女王陛下と誘拐事件:第十一話:~メイド服の女王とメイド服の騎士~
フレイジア達が木こり小屋に向かい歩き始めた頃、その小屋の中では、誘拐の首謀者である海賊か山賊かという風貌で髭面の大男バルトスと鋭い目つきに尖った鼻と顎の猫背の小男マッディーが予定時間を大幅に過ぎても戻らない出っ歯の痩せ男ピルゲに業を煮やしていた。
「遅い・・・ピルゲの野郎なにしてんやがんだよぉ・・・まさか、き、金塊をパックって逃げやがったか?」
「落ち着けマッディー・・・あいつにそんな度胸ねぇよ・・・かなり尾行を気にしてやがったからなぁ・・・慎重になりすぎて遅れてるのさ・・・」
「バルトス・・・そうは、いってもよぉ・・・・そろそろよぉ・・・」
「ピルゲは、ペテンだけの男だ・・・自分じゃなにも出来ん・・・俺たちについてこなけけりゃ~って来たみたいだぜ!」
「おっ!噂をすればってかぁ・・・ん?」
「どうした?戻ってきただろ?」
「荷馬車の音がしねぇ・・・しかも気配が2人だけだ・・・・」
「たしかにな・・・しくじったか?武器を取れ・・・」
「あぁ・・・だが・・・武装した騎士や兵士って感でもねぇ・・・」
「なんでもいい・・・危険ならぶっ殺すだけだ・・・」
バルトスとマッディーは、それぞれ愛用の武器を手に取る。バルトスは、幅広のフォールションという剣を腰から下げ手に大型の無骨な戦斧を握った。ピルゲは、刃渡り20㎝ほどのダガーナイフ2本が鞘に納められ数本の小型投げナイフを携行できる皮ベルトを腰に巻き小屋の入口の扉に向かう。そして、外の気配を伺った。
「すみませ~ん!どなたかいらっしゃいますぅ~?お城のメイドですがぁ~あの~金塊を~身代金をもってきましたよ~♪」
「フレイジア様・・・ホントに言うんですね・・・・」
「だめかしら?もう、なんでもいいから小屋から出できてもらえば、殴って終わりなんだしアイギスも何か言ってみたら?可愛いメイドさんが来まししたよぉ~♪とかどう?」
「いえ・・・遠慮します。(完全に楽しんでるよこの人・・・・はぁ・・・)」
木こり小屋から少し離れたところで、フレイジアが少々ふざけた口調で小屋に向かって叫でいると警戒するように木こり小屋の扉が開き武装した大男と小男が周囲を警戒しながら小屋のウッドデッキ状の場所に立つと此方の様子を伺うように睨みつける。
どうやらVKFの気配には、気が付いていないようでウッドデッキの庇に吊り下げられた魔素灯 のランタンを点灯させてオレンジがかった黄色い光でこちらを照らしてきた。
「なんだぁ?メイド?女が二人だけか・・・おい、お前たちを馬車で運んで来た男はどうした?」
「手ぶらみてぇだがよぉ・・・ピルゲの野郎はどうしたんだぁ?金は?金塊は、どこだ?」
野太い声としゃがれた声で威圧するように疑問を投げかると小男の方が小屋のウッドデッキ部分からこちらへ階段をカッカツと降り近づいてきた。
「ピルゲ?あぁ、あの出っ歯の御者ですか?」
アイギスが、近づいてきた小男を遮るように前に歩みだし小男と1mほどの距離で向かいあう。
「あの男なら・・・」
アイギスが、そう言いかけた瞬間フヒュ!!と小男が目にも止まらぬ速さでダガーナイフを抜き放った。
その刃の軌道は、正確にアイギスの喉を狙っていた。だが、アイギスは、最小限の動きでそれを回避する。
「この服は、借りた物なのでこれ以上、汚したりしたくないのですよ・・・」
アイギスは、腕の裾を覗き込だり胸の辺りを触ったりとメイド服が切れていないか確認していた。
その仕草は、小男マッディーを挑発するかのようであった。
「てめぇ・・・・バルトス気を付けろ!こいつ只のメイドじゃね!そっちの毛ぇの長いのは、任せるぜ!!」
小男は、サッと飛びのくようにしてアイギスとの間合いを取る。
「ちっ・・・まぁ、いい。たかだか小娘二人だ。とっとと始末してズラかるのが吉てもんよ!!ふんっ!!うおらぁ!!!」
大男は、当然のように生命力溜めるように循環させるとバルコニーから凄まじい勢いで戦斧を振りかぶりフレイジアに襲いかかった。無骨な大男からは、想像できないスピード、それは、まるで巨獣の突進の様であった。
だが、フレイジアにそれを避ける様子は、一切なかった。だが、彼女の足元の地面に黄色く発光する魔法陣が魔力発動を示していた。
「・・・岩石の剛鎧 」
フレイジアがそう呟くと彼女の足元で発光する魔法陣がら土や岩石が間欠泉のようにバッ!と吹き上がりフレイジアの体に纏わりついていく。だが、そんかことお構いなしに大男バルトスは、雄たけびを上げ全身のアニマを高め全身全霊、ありったけの力で斧をフレイジアに叩き付けた。
