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猫神様のペット可物件【完結・猫画像あり】  作者: BIRD


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第116話:神力のリングとユガフ様

「とりあえずこれは俺が預かって、ユガフ様にどうすればいいか聞いた方がいいな」


 先代イリの神が邪神襲来に備えて遺したリング。

 それはライオンサイズの銀猫に合わせたらしく、獣人姿の俺には大き過ぎる。

 俺はリングには触れずに、異空間倉庫に箱を収納した。


「またここへ来るから、もう無茶するなよ」

「はい、あの……」


 ソファから立ち上がり、異空間トンネルを開いて帰りかける俺に、ユウナリアが何か言いかけて口籠る。

 何か知りたいことがありそうな、そんな雰囲気。

 俺はそれが何か察した。


「ついでに、本物のイリの神が今どこで何してるのか、聞いてこようか?」

「お、お願いします!」


 提案してみたら即答だ。

 ユウナリアは、どんな情報でもいいから現世のイリの神について知りたいらしい。


「じゃあ、ちょっと聞……」

「それには及ばぬよ」

「「?!」」


 俺が言いかけたところで、いきなり異空間トンネルから巨大茶トラ猫が出てきた。

 ユガフ様が俺の出先に現れるなんて初めてだ。

 この白い里は、やはり聖地と同じなのかもしれない。

 ……それはともかく、俺を踏み倒した上に座るのやめて。


「イリの巫女よ、久しぶりじゃのぅ」

「ユガフ様、五百年ぶりでございます」


 穏やかに目を細めて言うユガフ様の前で、ユウナリアは跪いて祈るように両手を組む。

 イリの巫女って何だろう?

 巫女というからには神様に仕える職業かな?

 俺はユガフ様に踏み敷かれながら話を聞いていた。


「現世のイリについて知りたいか?」


 問いかけるユガフ様の眼差しに、僅かに愁いが感じられる。

 普段の飄々とした表情と違うのは、イリの神が覚醒しない以外の何かがあるんだろうか?


「はい。どのようなことでも構いません」


 ユウナリアは既に、聞く覚悟ができていた。

 何も知らないよりは、知っていたい。

 彼女の真剣な表情から、そんな思いが感じられる。


「現世のイリはのぅ、人として生まれ育ち、神であることに気付かず家族と共に暮らしておる」

「先代のイリ様が『次代は前世の記憶が戻らないかもしれない』と言っておられました」

「うむ。自らの魂のことゆえ、多少は未来が視えたのであろう」


 ユウナリアは神妙な顔でユガフ様と話している。

 今までは前世の記憶を取り戻していたイリの神が、前世を思い出せない原因は何だろう?

 先代はどこまで未来が視えていたんだろうか?


「お会いすることはできませんか? 離れたところからお姿を見るだけでもいいのですが……」

「前世について其方が教えることは禁ずる。それでもよいか?」

「はい。何も伝えません」

「其方にとっては辛い現実を見るかもしれぬ。それに耐えられるか?」

「はい。耐えてみせます」


 ユガフ様は、念入りにユウナリアに確認する。

 ユウナリアは表情を引き締めて頷き続けた。


「ふむ。そこまで覚悟ができておるなら、逢わせてもよいじゃろう」

「ありがとうございます!」


 遂にユガフ様が承諾してくれた。

 ユウナリアが安堵と喜びの混ざった笑みを浮かべる。


(……良かったなユウナリア、これでようやく本物のところへ連れてってもらえるね……)


 俺はユガフ様に踏まれたまま、ホッとしつつそんなことを思っていた。

 この世界のどこかに、普通の人間(獣人)として暮らす神がいる。

 かつてその神に仕えた巫女は、どんな思いでそれを見つめるのだろう?


「イリの神の転生者なら、聖夜が自宅を知っておるゆえ、案内してもらうがよかろう」


 ……んっ?!


 ユガフ様、俺は本物とは面識ないと思うよ?


「む? 聖夜はどこじゃ?」

「……さっきから下にいるよ」


 ようやく俺が視界にいないことに気付いたユガフ様が、キョロキョロと探し始める。

 敷物にされてる俺は、ツッコミを入れてあげた。


「ん? 何故足元におるのじゃ?」

「ユガフ様がいきなり出てきて踏み倒したんだけど……」


 ようやくどいてくれたユガフ様が、天然な様子で問う。

 起き上がった俺は、半目でツッコミを入れた。

 ユウナリアはユガフ様と俺のコントみたいなやりとりを、キョトンとしながら眺めている。


「おぉスマンスマン、うっかりしておった」

「っていうかユガフ様、俺はイリの神の転生者を知らないよ?」


 さっきまでのシリアスな雰囲気はどこへやら。

 普段のノンビリおじいちゃんに戻ったユガフ様に、俺は重要なことを告げる。

 神々の諸島(アケト・マヌ)に住む他の神々なら知ってるが、イリの神の転生者には逢ったことが無い。

 自宅を知っているわけがなかった。


「なんじゃ聖夜、まだ気付いておらぬのか」

「え? 何に?」

「イリの神の転生者は、冒険者のセーヤじゃよ」

「……え? えぇぇっ?!」


 まさか、セーヤが本物のイリの神だったとは。

 西島にも来たし、イリの神(代理)も見てるのに、全く何も思い出してないみたいだけど。


「というわけで、ユウナリアを逢わせてやっておくれ」

「お願いします」

「わ、分かった」


 セーヤの家なら簡単に行けるから、そこは問題無い。

 ユガフ様が言っていた「辛い現実」というのが気になるけど、頼まれて嫌とは言えない。

 俺はユガフ様が出てきたのとは別に異空間トンネルを開き、ユウナリアに付き添ってセーヤの自宅へ向かった。


挿絵(By みてみん)

挿絵代わりの画像は作者の保護猫たちです。

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