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異界の旅~無職の私と神様の異世界生活  作者: V-CO
第一章 名実ともに異世界の旅

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1/8

プロローグ :『突然異世界に転送された』

「さて、今からお前の到着を祝うべきか、それともお前の死を惜しむべきか」


 奇妙な物質で構成された部屋の中で、目の前にいる人物がそう言った。


 それと同時に、この人物の前にはもう一人立っていた。


 それ以外に部屋にあるのは、先ほど口を開いた人物の周りにある机や椅子、本棚などの家具だった。そして先ほど話していた人物は机の前に立っていた。


 その声は男性のように聞こえた。フードをかぶり、マントを羽織り、神官服を身に着けている。現代で言えば教会の信者といったところだろう。顔ははっきり見えないが、体格は完璧で、おそらく古典的ながっしりとした体型で、精悍で引き締まっている。


 彼の向かいに立っているのは一人の女生徒だった。ふわふわした黒色のフード付きロングシャツとジーンズを着て、黒い短い髪と琥珀色の瞳をしている。彼女は今、慎重に周囲を観察していた。


「山崎夏奈、残念だが、ここに来たということは、お前は元の世界で既に死亡しているということだ。」


 机の前に立った男が口を開いた。


 そして男の前に立つ夏奈は、信じられないという表情を浮かべた。


 自分がもう死んでしまったとは信じたくなかったが、事実は目の前にあった。見知らぬ場所、見知らぬ人物、どう見ても自分のいた世界の情景ではなかった。


 そして夏奈はその前にあったことを思い出した——



 ※



 高校生である夏奈は、弟を養い、自分の学費を稼ぐためにコンビニでアルバイトを選んだ。


 数年前の事故で夏奈は両親を失い、それ以来、自分より一つ下の弟と二人で暮らし、自分が家計を担うようになった。


 弟は数ヶ月前に学校を辞めて、家で漫画家や小説家を目指していた。外からは廃人とかニートとか言われていたが、夏奈は気にしていなかった。


 その日、夏奈は残業で忙しく、遅くまで働いていた。


 荷物を整理して帰宅途中、突然男に絡まれ、わけもわからず人質にされてしまった。


 必死に抵抗したが、力の差で押さえつけられてしまった。


 そして夏奈の抵抗行動は男をさらに怒らせ、ポケットからナイフを取り出して夏奈に向かって刺した。


 その後、白い光が走った——



 そして……



「おい、いつまでぼんやりしてるんだ?」


 男が突然夏奈に言った。


 声は大きくはなかったが、夏奈はびくっとした。


 目の前の男を見て、夏奈は言葉にできない奇妙な感覚を覚え、目には警戒心が満ちていた。


「あ、あなたは……女神様ですか?」


 夏奈は弟の作品の中で、女神が自分を異世界に連れて行くという似たような場面を見たことがあった。以前は面白いと思っていたが、今自分が体験してみると緊張してしまった。



「は? お前のどの目に俺が女神に見えるんだ? 胸があるように見えるか? それとも声が可愛いか?」


 夏奈の問いかけに、男は明らかに驚いた様子だった。


 夏奈は依然として警戒した目で男を見つめていたが、見つめられている男は逆に気にしない様子だった。


「わ、私……死んじゃったの……?」


 自分の手を見て、自分の顔を触る。すべてが非常にリアルだが、周りの感覚はまるで夢の中にいるようだった。


 あまりにも突然すぎて、夏奈は信じられなかった。



「ご覧の通り、お前はもうここに来ている。それだけでお前の状況が十分に説明できているだろう。」


 男は手を広げ、少し苛立っているように見えた。



 この人、どうなってるんだ。この奇妙な場所はいったいどこなんだ。


 夏奈は頭が混乱した。



「あなたが誰だか分かりませんが、いくつか質問してもいいですか?」


 男はうなずき、夏奈の質問を許可した。


「俺の知っている範囲なら、答えることができる。」


「私が元の世界で死んだ後、何が起こったんですか?」


