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猫神様のペット可物件【完結・猫画像あり】  作者: BIRD


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第117話:五百年ぶりの再会

 エスト国の王都サントル。

 セーヤと家族が暮らす庭付き戸建ての玄関前。

 ユウナリアのダイニングからセーヤの家(門前)まで繋げた異空間トンネルの中。


「……まさかセーヤが本物だったとは……全然気付かなかったよ」


 俺は大きな溜息をついた。

 いつまで続くか分からない神様代理のお仕事。

 普通の人間の俺には荷が重くて、早く本物出てきて交代してくれと何度思ったかしれない。


「セーヤ様は、どんな方なのですか?」

「俺が見た限りでは普通の人間、冒険者としては実績のあるBクラス、性格は真面目で誠実な人だよ」


 ユウナリアはセーヤのことを知りたくてソワソワしている。

 俺は簡単に説明した後、変身魔法で自分の容姿をセーヤに似せた。

 といっても、髪と猫耳と尻尾を黒色から銀色に変えて、目の色を金色から銀灰色に変えた程度だけど。


「容姿は、こんな感じ」

「……!」


 その姿を見た途端、ユウナリアは驚いたように目を見開き、続いて懐かしそうに微笑みながら涙を流した。

 いきなりセーヤに逢わせなくて正解だ。

 セーヤの容姿は、イリの神が人化したときの姿と同じ。

 それは、先代のイリの神とも同一のものだった。


「そのお姿、先代のイリ様がお忍びで街へ出かけたときと同じです。……セーヤ様は、そのお姿でいらっしゃるのですね……」


 ポロポロと涙を零しながら、ユウナリアが微笑む。


「泣かずに、対面できる?」

「はい。泣くのは今だけにします」


 俺はちょっと心配になって聞いてみた。

 彼女は細くて白い指先で涙を拭うと、溢れそうになる感情を抑えて表情を引き締める。


「じゃあ、そろそろ行こうか。俺はこの世界ではクルスと名乗っているから、そう呼んでもらえるかな?」

「はい。クルス様とお呼びしますね」

「神の代理だということを知っている人間はユウナリアだけ。他の人は『異空間魔法を持ち、渡し屋の仕事をしている平民』としか知らない。勿論セーヤも知らないから、話を合わせてほしい」

「分かりました」


 俺はユウナリアに自分の呼称と身分について説明した。

 ユウナリアは少し緊張しながら話を聞いている。


「君のことは『渡し屋の依頼人』ということにしておこう。依頼内容を聞かれることはないから、それで充分だと思うよ」


 話しながら容姿を黒猫獣人に戻すと、俺は異空間トンネル出口の扉を開いた。



 日の出前、空が白み始める頃。

 この世界の住人たちが、仕事を終えて帰宅する時間帯だ。


「はーい、どなたですか?」

「クルスだよ。仕事で王都に来たついでに寄ってみたんだ」


 異空間トンネルから出てセーヤの家の門をくぐり、玄関の扉をノックするとすぐに内側から声がした。

 俺が名乗ると、扉を開けて出てきたのはセーヤ。

 ちょうど帰宅したばかりなのか、セーヤは仕事着のままだった。


「やあクルス……あれ? その人は?」

「俺の依頼人のユウナリアさんだよ」

「あ、どうもはじめまして。冒険者のセーヤです」

「はじめまして。ユウナリアと申します」


 セーヤはユウナリアを見ても初対面の反応だ。

 紹介しながらユウナリアを見ると、彼女も初対面の相手に対するように微笑んで挨拶をした。

 五百年ぶりの再会にしては、それは随分とよそよそしいけれど。

 セーヤに前世の記憶が無いなら、しょうがない。


「お時間あればお茶でもいかがですか? 自家製シトロネルのお茶はオススメですよ」

「お茶を頂いてもよろしいのですか?」

「どうぞどうぞ。ほら、クルスも中に入って」

「セーヤお前、さり気なく商品宣伝してるだろ」


 冒険者というより商人みたいなセーヤの話しぶりに、俺は苦笑した。

 セーヤの家に隣接する店には、調合した薬の他に庭で栽培したハーブのお茶も販売している。

 シトロネルは細長い葉の植物で、葉を揉んだり刻んだりするとレモンに似た爽やかな香りがするハーブだ。


「どうぞ。蜂蜜を入れても美味しいですよ」

「ありがとうございます」


 セーヤの自宅居間。

 ソファに腰かけると、しばらくして湯気の立つカップがテーブルに置かれた。


「よかったらこれを入れてみますか? ウッカリ死んでも生き返れますよ」

「ちょ! クルスっ! そんなお手軽そうに超希少アイテムを出すなよ」


 ユウナリアはちょっと緊張している様子。

 俺はユウナリアの気持ちをほぐす為に、冗談交じりで言いながら小瓶をテーブルに置いた。

 向かいの席に座るセーヤが、中身を察してツッコミを入れてくる。

 小瓶の中身は、セーヤの予想通り、世界樹の花蜜だ。


「懐かしい香り……。五百年前は、この蜜をよく頂いていたんですよ」

「五百年前……。ということは、ユウナリアさんはやはり森猫族ですか?」

「そうです。でも、年齢は聞かないで下さいね」


 ユウナリアは普通の蜂蜜を扱うように小瓶を取り、お茶が入ったカップに中身を少量垂らす。

 薔薇に似た甘い香りが、室内に広がった。


「森猫族の方々は精霊の血を引いていて、千年や二千年の時を生きると聞いています。滅多に会えない方とお話できて光栄です」

「そんな、ちょっと長生きなだけで、普通の人間と変わりませんよ」


 セーヤが笑顔で言う。

 現実世界でいうと、芸能人を見た一般人みたいな心理だろうか?

 対するユウナリアは穏やかに微笑んでいる。


 っていうかセーヤ、お前は前世で何度も会ってるだろ。


 ツッコミたい気持ちを抑えながら、俺は2人のやりとりを眺めていた。


挿絵(By みてみん)

挿絵代わりの画像は作者の保護猫たちです。

閲覧やイイネで入る収益は、保護猫たちのために使います。

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