最終話:イリの巫女
森猫族の里。
植物も地面も建物も、全てが白いけれど、少しも寒くない地域。
里から出れば氷点下40℃の森があるものの、里の中の気候は温暖で半袖で過ごせるほど。
「ユウナリアを再び巫女として召し上げて下さるのですね」
「彼女は五百年間ずっと、イリの神様の復活を祈り続けていたのですよ」
「きっと誰よりも支えになれると思います」
白い女性たちが、目をウルウルさせながら喜んでいる。
俺の隣に立つ少女は、頬を赤らめて俯いていた。
(まるで、娘を嫁に出すお母さんたちみたいだなぁ……)
俺は笑顔で対応しつつ、そんなことを思う。
ユウナリアと同じ白い髪と猫耳と尻尾の女性たちは、それぞれお祝いにお菓子をくれた。
「どうぞ、お供え物でございます」
「めでたい日ですので、ケーキを焼いたんですよ」
「私はクッキーを焼きました」
神様へのお供え物って、神社とか神棚に置くイメージがあるけれど。
森猫族はイリの神に会うことが多かったそうで、直接渡す風習らしい。
山ほど供物(土産)を貰って、俺はユウナリアを連れて自宅へ空間移動した。
◇◆◇◆◇
神の島、自宅。
ユガフ様の許可を得て、ユウナリアを連れて来た。
居間に入った途端、初めて見る人に驚いた仔猫たちが一斉に【やんのかポーズ】する。
「シャーツ!」
「はいはいルナ、落ち着いて」
「アーオゥ!」
「ソル、吠えないで」
「ウゥ~……」
「ステラ、唸らない」
「……」
「ルクス、逃げなくていいから」
それはもう大騒ぎだ。
母猫ルカはといえば、影も形もないくらい隠れてしまっている。
「ほっほっほ。じきに慣れるじゃろ」
「小さな神様がいっぱい……」
「あ、この子たちは猫という異世界の生き物で、神ではないよ」
ユガフ様は笑いながらソファでお腹出して寝そべっていた。
猫を知らないユウナリアは神様と間違えている。
俺は仔猫たちが異世界の動物であることを教えてあげた。
【イリの巫女】は、イリの神の側仕えであり、邪神襲来時には神力を高めるサポート役になるらしい。
そのため邪神の眷属に狙われやすく、五百年前の戦いではイリの神と離れた隙に襲われたこともあるという。
今回も狙われる可能性があるので、神の島で保護することになった。
「ここが客室。今日からユウナリアの部屋だよ」
「ありがとうございます」
ユウナリアの自宅から、彼女が使う物は全て運んで客室に置いた。
ベッドや家具はもともとあるので、こっちを使ってもらう。
ユウナリアが持ってきたのは着替えとお気に入りの食器や使い慣れた鍋の類で、女性なら持ってそうな化粧品は無かった。
「森猫族は、化粧をする習慣が無いんですよ」
「化粧とかお肌の手入れとかせずに、そんなに綺麗なのか。地球の女性たちが聞いたら羨ましがるよ」
何気なく言ったら、ユウナリアの白い頬がポッと赤くなる。
その頬は滑らかで、シミ1つ無かった。
地球なら、あんな白一色の場所にいたら紫外線で日焼けやシミができそうだけど。
この世界には、メラニンや紫外線やらは無いのだろうか?
「多分、村の井戸に湧く水のおかげですね。井戸の水で顔を洗ったり、お風呂に入ったら肌が綺麗になったと聖女様が言ってましたから」
「なるほど」
森猫族の里には、美肌効果のある井戸水があるらしい。
美を求める人々が殺到しないのは、氷点下40℃の森に囲まれてるおかげかな?
挿絵代わりの画像は作者の保護猫たちです。
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