 これは夏奈が一番知りたい質問だった。


 夏奈はこの世界に来てから、現実世界で自分が死んだ後に何が起こったのか分からなかった。


「知らん。お前の後のことは見えない。別の質問にしてくれ。」


 なんだその答えは。


 男は首を振り、自分の考えを示した。


 夏奈は悔しかったが、この質問は諦めるしかなかった。



「じゃあ、ここはどこで、あなたは誰なんですか?」


 直接聞くのは失礼かもしれないが、今の状況では、はっきり聞いた方が不要な問題を解決できるかもしれない。


「ここはお前たちが天国と呼ぶ場所ではない。お前たちの理解とは少し違うかもしれない。もちろん、どうしても天国だと思いたいのであればそれでも構わない。ただし、夢のように素晴らしい生活があるわけではないがな。ここはどちらかと言えば中継所のようなもので、お前のような死者を別の場所に送ったり、生まれ変わらせたりするためにある。」


 失礼すぎるだろ。私が死者だなんて言うなんて。もう死んじゃったけど……


 夏奈は何かを言いかけようとしたが、反論の余地がないことに気づいた。


「俺はお前たちのような人間を専門に扱っている。できれば、私のことをきちんと神様と呼んでほしい。」


 なんだその奇妙な要求は?


 こんな場所にいる人物が、どう見ても普通の人には見えないが、なぜこんな要求をするのだろう。


「なぜそう言うんですか?」


「お前の前に数人来ているんだ。俺が引き継いでから今までに十数人くらいだろうか。最初は簡単なことだと思っていたが、さんざん罵られた。」


 男の口調は無力感に満ちていた。長年働くサラリーマンが家に帰っても家族に理解されないような、そんな感じだった。


「ここに来る者のほとんどは、様々な死に方をした若者たちだ。彼らは俺を見て死神だと思い、指をさして、人殺しだ、凶悪犯だと言う。まあ、そういう連中はさっさと別の家庭に生まれ変わらせることにしている。彼らと議論しても意味がないからな。」



 …… … … …



「……それは、本当にお疲れ様ですね。」


「そうなんだよ。俺は一応神様なのに、自分にまったく当てはまらない罪を着せられている。」


 無力なため息が聞こえてきた。


 しかし男はすぐに気持ちを切り替え、手を叩いた。


「それで、どうする? 元の世界の別の家庭に生まれ変わるか、それとも異世界に行って新しい生活を始めるか?」


 本当にどちらかを選ばなきゃいけないの……


 よく考えてみよう。別の世界に生まれ変わるとしても、どんな結果になるか分からない。彼の話では、どんな家庭かは保証できないと言っていた。もし貧しくて何もない家庭だったら、異世界に行く方がましだ。でも異世界に行けば、もっと自分の知らないことがたくさんある。


 うーん……選ぶのが難しい。


「あの、神様。戻るっていう選択はできませんか?」


 夏奈はためらいながら手を挙げて尋ねた。


「戻る? 何を言ってるんだ。もう言っただろう、お前はもう死んだんだ。今ある選択肢は二つだけだ。生まれ変わるか、異世界に行くかだ。」


 神様は夏奈の純真な発言に、少し呆れた様子だった。


 確かに、もう死んでしまったのだから、戻るチャンスはない。戻れるなら、先に来た数人をとっくに戻して、運を天に任せているだろう。


 夏奈はしばらく考え込み、心の中で選択をしていた。


 異世界……現実世界……



「あの、元の世界に生まれ変わることと異世界に行くことの二つの選択肢について、詳しく説明してもらえますか?」


 こういうことはしっかり計画しなければならない。一度間違えれば、取り返しがつかない。


「元の世界に生まれ変わるというのは、文字通りの意味だ。お前は元の世界に戻ることになる。ただし別の家庭にな。家庭の状況については保証できない。すごく貧しいかもしれないし、壁も何もないような家かもしれない。すごく裕福で、莫大な財産があるかもしれない。異世界については、あまりお勧めしない。あの場所で死ぬのは、お前たちの元の世界で死ぬよりももっと辛いからな。つまり、今一番良い選択は生まれ変わることだ。お前には半分の確率で良い生活を送れるチャンスがある。もし異世界を選んだら、おそらく苦しい生活を送ることになるだろう。」


