第105話:オロオロ鳥肉のチーズ焼き
マエルを布団に寝かせてプリュネに屋敷精霊の話を聞いた後。
眠り続けるマエルを猫精霊に任せて、俺は空間移動で自宅へ帰った。
そろそろ夜明け近く、夜行性の民が暮らすこの世界では、みんな仕事を終えて家に帰る頃。
家に帰ってごはんを食べる時間帯だ。
居間へ行ってみると、ユガフ様がルカたちにゴハンをあげていた。
俺よりデカいフサフサ茶トラ猫が、横1列に並んだ普通サイズの成猫と仔猫たちの前に、キャットフードを入れた小皿を置いていく。
猫が猫の餌やりしてるなんて、現実世界じゃ絶対見られない光景だよなぁ。
「ただいま~」
「おかえり聖夜、其方の食事も作ってあるぞい」
「ありがとう! いただきます」
大きな猫がゴハン作って待ってる世界、それが俺の異世界スローライフ。
ユガフ様が異空間倉庫から取り出したのは、オロオロ鳥肉のチーズ焼き。
柔らかいモモ肉を唐揚げ肉サイズに切ってグラタン皿に並べて、ピザ用チーズをたっぷりかけて石窯でこんがり焼き上げた品だ。
表面がカリッと焼けたチーズの香りがたまらない。
一緒に入ってるブロッコリーとニンジンのおかげで彩りも良い。
「グラタンのようなものじゃから、パンの方が合うかの?」
「うん」
ユガフ様が続けて出すのは、外皮がパリッと硬く、内側がもっちりとした噛み応えが特徴のハードパン。
シチューやスープとの相性抜群のハードパンは、グラタンにもよく合う。
「ん~! 鳥肉とチーズの相性最高!」
お肉をフォークで刺して口に入れると、肉汁の旨味とチーズのコクが広がる。
オロオロ鳥のモモ肉は、柔らかくて肉汁が豊富だ。
それを逃さないようにチーズで包んで焼き上げているので、出来たては御想像の通り。
「熱いけど美味い! 美味いけど熱い!」
口の中を火傷するのは、当然のこと。
しかし、世界樹の実を日常的に食している俺の身体は火傷してもすぐ治癒していくので、構わず焼きたてアツアツのチーズ焼きを堪能する。
具を食べた後には、ハードパンをちぎって器に残ったチーズやソースをつけて食べた。
「ごちそうさまでした!」
「うむ。聖夜は美味そうに食べるのぅ」
綺麗に食べ切った俺を、ユガフ様が満足そうに眺める。
空になったグラタン皿は、ユガフ様の分離と洗浄の魔法で綺麗になって食器棚に片付けられた。
「みっ、みっ」
「あ、ルカも食べ終わったんだね。……って、なんで嗅ぐの?」
ソファで寛ぎ始める俺にルカが近付いてきた。
ルカは俺の膝の上に飛び乗り、フンフンと胸や二の腕辺りを嗅ぎ始める。
「みみっ」
「あ、うん、マエルっていう男の子の匂いだね」
「みっ、みみっ」
「畑で倒れてたから、家まで運んであげた……って、男の子の匂いでも上書きするの?」
「ふほほっ、ルカの嫉妬は相手の性別問わずじゃな」
ルカはマエルの匂いをに気付くと、グイグイ身体や頭を擦り付けて自分の匂いで消し始める。
女性だけじゃなく、男の子の匂いでも上書きされるとは思わなかったよ。
猫って飼い主が知らない誰かの匂いを付けてるのが嫌なのかな?
嫁よりも嫉妬の範囲が広い、それが猫という生き物なのかもしれない。
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