グガァイィィィーン!!・・・鈍く大きな衝突音が静かな森に木霊して消えていく・・・・
「う・・・うわぁ!!な、なんだぁ!!放せ!!うおおおおお!!」
衝突音が消えると大男バルトスは、自身より一回りも、いや二回り以上大きい身の丈3mほどの岩の巨人 ようなものに・・・その巨人の太くゴツゴツした左の肱 のその先で自慢の戦斧ごと両腕を掴まれ宙吊状態で足をバタバタさせ暴れていた。
「な・・・なんじゃ・・・・ありゃぁ・・・・」
アイギスと対峙していた小男のマッディーが、その光景に思わず驚嘆の声を漏らす。
「よそ見している暇は、ないですよ?」
「くっ!?このぉぉぉー!!」
小男マッディーは、アイギスが距離を詰めてきたのに気が付きベルトから小型投げナイフを何本かアイギスに投げつけると体勢を直しダガーナイフを二刀流に構えフゥーと深く息を吐いた。その瞬間、まるで消えたと思わせるほどの速度でアイギスに迫り無数のダガーナイフが一瞬で襲い掛かるが如く凄まじい斬撃を浴びせた。その一撃一撃が人体の急所、腱、重要な血管を正確に狙っていた。
「くっ、スカートだと動きずらいですね・・・・」
「ズタズタにしてやんょ・・・死ねぇ!!」
必死の形相で小男マッディーがナイフを暴雨の様に突き入れる。アイギスは、動きにくいと声に漏らしたもののスカートの裾を掴み見事な体裁きでナイフを回避していた。
「・・・(狙いが正確だから避けやすいが・・・・このままだとメイド服を切られるのも時間の問題か・・・仕留める隙は、いくらでもあるのだけど・・・余り大きな動作では・・・)」
「どうしたぁ?避けるだけで精一杯かぁ?(ちっ・・・なんで掠りもしねぇんだ!!だ、だが、相手も反撃出来てねぇ!!このまま押しきってやるっ!!)」
暫く、ナイフの雨をかいくぐっていたアイギスだったが次第に小男マッディーのナイフの刺突速度が落ちてきているのに気が付いた。
「くっ・・・くそぁ!!」
「・・・(今っ!)」
アイギスの黒いニーハイソックスに包まれた長くスラッとした足がナイフの雨の中をビシュッ!!と突き通すような蹴りとなり放たれた。
それは、小男マッディーの首を真正面から捉え、まるで履いている黒いパンプスを穂先とした黒い騎槍が小男の喉笛を貫いたようであった。
「ガッ!?・・・ぐげぇ・・・・」
突然の激痛と共に気道が潰れ呼吸もままならなくった小男マッディーは、ダガーナイフを放るように落とし両手で首を抑えて苦悶の表情で膝を付く。そんな小男マッディーこめかみに黒い騎槍は、漆黒の鞭へと豹変し容赦なく打ち付けられスパァーン!と乾いた音と共にその意識を一瞬で刈り取ってしまった。
「アイギスの方は、終わったようね・・・」
「うぐがぁぁ!!なんなんだ!!てめぇ!!はなぜぇ!!!ぐぞぉぉ!!!」
岩の巨人の胸部に肩から上を露出さてめり込むよう埋まっているレイジアは、ゴーレムの左手に喚いて暴れる大男バルトスをぶら下げたままアイギスと小男マッディーの決着を眺めていた。
「煩いわね・・・さて、こちらも終わらせましょうか。」
「なっ!?ぬがぁ!・・・・ぐべっ!?」
フレジアは、ゴーレムの左手でヒョイッ!と大男バルトスを空中へ軽々放り投げるとゴーレムの右手をハンマーの様にブンッ!振り下ろしビタァーン!!と宙に舞っていた大男バルトスを羽虫の如く地面に叩き落とした。
「すこし、加減を間違ったかしら。」
地面に顔面から大の字で墜落し、時折小刻みにピクピク痙攣する大男バルトスを見下ろしながら呟いたフレイジアは、岩石の重鎧を解除した。岩の巨人は、全身にヒビが入り細かな砂粒となって崩れて消えていく。そのゴーレムの体内に格納されていたフレイジアは、身体が露出すると風化して崩壊する土塊からストッ!と地面に飛び降りた。
「アイギス、思ってたより手間取っていたようだけど・・・怪我は?」
「はい。大丈夫です。メイド服が思ったより動き難くて、それと下手に動くと服を切り裂かれそうで慎重になってしましたした・・・」
「貴女、メイド服を庇って戦ってたの?・・・あきれた・・・」
「貸して頂いたものですし・・・フレイジア様こそお怪我は無いですか?」
「岩石の剛鎧 の重防形態よ。ギガンティス級の魔獣の一撃にだって余裕で耐えるわ。」
「へぇ・・・しかし凄いですねぇ。・・・岩に埋まってたのにメイド服が全く汚れないなんて・・・」
「そこ!?・・・そういう細かいとこ気にしちゃだめよ・・・」