 どちらの選択もあまり良くなさそうだ。


「教えておくが、俺はあの世界から来たんだ。あの場所はある程度の能力がないと簡単に死んでしまう。お前の元の世界での死に方よりももっと悲惨な死に方をすることになるかもしれない。だから異世界はお勧めしない。どうしても選ぶというなら止めないが、自分の選択をしっかり見極めてほしい。」


 なんだかすごく脅されているように聞こえる。


 よく考えてみると、元の世界での生活はなかなか良い方だった。大変だったが、それでも未来への期待はあった。


 しかし人生をやり直すとなると、また十年以上を過ごすことになる。しかも良い生活を送れるかどうかもわからない。


 一方、異世界は違う。今の体と記憶を持ったまま、誰も自分を知らない場所で新しい生活を始められる。こちらの方が良さそうに聞こえる。



「……私が死んだら、私の家族は守ってもらえるんですか?」


「厳密に言うと、それは俺の仕事の範囲内ではない。まあ、お前の態度は悪くないから、考慮はする。ただし、あまり多くは干渉できない。お前の家族を裕福にすることはできないから、あまり期待しないでくれ。」


 どうやら自分が死んだ後も、弟は生きていけるようだ。


 その時、夏奈はほっと息をつき、心の中で決心を固めた。


 ただし前提がある——


「もし異世界に行くと決めたら、何か準備が必要ですか?」


「どうやら選んだようだな。異世界に行くなら、命を守る手段があった方がいい。言葉の心配はしなくていい。あの世界に行けばすぐに覚えられるし、後遺症もない。」


 神様は振り返り、本棚からいくつかの物を取り出した。


 手にしたものをよく見ると、特別な印のついた巻物が数枚だった。


「受け取れ。異世界に行くことを選んだなら、幸運を祈る。これらの巻物は必要な時に命を救ってくれるだろう。ただし、使える時にちゃんと使えることを願うよ。使わずに死んでしまわないように。」


 夏奈は手にした巻物を見て、少し戸惑った。


 強い能力や装備などを自分で選べるのではないのか?


 これらの奇妙な巻物は何なんだ。


「聞きたいことは分かっている。なぜ自分で選べる装備や能力がないのか、だろう? もしお前に選ばせたら、俺自身も選択肢の一つになりかねない。そういう事態を防ぐために、俺は自分で選ばせないことにしている。」


 … …


「前にそういうことがあったからな。慎重になっているんだ。お前たちがあの世界で生きていけるだけで十分だ。世界を救うとか——」


 神様は夏奈を上から下まで観察した。


 そんな目で私を見て、この人何をするつもりだ。


 夏奈は見られて落ち着かなくなり、自分の体を手で守った。


「——世界を救うのは、お前の体では無理だろう。少なくともお前にそんな能力はない。」


 どうやらこの人が罵られるのにも理由があるようだ。


 この次から次へと続く打撃はどういうことなんだ——


 一瞬、本当にこの男を殴りたくなった。


「準備ができたなら、今からお前を異世界に転送する。良い生活を送れることを願っている。」


 そう言うと、神様は手を差し伸べた。


 そして夏奈の足元にも白い輪が現れた。どうやら魔法陣のようだ。


 ただ、この魔法陣は驚くほど大きかった。


 ここ全体を囲めるほどの大きさだった。


「あの、神様。この魔法陣、本当に大丈夫なんですか?」


「うん、大丈夫だ。」


 どう見ても問題があるようにしか見えない。


 魔法陣の範囲は明らかに自分と目の前の神様を一緒に連れて行けるほどの大きさだったが、神様は相変わらず気にしない様子だった。


「いやいや、もう一度よく見てください。本当に大丈夫なんですか?」


 足元の驚くほど大きな魔法陣を見て、夏奈は心配になった。


 しかし神様は夏奈を少し面倒そうに見つめた。


「ただ大げさに見えるだけだ。うん、きっとそうだ。ただ大げさに見えるだけだ。」


 やっぱりあなたも本当に大丈夫かどうか確信が持てないんですね。


「ちょっと止めてもらいませんか。もし——」


 夏奈が前に動こうとした。


「バカ、動くな——」


 足元の白い光がさらに強くなり、一瞬目がくらんで何も見えなくなった。


「わああ、どうなってるんですか?」


「このバカ、やばい……」


 瞬く間に、さっきまでここにいた二人は跡形もなく消え去った。

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