思ったが、ラスティの考えは違うらしい。
「確かに、ラウラが悪いのだけれど……正直、茶会の様子を見る限り、王妃様の求める基準にラウラが達することはないですよね?」
「それは」
「自分ではどうにも出来ないことって、世の中にはあるじゃないですか? この薬は、そんな私達に力を貸してくれるものですから……今も、必要ですよ」
ラスティは、元平民で。けれど可愛らしい見た目に反して成績は優秀だったし、礼儀作法もすぐに完璧になった。そして平民だからこそ、彼女はラルフや王妃であるレミーアに親身に寄り添ってくれて──それ故、彼らに愛されて妻となり、ラルフと結ばれる前はレミーア付きの侍女として王宮で働いていた。どちらも、平民としては破格の待遇だ。
(しかし、そうか。ラスティも……そして私も、何もしなかった訳ではない)
あえて詳しく聞かなかったが、ラルフは父と元妻を排除する為に『薬』を使った。
ラスティは、彼に『薬』を与えたことで公爵夫人になった。
そして二人の間に生まれたラウラは、王太子と婚姻する為にローラン伯の養女に『薬』を使おうとしている。
平民だから貴族だから、ではない。
ラスティにもラルフにも、そしてラウラにもそれぞれに邪魔な存在がいて──躊躇するしないはともかく、彼らは己の為にその邪魔者を片づけずにはいられないのだ。
……ラルフは、そしてラスティやラウラは知らない。
邪魔者と思われた者にも意思があり、大人しくやられてばかりはいないのだと。




