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猫可愛がりしていたら、喰われました。  作者: 不知火螢


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35

 ミハエル様と応接室を出ると、侍女や護衛たちがハラハラしながら待っていた。私たちが手を繋いでるのを見て、皆が一様にホッとしていたのを見ると、一体どれだけ心配をかけたのだろうか、と少し申し訳なくなる。

 この一年、ミハエル様は毎日のようにここに来ていたらしいので、タウンハウスの使用人たちはむしろ、私よりもミハエル様のことを心配していたようにみえる。


 ちょっと気まずかったので、私はへへっと照れ笑いで誤魔化したのだが、ミハエル様はなぜか満足げに笑っていた。


「ヴィルは?」

「執務室でお待ちです」


 ミハエル様の言葉に私の侍女が答え、そのまま二人で兄上の元へと向かう。

 家族として報告ももちろんあるが、結婚となると個人の感情だけで終わる問題ではない。とくにミハエル様と私の結婚となると、過言ではなく、現在の中央政治の勢力図を塗り替えることとなる。

 本当は当主である父上に真っ先に報告すべきではあるのだが、領地にいる父上よりも、同じ敷地内にいる継嗣である兄上に先に報告で問題ないだろう。


「ヴィル、入るよ」


 兄上の返事を待つことなく、ミハエル様が扉を開ける。まるでそれがいつものやり取りなのか、兄上も特に何も言うことない。

 兄上が侍従に何事か声をかけると、すぐに侍従は部屋を出て、代わりにメイドがお茶を手に入ってきた。

 もしや兄上、私たちが来たらすぐに本題に入れるように準備してた……? 兄上のことだから、してたな、うん。


 二人掛けのカウチに私たち、角を挟んだ対面の一人掛けに兄上が座り、すぐにメイドがお茶を用意する。

 兄上になんて切り出そうかな、と悩んでると、ミハエル様が「ラヴィが頷いてくれた」と端的に兄上に報告した。


「そうか。まぁ、そうだろうな。ラヴィニアが決断したならそれでいい。とりあえず、これからすることを考える前に……あぁ、きたな」


 現在進行形で私はミハエル様の婚約者なので、このまま結婚の準備を進めるとしても、その準備がまたいろいろ大変なのだろう、ということはふんわりと理解している。

 とはいうものの、実際に何をするのかは知らない。だって、本当に結婚するとは思ってなかったから!


 まず、何をするか、どれくらいかかるのか。そんなことも知らないのだ。白いドレスを着て結婚式をするくらいは知っているけれど、本当にその程度なのだ。


 そんなことを密かに考えていると控えめなノック音が聞こえ、兄上が入室を許可すると、リートとリンデを連れた乳母たちが入室してきた。


「まだ眠っていなかったの?」

「はい、初めての場所なので、興奮状態なのかと……」


 立ち上がり、二人の乳母の元へと近寄ると、確かに二人とも、目は爛々としている。まだそれほど自我は目覚めていないはずなのに、二人とも不思議なことに兄上とミハエル様を交互に見つめて、小さな腕を伸ばしていた。


「んー、この前宿に泊まったときは、そんなことなかったんだけど……あ、ミハエル様、この子達がジークフリートと、ジークリンデです」

「この子達が、リートと、リンデ……僕が抱っこしても、大丈夫かな」

「もちろんです」


 ミハエル様も近くにやってきたので、乳母からリートを受け取ってから、ミハエル様の腕に渡す。

 ミハエル様は慣れないながらも、何も言われずともまだ座っていない首にしっかり手を添えて抱っこしている。抱っこされた張本人であるリートは、じーっとミハエル様を見つめている。


「リート、もしかして、お父さんが分かってるの?」

「あぅー……」


 まさかねー、なんて思いながらもリートに声をかけると、まるでこちらの言葉を理解してるかのようなタイミングでリートが声を上げた。

 リンデは兄上に抱っこされているが、視線はミハエル様に向いている。


 ……あれぇー? 三ヶ月って、こんなに父親わかるもの?? そうなの???


「リート……僕の、息子……」


 わたわたとしながらも抱っこしていたミハエル様だけど、もしかしたら、急に実感したのかもしれない。

 腕の中の重さ、暖かさ、小さな命が、自分の子供なのだ、と。


「……本当に、僕と同じ色だね。ヴィルが抱っこしている子が、僕の娘のリンデ……リンデも、僕と同じ色だね」

「親子ですからね」

「親子……」


 ミハエル様の声はとても弱々しく、それでいて、感情を押し殺しているように聞こえた。

 ミハエル様にとって、血縁と言えるのは父親である陛下くらいだ。現王妃は間違いなく他人だし、異母兄である第一王子と第二王子も、父親が同じなだけの他人なのだろう。

 私たちオルトマン家の人間を家族と思ってくれているのは知っているが、残念ながら、私たちは血縁と言えるほどの近しい関係ではない。

 一応、私とミハエル様ははとこの間柄ではあるが、一般的にはとこはあまり血縁者、というイメージはない。とくにミハエル様は、オルトマン家からお嫁に行かされた大叔母様の娘、が更に嫁がれた先の王家で生まれた人なので、事実として血縁関係はあっても、血縁者という認識はとても薄いのだ。


 しかし、リートとリンデは、間違いなくミハエル様の血縁、息子と娘である。誰が見ても、一目で親子だと思うだろう。

 泣きそうなミハエル様の腕に手を添えると、ミハエル様はうつむいて、リートを大事な宝物のように優しく、それでいて力強く抱きしめた。

 


 

 

 

いつもお読みくださりありがとうございます。

今話にて一部完とし、一度連載を休止します。


ノープロットノーストックノリオンリーの話に、ここまでお付き合いくださりありがとうございました。

ノープロットすぎて途中予想外の展開になりましたが、ここまで読んでくださった皆様には感謝しかありません。各話で頂けたリアクション、とても励みとなっておりました。


二部はある程度の話数を書き溜めてから再開しようと思います。

再開まで、普段閉じている感想欄を解放します。何か一言頂けましたら幸いです。

また、ブクマ、★評価していただけたら嬉しいです。


それでは、二部再開まで、しばしお待ちください。

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