表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
令嬢の復讐代行者  作者: 渡里あずま


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
41/41

因循

 屋敷に戻ったカルバは、主治医に王妃からイリヤへと贈られたものを渡した。毒物かどうか、調べさせる為である。

 中身は、焼き菓子と石鹸と頬紅だった。どれも淑女が喜ぶものだが、あいにくイリヤの中身は男性なので、調査によりそれらが刻まれたり損なわれても問題ない。

 ……しかし、その調査結果はいささか問題があった。


「全部に、辰砂が?」

「ああ。もっとも、量が思ったよりも少ないので口にしたり肌に触れたりしても、すぐに発症する訳ではないがな」


 イリヤの疑問に、カルバが答える──やれやれと言うように、肩を竦めて。


「我がリブレ国では、水銀は毒だという認識だが……エスカーダでは、少量なら薬扱いらしい。消毒や利尿効果があるとは言え、毒は毒なのに」

「……それは」

「おそらくだが、王妃の家の祖先が広めたのかもしれん。毒を盛る『口実』にするのにな」


 その言葉に、今度はイリヤが肩を竦めた。そして、出された薬湯を一口飲んだ。

 これは、万が一でも辰砂を口にした場合の下剤代わりだ。あとは、解毒剤代わりの野菜や果物を食事で摂取している。


「随分と、面の皮の厚いことだ」

「その通りだ。毒の盛り方も、巧妙だし……残念だが、これだけでは証拠にならん。何度も贈られたら、別だがな」

「……おふくろも俺も、こうやって毒を盛られたのか」


 イリヤとカルバが話していると、二人の話を聞いていたオーベルがぽつりと呟いた。確かに食べ物だけではなく、石鹸や化粧品などにまで混ぜられたら気づけないだろう。

 ……この体の持ち主である、ジャンヌのように優しい少女なら、オーベルを慰めていたかもしれない。

 だが、オーベルのことを共犯者だと思っているイリヤは。


「怖気づいたか? だったら手を引いて、国に帰るんだな」

「ト……イリヤ様!?」

「俺は残って、ジャンヌの復讐を果たす」


 単に、その気があるかどうかだ。かつての当事者なので、弱気になるなとは言わない。しかしそれで腰が引けるようなら、こちらが足を引っ張られる可能性がある。それなら、尻尾を巻いて逃げろ。それだけの話である。


「……平気です。情けないところを、お見せしました」


 そんなイリヤを真っ直ぐに見返し、キッパリとオーベルが言う。


「別に……俺も、お前の手を借りられないと困るからな」

「……ハハッ!」


 その言葉に、最初は短く答えたが──その後、本音を少し付け加えた。

 かつてカルバの養女になったことで嫉妬され、命を狙われたイリヤはその時の名残で、オーベルには着替えも風呂も手伝って貰っている。この屋敷では大丈夫だと思うが、今更他の者に代わるのは正直、面倒だ。

 だから、そう言ったイリヤにオーベルは軽く目を瞠り、次いで声を上げて笑った。


「あの女から毒の贈り物をされても、怯まずイリヤ様に渡します。ご安心を」


 そしてオーベルは、芝居がかった仕草で胸に手を当て、イリヤへと頭を下げた。

 そんな甥とイリヤを、カルバはニヤニヤと面白がるように笑って眺めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